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アメリカでの離婚 知っておくべき基礎知識

アメリカで離婚を争うとき、「知識」がパワーになります。不平等な条件に泣かされる前に、正しい知識を身に付けましょう。ワシントン州の弁護士が回答するQ&A、在米日本人の離婚体験談、ハーグ条約などについてまとめました(2018年9月)

※本特集で紹介している個々の事例は、全ての方に当てはまるわけではありません。また、専門家の回答は個人に対するアドバイスでもありません。
詳細は専門家に相談するなど、ご自身でご確認ください。
※Q&Aは、ワシントン州の法律を基に回答しています。
※情報は2018年9月時点のものです。
◎2022年9月のアメリカでの離婚に関する特集 »

弁護士に聞く 離婚のQ&A

離婚に悩む日本人のため、非営利団体「International Families Justice Coalition」を創設したワシントン州の弁護士、井上奈緒子さんにお答えいただきました(ワシントン州の法律を基に回答しています)。

Q1:配偶者からの一方的な離婚通告。応じなければ離婚にならない? 

相手が撤回しない限り離婚になります。そのまま放っておくと欠席裁判(Default)となり、相手側の言い分が全て通ってしまいます。たとえ一緒に住んでいても離婚申請書の送達を第三者から受けたら、一定期間の間に返答書を裁判所に提出してください。

Q2:夫が不倫。慰謝料は取れる?

取れません。ワシントン州では「No-fault divorce」と言って、不倫でも、どんなに悪いことをしても「悪い」を理由に慰謝料を取ることはできません。そもそも米国家族法には慰謝料に匹敵する言葉や概念がありません。ただし、別の理由で慰謝料に匹敵する支払いを相手側から取ることはできます。

Q3:離婚を決めたら何をすべき?

まずは自分で、どんな手続きを踏むのか、法的に何をすべきか、調べましょう。離婚した知り合いの体験談は参考になりますが、個人の状況によって法的解釈や離婚方法が異なったり、少しの状況の違いで結果が相違したりすることがあります。従って、自分で理解できないことに関しては、専門家に相談することが賢明です。専門家との初回面談だけでも、おおよその流れはつかめるはずです。

Q4:離婚を切り出すと配偶者が金を隠しそう。対処方法は?

個々の状況によって対処法が違います。法律の専門家に聞いてみてください。

Q5:離婚の手続き中、子どもを連れて他州に引っ越せる?

相手の同意があればできます。相手が同意しない場合は、裁判所を通して許可を得ることもあります。

Q6:離婚後、条件付きの永住権はどうなる?

永住権を継続できるかどうか決定するのは弁護士や裁判所ではなく、移民局です。移民局から「アメリカと十分なつながり(Substantial Tie)がある」とみなされれば、永住権を保持できる可能性が高いでしょう。アメリカと十分なつながりがあるとみなされる要素には、アメリカに子どもがいる、職があるなどがありますが、「家族がここにいる」だけでは決まりません。

Q7:自分と子どもがワシントン州。夫は他州在住。どちらの州で裁判になる?

どこで離婚裁判をするかを決めるために裁判(管轄権判定裁判)が起きるくらいなので、一概に言えません。夫が「私の住む州が管轄地だ」と訴訟を起こして勝った場合は、夫の住む州での離婚裁判になりますが、「ワシントン州の裁判に応じる」と同意すれば、ワシントン州で裁判ができます。一般的には、結婚生活や子育ての大半がワシントン州だった、アセット(不動産、預貯金、リタイアメントなど)の中心がワシントン州にある、18歳未満の子どもが過去6カ月以上ワシントン州に住んでいたなどが管轄地を決める要素となりますが、夫の住む州の裁判規定とのバランスを考えた上で判定がなされます。

Q8:結婚前の財産も、離婚の際は半分取られる?

基本的にワシントン州では、結婚前の財産は、離婚時の財産分割の対象にはなりません。しかし、結婚前のお金を家の頭金や結婚生活に使うと、婚前契約書で明記しておかない限り、それは贈与とみなされ、共同財産の一部と解釈されることもあります。

Q9:婚前契約書(Prenap)で親権や養育費について決めておくことはできる?

できます。しかし、離婚時にそれが有効かどうかは状況や法的解釈によります。

Q10:離婚後、日本国籍を持っている自分は、子どもと日本に一時帰国できる?手続きは必要?

