「El Monte RV」などの大手では、このようなさまざまなサイズの大型キャンピングカーが借りられます。
コロナ禍の間、ソーシャルディスタンスを守りながら外で遊べるキャンピングカー(アメリカでは”RV”= Recreational Vehicle。以下RV)の人気が急上昇!そこで本特集では、アメリカでロードトリップを楽しむには最高の乗り物と言えるRVの魅力を、アウトドアのエキスパート2人がたっぷりご紹介します。(2021年5月)
ナビゲーター:
芦刈いづみさん(右)
メディア&PR 会社Seven Seas Media 代表。ライターとしてアメリカの文化や旅の情報も執筆。Web:https://linktr.ee/v_izumi123_v
TAK ITOMI さん(左)
Tak S. Itomi Photography and Design 代表。フォトグラファー。旅を通して出会った風景、人々、文化についての講演活動などにも携わる。Web:taksitomi.com
キャンピングカー・RVの基礎知識/アメリカでRVを借りる
アメリカでおすすめのキャンピングカー・RVレンタル会社から車両を選ぶ際のポイント、さらに借りる際の注意点、旅の計画の立て方、子連れで行く際のTipsまで、まずはアメリカでRVを借りるための基礎知識を見ていきましょう。
RVはどこで借りる?
アメリカでRVレンタルの大手といえば、「ElMonte RV」と「Cruise America」ですが、15人乗りバンを改造した個性的なRVが借りられる「Escape Campervans」もあります。そのほか、個人間のRVレンタルサービスの「Outdoorsy」や「RV Share」などもあるので、借りたい大きさや予算、ピックアップ場所などを考慮して選びましょう。
- El Monte RV www.elmonterv.com
- ECruise America www.cruiseamerica.com
- Escape Campervans www.escapecampervans.com
- Outdoorsy www.outdoorsy.com
普通免許でも最大でこんなに大きなRVが運転できてしまいます!
ミニバン型のRV内には、所狭しとこんな簡易キッチンが。
RVを選ぶ際のポイントと注意点
まず、どんな大きさの車両にするかは、各レンタル会社のウェブサイト上で自分が利用したい人数を考慮に入れながら、乗車定員、車内見取り図などを見て選びましょう。
次に、①最低利用日数、②マイレージ制限、③食器やリネン、④発電機とプロパンガス、⑤保険、の5項目について確認していきます。
- 最低利用日数は、一般的に3日であることが多いです。
- マイレージは無制限ではなく、基本料金に加えて1マイル0.30ドル程度でチャージされる場合がほとんどです。
- 食器やリネンはオプションであることが多いので、必要に応じて予約の際にリクエストしましょう。
- ジェネレーターとプロパンガスは、利用した場合に料金が発生するのか、それとも利用の有無にかかわらず料金に含まれるのか、要確認。
- 保険はレンタル料金に含まれていることがほとんどですが、破損しても保険が適応されない箇所やシチュエーションもあるので、必ず事前に確認しておきましょう。
食器やリネン、その他電化製品なども借りられるのかどうか、予約の際にしっかり確認を。
洗剤やスポンジなどはリネンや食器セットに付いてこないこともあるので、要確認。
レンタル当日 & 返却時の注意点
RVのチェックインとチェックアウト日は、日にちに加えて時間も決めて借りる場合が多いため、しっかり計画して決めましょう。
また、借りる当日は、各種書類の記入の他、RVの使い方レクチャー、車内外の点検、荷物の詰め込みなどで2時間ほどかかることもあるので、考慮に入れておきましょう。ちなみに、RVを借りている間、自分の車を停めておけるかどうかは、レンタル会社、さらに借りるオフィスによって異なるので、必ず事前確認を。
次に返却時ですが、給水と汚水の排水処理を済ませ、かつガソリンを満タンの状態にして返すのが基本。そのため、最終日のキャンプ場は給水と排水が可能なところを予約するのがベストですが、宿泊していないRVパークで、有料で給水・排水施設だけ利用することもできます。または、追加料金を払えば排水処理をせずに返せるプラン等もあるので、借りる際に確認を。最後に、返却時には、事故や故障箇所がないか細かいチェックがあることも忘れずに。
チェックイン時に解説ビデオでRV の使い方を学べるところもあります。写真は「El Monte RV」。
給水や汚水の排水も自分で行います。少し大変ですが、こういう手間もRV旅の醍醐味と言えます。
旅の計画を立てる際のポイント
1 ゆったりしたプランを立てる
RVはスピードが出ないので、想定よりも移動に時間がかかります。「Google Maps」などの地図アプリで表示される移動時間の1.5倍はかかると考えて計画を立てましょう。
2 夜間は動かない
一般的に、アメリカのキャンプ場は24時間出入り可能ですが、日没後はキャンプ場内の移動やパーキング、RVの設置が難しく、トラブルの原因になります。また、夜間にオフィスが閉まっているとトラブルに対応してもらえないため、到着は日没前に。
3 大型スーパーの目星をつけておく
RVは車体が大きいため、気軽にスーパーに駐車しての買い物ができません。サイズによっては数台分の駐車スペースを使う必要があります。事前に大きな駐車場のある店の場所を調べておくと、食べ物の調達などがスムーズです。
4 RVはとにかく大きい!運転に注意を
RV運転時は、特に車高に注意が必要です。例えば、立体駐車場では、車体上部が建物天井に接触してしまう可能性が大いにあります。また、長さもあるため、パーキングやガソリンスタンドの入り口のちょっとした段差で車両の底部を擦ってしまうことがあります。車体上部や底部は保険でカバーされない可能性があるので、必ず確認を!
