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「英語やそのほかの勉強を極めるため」「海外で生活したい」「アメリカでキャリア・アップ!」など、さまざまな目的でアメリカにいる留学生達。また「何かを学びたい」という思いを秘めながら生活している人達もいるはずだ。そこで今回の特集は学生や学校にクローズアップ。留学生のナマ生活リポートから学校紹介、さらには手に職を付けるプログラムまで、短期~長期で実現できる“学び”のカタチを紹介。学ぶことで新しい自分を発見してみよう!(2005年8月)
先輩に続け!熱い留学生活
留学生活を有意義にするのは自らの心掛け。勉強はもちろん、遊びに趣味に全力投球中の“熱い留学生”に、その心意気をインタビュー。彼らのパワーに刺激されたら次は君の番だ!
ワシントン大学(WA)
私の体験が障害者留学の将来を開ける扉になると信じて
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幸田麻由さん
’84年大阪府生まれ。先天性緑内障で視覚障害を持つが、高校時代から英会話学校に通うなどして留学プログラムがあるプール学院大学へ進学。’04年9月にワシントン大学ESLへ留学。今夏から日本の大学の卒論のテーマ「児童文学における日本語と英語言語学の比較」と接点がある比較文学のレギュラー・クラスも受講中。F-1ビザ所持。
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Q:ワシントン大学(以下UW)について感想は?
UWが日本の大学の提携校で、取得単位の一部がトランスファーできるため留学先に選びましたが、講師陣のサポートの厚さに感激! 市民権がないと使用できない点字図書館の利用にも尽力いただき、留学生の私が点字本で参考資料を借りられるようになりました。リーディングのスキル・アップに役立ったのは言うまでもありません。 ただ、レベルが合わない教科を後から変更できないことは難点かな。点字教科書が私のために前もって作られているので……。でも、一般教科書を点字に変換してくれるボランティアの方々の大変な苦労を考えると、それを良いプレッシャーとしてどんな授業もがんばれます。日本では自分で変換作業をするか、有料でお願いするしかないですから。
Q:障害者に対する日本とアメリカの大学のサポートの違いは?
アメリカには「障害を理由に公共の場、学校、仕事などで差別してはならない」ADA法(Americans with Disabilities Act)があるため、日本より福祉サポートが確立しています。UWでは「Disability Services Office」という障害者専門のオフィスがありケアが充実。込み入ったキャンパス内は日本のように点字ブロックが付いていないので、点字用地図をもらっても移動が大変。最初の1週間、毎日授業前にオフィスで働くテリーさんと一緒にバス停から教室までの道順を確認していました。方向音痴の私にはとても助かるサービスでした。また、Academic Listening & Writingというクラスではほぼ毎日ビデオの教材を使っていましたが、画像から情報が得られない私は、内容の把握が授業中だけでは不十分。そこで、授業前には必ずオフィスに行き、ビデオを見ながらあらすじや画像の説明してもらっていました。おかげで、授業も積極的に参加できました。
Q:今後の予定と進路は?
卒論を書き上げるためにいったんは日本に帰国。その後、大学院へ行くかアメリカに戻って来るかは思案中です。私が経験したシアトルでの生活を生かし、障害を持ちながらも留学を考えている人達のサポートをしていけたらと考えています。
ノース・シアトル・コミュニティー・カレッジ(WA)
自分の経験を糧にして未来の留学生をサポートしたい!
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遊佐礼緒さん
’82年福島県生まれ。日本の大学を2年次で中退、最先端の物理を学ぶため留学を決意。知人のいたイリノイ州の南イリノイ大学のESLなどに約1年在籍。UWのESLを経て今夏からノース・シアトル・コミュニティー・カレッジへ。学業の傍らNPO国際日本人留学生協会の留学関連情報ウェブサイト「Atre」を準備中。F-1ビザ所持。
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Q:日米両方の大学へ通って違いは感じますか?
日本では、卒業した大学名を使って就職することが大学へ行く根本的な目的であるのに対し、アメリカでは大学に通う目的がどれだけ多くの知識を講師陣から身に付けられるかにあると思います。大学に求める価値観が違いますね。授業風景を見れば一目瞭然ですよね。「授業料を払っているんだから講師の話をひとつでも多く聞き出して教養を深めたい!」。こんな勢いのあるアメリカの生徒の姿は新鮮です。質問やディスカッションで自分の意見を述べ、授業に積極的に参加できる雰囲気が、講師が一方的にレクチャーをする受け身的な日本の学校より好きです。
講師陣との関係も、日本だと面白くない授業では生徒が我慢や放棄するのが普通ですが、アメリカでは授業中に講師を批評する生徒も。講師と生徒のお互いに感じた意見を率直に言い合い、より面白い授業にしていこうとする両者の関係も、アメリカの大学の強みではないでしょうか。
Q:Atre(アトレ)について教えてください。
Atreは国際日本人留学生協会(AJSA)が運営する留学関連の総合情報サイトです。Atreに参加しようと決めたのは、初めてアメリカへ来た時に経験した苦労や大変さなどの自らの経験を生かせるから。土地の情報を知っていて助けてくれる人がいたら、初めてのアメリカでもどんなに心強かったか。そんな思いから、自分の経験が留学を考えている人の安心材料になればと考えました。
シアトルを拠点としたサイトの運営は、シアトルの留学生を中心に米国内7カ所で行われていて、8月中旬から情報を発信する予定です。
充実した情報を届けることをモットーに、留学生をサポートしていきたいです。
Q:今後の予定と進路は?