できますが、子ども同伴の長期帰国・休暇が可能かどうかは離婚時の条件によります。なお、18歳未満の子どもとアメリカを出入国する際は、国境の担当官から元配偶者からの同意書(Letter of Consent for Travel of a Minor Child)が求められることがあります。

Q11:弁護士を通さずに離婚できる?

できます。主に3つの方法があります。①夫婦で全ての条件に同意した場合、法的な専門家を通さなくても同意書(Joinder)を出して離婚することは可能です。ただし、法的な理解なしで同意書に署名をした後に不利な離婚だったと気付き、専門家に相談したとしても、最終離婚書を覆すのはかなり難しいです。②裁判に弁護士なしで自分で応じること(Legal Term-Pro Se)もできます。中には、一旦裁判を始めてしまい、こじれてから弁護士に駆け込む人もいますが、それを正すには一般的にかなりの時間を要します。③調停人を介することもできます。ただし調停人は、夫婦に対して完全に中立な立場でなければないため、離婚を自分に優位に進めたくても、法的な助言はしてくれません。例えば、相手に隠し財産があると分かっていた場合、弁護士であれば証拠開示を通して全部明らかにする手続きをするのですが、調停人はその存在の有無を尋問せず和解を進めます。

Q12:401(k)など夫のリタイアメント・ベネフィットは自分にも分配される?

はい。基本的に、結婚期間中に貯めた401(k)のリタイアメントは分配されます。

Q13:就業ビザで滞在している日本人夫婦。ワシントン州で離婚の裁判はできる?

たとえ永住権保持者または米国市民でなくても、ワシントン州に夫婦の財産があり、子どもが過去6カ月にわたりワシントン州に住んでいる場合、ワシントン州を法的管轄地として離婚を成立させ、財産の分配、扶養者手当てと養育費、子どもの監護権を定める判決を得ることができます。また、子どもがいない夫婦でも、財産がワシントン州にある場合は裁判ができます。なお、ビザ保持者は、仮に子どもがアメリカにいたとしても、離婚手続きとは関係なく、ビザが切れるまでに米国を出なければなりません。

Q14:アメリカではシングルペアレントに対し、何か援助はある?

特にありません。ただし養育費(Child Support)の支払いは州法で義務づけられています。また、結婚時の共同財産分割によって支払われる資金に加え、離婚後の配偶者扶養手当て (Maintenance)が結婚年数に応じて支払われることがあります。

アメリカでの離婚のプロセス

【離婚のプロセス】押さえておきたい基本の「き」!

請願書などの提出

申請書(Petition-Marriage)、召喚状(Summons)などの必要書類を地元の裁判所に提出。受理された後、申請者は書類のコピーを第三者を通じて相手に送達します。

相手による返答

召喚状を受け取った側は、申請者と同じ州に住んでいるなら20日以内、違う州に住んでいるなら60日以内に返答書(Response)を裁判所へ提出します。

情報の開示(Discovery)

個人・夫婦共有の資産、負債、収入などについてお互いに情報を開示し合います。

話し合い1

裁判期間中の親権、養育費、扶養手当について話し合います。これについて合意できない場合、裁判所に請願し、一時的な命令(Temporary Order)を出してもらいます。

話し合い2

財産分与などについて話し合い、合意できれば離婚合意書(Marital Settlement Agreement)を作成し、裁判所に提出します。これについて合意できない場合、家庭裁判所での裁判となります。

離婚成立

離婚が正式に成立するのは、裁判所に離婚の申請をし、相手が必要な書類を受け取ってから90日以降です。

※順序は前後することがあります。

井上奈緒子弁護士


ワシントン州およびニューヨーク州弁護士。在米移民の離婚問題に取り組む非営利団体International Families Justice Coalition(IFJC)を2017年に創設。また、シャッツ法律事務所の弁護士として、現在、在シアトル日本国総領事館の外部顧問弁護士も務めている。

International Families Justice Coalition (501(c)(3))

TEL :206-849-6885
E-mail: contact@ifjc-us.org
担当: Sarah Okawa Ellerbrock (Executive Director) 日本語対応可

在米日本人の「離婚の現状」を知る! 日米離婚最前線

在米移民の離婚問題に日々取り組んでいる非営利団体IFJC(International Families Justice Coalition)の弁護士さんに、在米日本人が離婚する際の典型的な傾向についてうかがいました。 ※体験談は、全てワシントン州在住者によるものです。