5 キャンプ場選びは慎重に
RVで泊まれるキャンプ場は、テント・RVサイト両方がある所とRV専用の「RVパーク」の2種類。いずれも駐車できるRVのサイズに制限がある場合があるので注意が必要です。また、設備や駐車方法についても、以下を参考に事前確認を。
◎ Full Hookup
電気と水道、下水の全ての設備あり(初心者はこれが一番安心)
◎ Dry Camping(No Hookup)
上記全ての設備なし
◎ Back-In
バック駐車のみのサイト
◎ Pull-Through
前向きで駐車して、そのまま前に出ていけるサイト
◎ Dump Station
キャンプ場にある給水や排水ができる場所
RVの運転席は高く見晴らしがいいですが、スピードを出し過ぎるとハンドルが震えたり車体が不安定になったりして危険。安全運転を!
Back-Inのサイト。パッと見はいい感じですが、大きなRVをバックで駐車するのはなかなか難易度高しです。
RVでの子連れ旅のTips
RVは大容量の収納やトイレ、シャワー、冷蔵庫、電子レンジ、ガスコンロなどを備えているため(モデルによって違いあり)、子連れ旅には本当に便利です。ただ、いくつか気を付けないといけないことも。まず、子ども用のカーシートはRVのレンタルには含まれないことが多いため、オプションで付けられるのか、持ち込みが必要なのか、事前チェックが必要です。また、ワシントン州含め多くの州で、RVに乗車している全員のシートベルト着用が義務付けられています。それにはもちろん子どもも含まれるので、ドライブ中はカーシートを固定し、子どもをそこに座らせなければいけません。
子連れ旅には特におすすめのRVですが、交通ルールはしっかり守りましょう!
キャンピングカー・RVにおすすめのアメリカのキャンプ場はココ!
ワシントン州とオレゴン州のキャンピングカー・RVの旅でおすすめのキャンプ場、またアメリカ各地にキャンプグラウンドを持つ大手キャンプ場チェーンを紹介します。
Steamboat Rock State Park, WA
RVキャンプサイトを備えたWashington State Parkはたくさんあり、どこもオンラインで予約が可能です。中でもイースタンワシントンにあるSteamboat Rock State Parkは、Full HookupのRVサイトが123カ所もあり、州立公園では最大規模。氷河によってできた奇妙な形の湖や岩山で、ハイキングやボート遊びもできる、RVキャンプにおすすめの公園です。
場所:51052 Highway 155, Electric City, WA
Web: parks.state.wa.us/590/Steamboat-Rock
料金:$40~/1泊(夏季)
その他:Full Hookupあり、シャワー、プレイグラウンド等
Elwha Dam RV Park, WA
オリンピック半島北部にある家族経営のこぢんまりとしたRVパーク。ポート・アンジェルス市街から車で約15分とアクセス至便ながら、レイク・クレッセント、ハリケーンリッジやソルダック・ホットスプリングスなどにも近く、オリンピック国立公園めぐりの拠点とするのに便利です。ほとんどのサイトがPull-Throughになっています。
場所:47 Lower Dam Rd., Port Angeles, WA
Web: www.elwhadamrvpark.com
料金:$55~/1泊(夏季)
その他:Full Hookupあり、シャワー、Wi-Fi、売店、BBQピット、ランドリー等
Wallowa Lake State Park, OR
Oregon State Parkのウェブサイトでは、明日の夜、もしくは今週末空いているキャンプサイトが検索できて、思い立ったらすぐキャンプに行けるのが便利です。州立公園の中でも、イースタンオレゴンのWallowa Lake State Park(写真)は、州立公園最大規模のRVパークがあり、Full Hookupが121カ所(うち36カ所がPull-Through)あります。
場所:Wallowa Lake State Park, Joseph, OR
Web: stateparks.oregon.gov
料金:$35~/1泊
その他:Full Hookupあり(場所による)、シャワー等
Pacific Shores Motorcoach Resort, OR