生活の拠点をシアトルに置きたいので、シアトルの4年制大学へトランスファーして学位を取得したいです。Atreも引き続きサポートしていきたいと思っています。
レーン・コミュニティー・カレッジ(OR)
学生のうちに気がすむまでやりたいことに挑戦!
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保呂田直行さん
’80年東京生まれ。高校中退後、ソフトウエア会社など数社で働いた経験を元にウェブ制作会社を設立。Macworld Expoイベント公式ページなど、10サイト以上を制作。一方、ドラマーとしても活躍。’00年にはオレゴン州のバンドに誘われ渡米、現在はバンド活動の傍ら、レーン・コミュニティー・カレッジに通う。無料誌『EugeneWalker』編集長。
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Q:保呂田さんにとってレーン・コミュニティー・カレッジ(LCC)とは?
ロック・バンド「The Lounge Derbies」などでの音楽活動が渡米の目的だったので、初めは3カ月ごとに日本とアメリカの往復。しかしビザがないと面倒で、大検資格を利用してLCCへ入学することにしました。学生生活は6年ぶりだったので、最初は緊張しましたね。
専攻のマルチ・メディアのような特殊技術系のメジャーは、トランスファーを目指した専攻よりも履修すべき一般教養科目が少なく、仕事で使える専門的なことが多く学べます。スキル向上が目的の人には4大より合理的ではないでしょうか。
Q:学校以外の活動を教えて!
「小さい街には、小さい街の楽しみ方がある!」をコンセプトに、ユージーンで発行している学生向け無料雑誌『EugeneWalker』の編集長をしています。地域コミュニティーやビジネスにベネフィットを提供することはもちろん、やる気のある学生が実力を試したり、経験を積んだり、やりたいことを仲間と共に実現できる場にしたいと思っています。
音楽は僕の掛け替えのない友達で、切っても切れない存在です。音楽のジャンルは基本的に何でもOK! 今年はスタジオで落ち着いて作曲活動に専念し、良い音楽作りに励みたいです。
Q:今後の予定と進路は?
これまでは学校以外の活動を充実させることに専念してきましたが、今は卒業が目標。OPTビザ(※)を取得したら、1年間好き勝手に面白いことをして、日本に帰国後は自分が経営する会社で仕事をするつもりです。でも、いつかアメリカに帰って来たいです。
※OPTビザ:プラクティカル・トレーニング・ビザ。在学中か卒業後に期間付きで専攻したフィールドの実務を積むために発行されるビザ。
留学後、どうするの?僕の!私の!進む道
留学で築いてきた経験を、今後どんな形で自分の人生につなげていきたいのか、留学生100人に聞きました。
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日本へ帰国(49人)
・日本の大学を卒業(ジャスミン)
・ビザがきれちゃう(まちゃ)
・日本で働きたい(ひの)
・アメリカでの経験を日本で生かしたい(HY)
・金銭的に厳しい(Kay)
・ホームシックに耐えられない(Deppa)
・親のことが心配(Hiro)
・一度帰って将来のことろゆっくり考えたい(ぴょん子)
学校をトランスファー(18人)
・資格を取りたい(カフェ)
・自分のメジャーの教科をもっと勉強したい(しんしん)
・4年生大学を終了したい(いずぽん酢)
・東京の大学を卒業するより安い(田舎娘)
・アメリカに来た時点から4年生大学へのトランスファーを考えていた(Bonono)
アメリカで働きたい(16人)
・経験を積みたい(ちこ)
・日本に帰って働く時のアドバンテージになるから(ヒデ)
・AAS Degreeを取り今OPTでトレーニング中。最終的には就職できたら(ふみ)
・夢の現実に必要なステップ(ウースケ)
・将来目指している業界が日本ではまだ発展途中。進んでいるアメリカでもっと学びたい(Izumi)
その他(17人)
・残るか日本に帰るか迷い中(taku)
・一度帰国し、日本の大学を卒業。その後数年働いてからアメリカで大学院に行きたい(nao)
・JICAでお仕事!パプアニューギニアで米作り(農夫)
・事業を立ち上げたい。日本でもアメリカでも構いません(trend)
・考えがまとまらない(サーキット)
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