【 在米日本人の離婚にはどのようなケースがありますか?】

「日本人妻とアメリカ人夫」の組み合わせが最も多く、その中でも①②③がよくあるケースです。この他、④の日本人同士の夫婦というケースもあります。

  1. 専業主婦の妻
  2. 米軍で働く夫がいる妻
  3. 共働き夫婦
  4. 日本人同士の夫婦

ケース① 専業主婦の妻

このケースの場合、絶対に知っておかなければならないことは、働いていない専業主婦でも、財産を得る権利は夫と同等にあるということです。法律により、夫婦双方が公正かつ正当に分割された財産を得る権利が守られているのです。とはいえいざ折半しようとすると、ほとんどの夫は拒否します。しかしアメリカには証拠開示という手続きがあります。これは裁判所が強制的に銀行口座や源泉徴収票(W2)、給料明細などを開示させるもので、夫も妻も収入や財産を隠すことはできません。

また、子どもがいる場合、いくつかの例外を除いて、どちらかの親だけが親権を100%持つのはほぼ不可能、ということを知っておかなければなりません。日本では、離婚後、親権者を一方の親に定めますが、アメリカでは憲法により双方の親の子育てをする権利が守られています。よって、相手側が家庭放棄、アルコール中毒依存症、ドラッグ中毒、家庭内暴力という4つのカテゴリーに入らない限り、親としての権利があります。たとえずっと専業主婦で、ほぼ一人で子育てをしてきた場合でも、親権を100%持つのは不可能ということを理解しておいてください。

また、日本の場合、協議離婚がほとんどですが、アメリカの離婚はそのほとんどが協議離婚ではありません。日米カップルによくあるケースは、アメリカ人夫が離婚の申請書を書いて、奥さんにサインだけさせるというものです。日本人はどうしてもこの「書類にサインして終わり」という感覚が強いので、そのままサインして出してしまいますが、これが大きな勘違いなのです。後で蓋を開けてみたら実は子どもの親権を100%渡す内容だったり、養育費や配偶者扶養費はおろか財産分割もない内容だったり…こういうことが実際に起こっています。だから夫がサインしろと言ってきたときは、その時点で弁護士か専門家に相談すべきです。絶対に言いなりで出してはいけません。また、離婚を経験した友人知人にアドバイスをもらう場合は、それを鵜呑みにしないでください。弁護士の対処に疑問を持ったときは、他の弁護士や専門家にセカンドオピニオンを求めた方が確実です。

ケース② 米軍で働く夫がいる妻

このケースで目立つのは、家庭内暴力です。怒鳴られても殴られても、警察に言えば軍に連絡が行くので、すぐに見つかってまた殴られてしまう。それが原因でうつ状態になり、家から出られない状態に陥る人も少なくありません。夫からお小遣いをもらって暮らしている状態で、金銭的にも非常に厳しい状況にいる人が多く見られます。さらに夫は妻のうつ状態を利用し、離婚裁判になっても「妻はうつ状態なので子育てができない」と主張し、親権を取りあげようとしたりします。

家庭内暴力で問題なのは、目撃者がいないことです。本人以外は子どもしか見ていない。そして夫は18歳未満の子どもは証言できないという法律(例外あり)を悪用します。しかし18歳未満の場合は、子ども専任の代理人(GAL)を付けることができます。代理人が子どもに聞き取りを行い、子どもの代わりに裁判所で証言するのです。家庭内暴力は司法を味方に付けることが大切です。システムに則って訴えれば、あなたの主張を伝えることができます。

米軍の人と結婚している日本人妻の多くは、夫の収入の半分ぐらいは自分のものだということを知りません。例えば夫が稼いでいるお金が6万ドルだったとしても、夫はこれは俺のお金だとずっと言い聞かせているわけです。でもそれは間違いです。法律上、妻には夫の収入のいくらかを得る権利があります。しかし、もし離婚で半分よこせなどと言えば、子どもを取り上げてやる、というような脅しも出てきます。

それだけでなく夫が米軍に所属していた勤続年数や、その期間にかかる結婚年数にしたがって夫のリタイヤメントの一部を得る権利もあります。でもそのことを全く知らない妻もいるし、その権利があることを妻に言う夫はほぼいません。離婚には知識が必要です。

ケース③ 共働き夫婦

これは最もスムーズなパターンです。というのは、妻が経済的に自立してるので、離婚後に配偶者扶養費が必要ない、もしくは低額で済むからです。例えば夫の給料が1カ月に1万ドルで、妻が3000ドルしかない場合は、夫が多少配偶者扶養費を支払わないといけません。しかし既に妻は働いているので、何が何でもという状況ではありません。例えば夫の収入が妻より良い場合に、妻がより高い収入の職に就くために学校に通う、その間のサポートを請求するケースがあります。大抵、夫はノーと言いますが、訴訟になればイエスと言わざるを得ません。