オレゴンコーストのAgate BeachにあるラグジュアリーRVリゾートパーク。サイトによっては、なんと海の真ん前にRVを止められます。園内はきれいに整備され、テーブルやファイヤーピットなどの備品はどれも豪華でリゾートホテルのよう。利用できるRVは、クラスAまたはCかつ29フィート以上の大きさでコンディションの良いものという決まりがあります。
場所:6225 N. Coast Hwy. 101, Newport, OR
Web: www.pacificshoresmotorcoachresort.com
料金:$105~/1泊(5月上旬の場合、最低3泊)
その他:Full Hookup、Wi-Fi、ケーブルTV、ランドリー等
Kampgrounds of America(KOA)
全米各地に点在し、「KOA」の略称で知られる、大手キャンプ場チェーン。テントサイトやFull HookupのRVサイトの他、キャビンなども用意しています。また、ほとんどの場所でプレイグラウンドやプール、さらにWi-Fiやシャワー、ギフトショップなどの設備も整っているので、とにかく快適。場所によって施設やサービスは変わってくるので、事前確認はお忘れなく。
Web: koa.com/ways-to-stay/rv-sites
料金:$60~/1泊(場所により異なる)
その他:Full Hookup、シャワー、Wi-Fi、売店、プレイグラウンド、BBQピット、ランドリー等
Thousand Trails
アメリカ西海岸と東海岸を中心に全米190カ所以上でキャンプグラウンドを運営する大手チェーン。ワシントン州には13カ所、オレゴン州には7カ所あり、RVサイトに加え、キャビンもあります。場所によって設備が異なりますが、Wi-Fi、シャワー、ランドリーなどをそろえているところが大半で、RV初心者でも快適。ドッグパーク付きの場所もあります。
Web: thousandtrails.com
料金:$57~/1泊(写真のBend-Sunriverの場合。季節と場所により変動)
その他:Full Hookupあり(場所による)、シャワー、Wi-Fi、ドッグパーク、プレイグラウンド、ランドリー等
キャンピングカー体験記:RVで出かけた、デスバレー絶景5日旅。
いづみさん、TAKさん夫妻が2019年年末に出かけた、ラスベガス~デスバレーのRV旅。トラブルや予定変更もありつつ、楽しさいっぱいだった旅をレポート!
取材協力:El Monte RV
距離感としては、ラスベガスからSt. Georgeまでが約140マイル、ラスベガスからデスバレーまでが約150マイル、デスバレーからLake Mead National Recreation Areaが約150マイル。RVはノロノロ運転になるので、とにかく時間には余裕を持って移動しましょう。
デスバレーに到着した夜の風景。満天の星空とはまさにこのこと!
初日
ラスベガス、晴れ
2019年の年末に出かけたRVの旅は、友人家族と私たちで大人4人+2歳児1人、乳児1人というメンバー。「El Monte RV」で7人乗りのRVを借りました。RVの使い方講習や書類記入、車両点検などを経て、ようやく鍵の受け取り。出発時にはもう夕方でした。
ちなみにこの旅、元々はグランドサークルを周回する予定だったので(事情はこの後説明)、初日はその手前、ラスベガスの北にあるSt. Georgeのキャンプ場、「Hurricane KOA」に宿泊。しかし、想像以上に移動に時間がかかり、普通車なら2時間弱で着くところを約4時間でようやく到着しました。辺りはもう真っ暗で、受付オフィスもクローズ…。敷地内の地図を見ながら、何とか予約したスポットに移動しました。幸い、Pull-Throughサイトだったので、頭から駐車できて助かりました。まずは車の水平器を頼りに、タイヤの下にタイヤ留めを挟んで、なんとか水平を保つことに成功! 次は、水道と電源の接続。しかし、キャンプ場の水道管にホースをつなごうとしたら蛇口が取れ、大量の水が噴射(!!)。打つ手がなく、まずは車を安全なところに移動。緊急連絡先に電話するも全く応答なし…。留守電を聞いた管理人が来てくれた時は、もう真夜中でした。それから別のスポットに移動し、諸々セットアップをし、ようやく就寝。レンタル手続き、想定外の移動時間、暗くなってからのトラブルと、長い1日でした。
チェックイン~荷物の積み込みまで約2時間。夕方になってしまい、急いで出発!