これに加え、例外を除き、養育費も入ってきます。また、仕事を持ちながら100%子どもの面倒を見るのは大変なので、妻側としても50%: 50%の面会権(Visitation right)にしたいという人がほとんどです。これもスムーズな離婚の要因の一つです。

ケース④ 日本人同士の夫婦

日本人同士の離婚でも訴訟になることがあります。例えば夫が「E-2」ビザ、妻が「E」ビザで滞在している中、夫がアメリカ人女性と付き合い始め、どうせならアメリカ人女性と結婚して永住権を得たいと画策するケースです。夫はどうにかして妻と別れようとするのですが、妻にしてみれば納得いきません。すると夫がビザ更新のときに、自分と子どものビザだけを更新して、妻のEビザを期限切れにさせたりするのです。そうして邪魔者になった妻をアメリカにいられなくする。そういうケースが実際にあるのです。

日本人同士でも永住権や市民権を既に持っている者同士でしたら、あまり関係がありません。ただしシングルマザーになったときに、子どもを連れて日本に帰り自立しよう思っても、元夫がそれを許さないというケースもあります。

ちなみにアメリカの市民権を持っているならアメリカ人と同様、離婚後に子どもを連れて日本など外国に旅行するのは自由です。市民権がある場合、ハーグ条約は関係ないのです。それにもかかわらず、妻のパスポートを隠して、外国行きを阻止しようとする夫もいます。

これも実際にあった話ですが、離婚前に子どもと一緒に日本へ帰ってしまった妻がいました。夫が日本へ子どもを取り返しに行き、一時的にアメリカの学校に行かせる、すぐに戻すなどといって妻を説得し、子どもをアメリカに連れて帰ったのですが、夫はもう二度と妻に子どもを会わせる気も話をさせる気もないというケースです。妻はもう1年以上日本に住んでいるので、永住権もありません。裁判は子どもが住んでいる場所で行われるので、妻はほぼ負けるという結果になります。


3分間で分かる ハーグ条約

知ることが武器になる!「アメリカ人夫と裁判で争っても勝てるわけがない」…と諦める前に、押さえておきたいハーグ条約の基礎知識。

日米の離婚 連れ去られた子供の変換援助申請

ハーグ条約とは

国境を越えた子どもの連れ去りは、生活環境を急変させ、一方の親や親族と会えなくなるなど、子どもへの悪影響が生じかねません。これらの問題から子どもを守るため、日本は2014年、ハーグ条約に加盟しました。これにより、一方の親の同意なく、国境を越えて16歳未満の子どもが連れ去られた場合は、双方の国が協力して元の居住地に戻す手続きが取られるようになりました。2018年4月現在、 98カ国がハーグ条約に加盟しています。

ハーグ条約を理解する上で必要な視点

条約に加盟した2014年~17年までの返還援助申請件数は全158件(下の表参照)。その内訳は、日本に連れ去られた子どもを取り戻すための申請依頼が87件で、残りの71件は、日本で暮らしていた子どもが外国に連れ去られたケースの援助申請となっています。ハーグ条約は日本人にとって不利益という印象を持っている在米日本人も少なくないかもしれませんが、条約締結前は、日本で暮らしていた夫婦の子どもが外国に連れさられた場合、国の援助なしで子どもを探さなければならず、実質泣き寝入りするしかない状況でした。在米日本人とは逆の立場で、この条約に救われている日本人がいるということも、ハーグ条約を理解する上での必要な視点です。

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日本に連れ去った子どもは申請があれば100%戻される?

アメリカ人配偶者から日本政府への返還援助申請があったとしても、子どもは無条件に連れ戻されるわけではありません。「連れ去りから1年以上経った後に訴えがあり、かつ子どもが新たな環境に適応している場合」「連れ去り時に相手が養育放棄をしていた場合」「連れ戻すことが子どもに悪い影響を与える場合」「自ら判断できる年齢の子どもが戻ることを拒んだ場合」「人権的な面から見て子どものために良くない場合」は、日本の“裁判所の判断により”返還を拒否できます。
 典型的な例としては、元いた国で子が親から家庭内暴力を受けており、返還するとさらに被害を受ける可能性がある場合などです。しかし最終的に判断するのは裁判所であり、家庭内暴力や養育放棄があった(と連れ去り側の親が思っている)からといって、必ず返還が拒否されるわけではないので、自分で安易に判断してはいけません。

離婚を考えている母親がすべきこと

アメリカでは監護権の侵害は犯罪となる可能性があり、場合によっては誘拐犯として重罪に問われることがあります。遠回りに見えるようでも、やはり正攻法で権利を勝ち取ることが、子どもの未来を守ることになります。離婚を思い立ったら早いうちに、家庭内暴力の被害者支援団体やハーグ条約に詳しい弁護士に相談することが重要な鍵です。

監修:在シアトル日本国総領事館


アメリカでの離婚体験談

あのとき、もし弁護士に依頼してなかったら… 

離婚時の在米歴:10年 離婚時の婚姻期間:13年
子ども:2人(離婚時の年齢は2人とも15歳未満)

離婚の原因は、元夫の女性関係でした。元夫が離婚の手続きを始めたことを知り、知人に相談すると、弁護士を雇った方が良いと強く勧められました。そこでご紹介いただいたのが、IFJCを設立した日本人弁護士さんです。元夫からは「子どもに二度と会えないようにしてやる」と脅迫めいたことを言われ続けており、私もアメリカでの離婚の知識が全くなかったのでとても不安でした。しかも夫は親権を100%取るために、私の病気を持ち出してきました。メディカルレコードを証拠にして、私には親権を持つ資格がないと主張したのです。子どもと離れ離れになってしまうのではないかと、不安で胸が押しつぶれそうな日々でした。

結果として、裁判で争った後、私は共同親権を得ることができました。子どもと一緒に暮らす権利は私にあります。そして元夫には、隔週末に子どもと過ごす権利が与えられました。子どもの養育費や私への配偶者扶養費も支払われることになり、財産分与もありました。

もし弁護士さんに依頼していなかったら、私は子どもと一緒に日本へ逃げて、その挙句、子どもだけアメリカに連れ戻されていたと思います。親権は取り上げられ、配偶者扶養費や財産分与などももちろん一切なかったことでしょう。正直、最初は弁護士費用が払えるか不安でした。でもアメリカで離婚するための知識などさまざまなことを教わり、お金には代えがたい力をいただきました。私にとって弁護士さんと共に戦えたことは、とても幸運なことでした。

離婚時は予測できなかった、元夫の新生活とローン 

離婚時の在米歴:22年 離婚時の婚姻期間:18年
子ども:1人(離婚時の年齢は8歳)

離婚の話の中心は子ども、そして財産やお金でした。子どもに関して何か決めるときは元夫と随時相談することにしましたが、今では詰めが甘かったと思っています。元夫に新しい相手ができ、子どもの保護者向けの席に彼女も同席するようになったり、あちらに子どもが生まれて我が子が優先されなくなったりして、当時と状況が変わってきているからです。

また、自宅とモーゲージは私のものになりましたが、モーゲージは夫名義だったので、いざ離婚するとこれまでの書類や明細が見られない上、私は専業主婦期間が長かったことから、借り換えをことごとく断られ、最終的に借り換えるのに1年近くかかりました。今は、アリモニー(扶養費)がある5年のうちに、安定した収入を得て自立できるよう頑張っています。お金は生活や精神の基盤ですから、将来を見据えてシビアに話さないといけません。日本人はつい遠慮しがちな話題ですが、そこは弁護士が入って話を進めてくれたので精神的な面では良かったです。

専門機関や弁護士に助けられての離婚 

離婚時の在米歴:5年 離婚時の婚姻期間:5年
子ども:1人(離婚時の年齢は6歳)

元夫は結婚当初からDVの傾向があり、私が警察に駆け込んだのを機に、自分がDVで訴えられることを恐れて離婚手続きに進んだようです。はじめのうちはDV関係の団体が紹介してくれた無料のリーガルサポートに手伝ってもらいながら1人で法廷に立ちましたが、法廷での「お金がないから弁護士が付けられない」という発言が認められ、元夫の負担で弁護士を付けられることになりました。

離婚で迷う人は、専門機関に話を聞きにいくだけでもいいので行動を起こしてほしいです。日記は有効だとか、会話の録音は違法になる場合もあるとか、情報や手順は早い段階で知っておく方がいいですし、相性もあるので、いくつもの機関に行くことをすすめます。私自身、リーガルサポートや弁護士を途中で変えました。通訳が付けば選択肢はたくさんあります。ちなみに私の場合、相手が高所得で、同居中は低所得者向けのサービスはほぼ受けられませんでした。そんな時、無条件で助けてくれたのは教会です。私に合う機関や人を紹介してもらい、 随分助けられました。