停まっている時はこのように左右の幅を広げることで、車内が広々と快適に。
2日目
St. George、晴れ
この日、記録的な寒波が到来し、気温の低いグランドサークルに慣れないRVで行くのは怖かったため、急遽予定を変更し、冬でも温暖なデスバレー国立公園に目的地を変更(とはいえ、この日の現地の最高気温は約39 °Fという予報で、この時期にしてはかなりの寒さでしたが)。とにかく早朝に出発し、まずは買い出しのためSt. Georgeのウォルマートへ。パーキングが広いウォルマートはRV旅の強い味方です。前日同様、移動に時間がかかり、デスバレーのキャンプ場「Furnace Creek Campground」に到着したのは、またもや日没後でした。ここでの2泊は、電源と給水のサービスがない〝Dry Camping〟。車内発電機から電源を取り、ヒーターやガスコンロは備え付けのプロパンガスを利用。水も車内タンクのものを使います。トラブルもなく、やっとゆっくりした夜を過ごすことができました。
キッチンは大人2人が一緒に料理できるスペース&電子レンジ、冷蔵庫、ガスコンロがあり、かなり便利。
3日目
デスバレー国立公園、晴れ
早起きして身支度もほどほどに、朝日の名所「Zabriskie Point」 へ。軽く散策してから車内で料理をし、朝日を見ながらの優雅な朝ごはんを楽しみました。その後もしばらくここに滞在し、各自うたた寝をしたり、本を読んだり、思い思いの時間を過ごしました。
次に向かったのは、ビジターセンター。友人家族はデスバレーが初めてだったので、ここでデスバレーの地形や歴史についてお勉強。午後からは、デスバレーの最大の見どころの一つである「Badwater Basin」へ。北アメリカで一番海抜の低い地点(マイナス86メートル)に、塩の大平原が広がります。ここでもRV専用駐車場に車を停め、雄大な景色を眺めながら昼食をとり、のんびりしました。その後、まだ明るいうちにキャンプ場に戻り、車内で料理。この日のメニューは、アメリカンサイズのステーキ!
乾いた粗い塩の結晶が地面に美しく広がる、デスバレーの「Badwater Basin」。
朝日の名スポット、「Zabriskie Point」 。
映画『Star Wars』のロケ地としても知られる「Sand Dunes」で、友人家族の記念撮影。
4日目
デスバレー国立公園、晴れ
2日間のDry Campingで、タンクの水はほぼ使い切り、逆に下水タンクは満タン。でも、園内のDump Stationが行列だったため、そのまま出発。途中でRVパークに立ち寄り、有料でDump Stationを利用しました。この日は、翌日の車両返却を考え、ラスベガスから近いLake Mead National Recreation Areaの「Lake Mead RV Village」に滞在。今回初の日没前チェックインでした。明るいので、駐車も水平取りも楽々。エリア内のシャワーやランドリー施設もチェックできました(RV車内のシャワーは、狭いのが難点)。また、早い時間にチェックインすると、管理人、さらにRVの達人や長期滞在者など、多くの旅人と話せるのも魅力です。夕日に染まるLake Meadを眺めた後、最後の夜はゆっくりと更けていきました。
どこまでも続くデスバレー付近の荒野を行く道。これぞアメリカ!
「Lake Mead RV Village」内を散策。
4日目の夜の車内。大人4人+子ども2人でも快適な広さで、子どもたちも終始ごきげんでした。
最終日
Lake Mead National Recreation Area、晴れ
レイクミードから「El Monte RV」のレンタルオフィスまでは、約30分。湖を見ながらゆっくり朝食を食べた後、排水と給水をして出発しました。最後にガソリンスタンドで給油し、返却準備は完璧です。オフィス到着後は、1人が返却手続きをしている間、他の3人で荷物を出して車内を大掃除。終了後、担当者が車両をチェックし、返却手続き終了。到着してから約1時間かかりました。
今回の旅は小さい子ども連れでしたが、RVのおかげで本当に快適でした。大人は大変なところもありますが(笑)、アメリカならではの冒険感たっぷりの旅が楽しめます。未体験の方はぜひ、挑戦してみてください!
5日目の朝、給水と排水、充電をして帰路の準備も万全。
湖の畔で朝ごはん。最高の贅沢じゃないですか?