相手側の弁護士に振り回され離婚後の借金が40万ドルに 

離婚時の在米歴:14年 離婚時の婚姻期間 17年
子ども:1人(離婚時の年齢は15歳) 

元妻側の弁護士は倫理観が欠けていて、裁判をできるだけエスカレートさせて長引かせることで、お金を稼ごうとするような人物でした。

養育権を判断する書類に「日本で痴漢をした」とでっち上げられ、その内容を取り消す裁判をしたり、書類の1文が知らぬ間に書き換えられために私が罰金を払うハメになり、その罰金を取り消すための裁判を行ったりするなど、万事その調子で裁判の数も多く、それぞれに時間もお金もかかる上、自分の弁護士費用はもちろん、専業主婦だった妻の弁護士費用も払わねばならず、離婚が成立した時点で40万ドルもの借金ができてしまいました。

精神的に追いつめられ、このまま車ごと湖に突っ込もうかと考えたこともありましたし、妻が周囲の人に話すことで、一部の日本人から好奇の目で見られ、勝手に「子どもがかわいそう」などと言われたことも辛かったです。

ある程度収入のある男性が知っておくべきなのは、1人だけで家庭のお金のことを担うと、「ファイナンシャル DV」と見なされる場合があることです。これは、肉体的なDVに対して、精神的なDVといわれる問題の一つです。なので、光熱費など家計については何でも相手と共有しておく必要があります。さらに「お金は夫婦のもの」と言いますが、裁判では、普段どちらがどれだけ使うのかを見られます。元妻はあるだけ使う派で、私は質素に暮らせる派。結果、今後数年は私の収入の多くが元妻に渡ることになってしまいました。また、ワシントン州では女性の方が圧倒的に養育権を取りやすいのが実情です。男性で養育権がほしい人は、子どもと行動を共にすることをすすめます。男である私が50%の養育権を確保できたのは、娘を連れて家を出たからでしょう。

離婚に関しては、さまざまな機関やNPOがあり、子どものサポート団体もあれば、カウンセラーや弁護士を紹介してくれる所もあります。私はそういった機関を離婚後に知りましたが、裁判を始める前に利用して、夫婦互いが権利や流れについて知り、裁判をエスカレートさせないと方向性を話し合っておけばよかったと思っています。


法律やDVで困った時に相談できる窓口

ワシントン州

API Chaya
主に、アジア人女性のDV被害を支援する団体。日本語で相談することができます。
Web:apichaya.org 
TEL : 206-325-0325/1-877-922-4292
受付:月~金10:00am-4:00pm

 

ワシントン州/オレゴン州

International Families Justice Coalition (IFJC)
離婚を望んでいるけれど弁護士費用が払えない低所得の在米移民と、奉仕活動によるクレジットを必要とする弁護士をマッチング。アメリカ全州から日本語で利用できます。
Web:ifjc-us.org 
TEL : 206-849-6885

 

オレゴン州

Oregon Law Help
低所得者層および高齢者へ向けた法律支援。家族法、
人権問題、暴力・虐待保護などを扱います。

Portland Regional Office
Web:oregonlawhelp.org/organization/
multnomah-county-office-legal-aid-services-of

住所:520 SW. 6th Ave. #700, Portland
TEL : 503-224-4086/1-800-228-6958
受付:月~金9:00am-12:00pm・1:00pm-5:00pm

Hillsboro Regional Office- Oregon Law Center
Web:oregonlawhelp.org/organization/
hillsboro-regional-office-oregon-law-center

住所:230 NE. 2nd Ave. #F, Hillsboro
TEL : 503-640-4115/1-877-296-4076
受付:月水9:00am-12:00pm・1:00pm-5:00pm
火木9:00am-12:00pm・2:00pm-5:00pm
金9:00am-12:00pm

Oregon State Bar
家族法含め法律全般の相談ができ、弁護士の紹介なども行います。オレゴン州全体が対象。
Web:www.osbar.org/index.html
住所:16037 SW. Upper Boones Ferry Rd., Tigard
TEL : 503-620-0222/1-800-452-8260

※在ポートランド領事事務所では「DV被害に係る照会、相談等のための窓口(団体、組織等)」のリストを作成しており、問い合わせればもらうことができます。

 

日米の離婚 連れ去られた子供の変換援助申請

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*情報は2018年9月現在のものです

特集「アメリカでの離婚」:【取材協力】ワシントン州、オレゴン州の弁護士など » 

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