アメリカ大陸を横断する2024年の皆既日食を見る！

2024年4月8日、テキサス州やイリノイ州、インディアナ州など広範囲にわたってアメリカ大陸を横断する皆既日食を観測できるのをご存知ですか？ そこで、皆既日食を楽しむのに役立つ情報と、シアトルやポートランドがある西海岸から行くなら絶好の観測スポットであるテキサスの見どころを、旅のエキスパートである芦刈いづみさん、Tak S. Itomiさんに教えていただきました。(ライトハウス 2024年1月号　特集「2024年、皆既日食を見る旅 in テキサス。」より）
※テキサスの見どころ情報はページ下部のリンクからライトハウス電子版へ

皆既日食はアメリカのどこで見られる？

2017年8月にアメリカで観測された皆既日食を覚えている人も多いのでは？それから約7年、再びアメリカ本土で皆既日食を見ることができます。今回を逃すと、次にアメリカで皆既日食を見ることができるのは2045年8月、なんと21年後！ですから今回の皆既日食は絶対に見逃せない絶好のチャンスなのです！

日食の情報を提供しているサイトは、NASA（アメリカ航空宇宙局）をはじめたくさんありますが、皆既日食の長さも表示しているNational Eclipseのウェブサイトをチェックして、行く場所を決めると良いでしょう。今回2024年の皆既日食は、テキサス州、イリノイ州、インディアナ州、オクラホマ州、ニューヨーク州など、アメリカのかなり広範囲で観測できます。ちなみに私たちは、皆既日食の時間がほぼ最長の4分24秒あるテキサス州ランパサスの日食フェスでキャンプをする予定です。

◎　アメリカ・テキサス州で行われる皆既日食関連イベントとツアーの情報

アメリカ・テキサス州で皆既日食が観測できるエリアと時間（時刻）

アメリカでの皆既日食の観測エリアは時間と共に南西から北東へ。テキサス州では下の地図で示したダラス、オースティン、サンアントニオの3都市が2024年4月の皆既日食の観測におすすめです。

• テキサス州サンアントニオ：1:33:01 PM CDT
• テキサス州オースティン：1:36:11 PM CDT
• テキサス州ダラス：1:40:43 PM CDT

そもそも日食って何？

日食とはその字の通り、太陽が月に「食べられる」ように見える天体現象です。太陽と月、地球が一直線に並び、太陽が月の後ろに隠れることで日食になります。三者の距離の関係で日食の状態は変わり、今回のように太陽が月に完全に隠れると「皆既日食」になります。月の周囲に太陽が残って見える場合「金環日食」で、太陽の周りにリングができます。太陽の一部だけが月に隠れる場合は「部分日食」と呼ばれます。

皆既日食が起こるとどうなるの？

太陽が隠れていくので、辺りがどんどん暗くなり、そして寒くなります。皆既日食が起きている間は真っ暗闇です。前回（2017年）アメリカでの皆既日食は8月でしたが、日食が始まった頃には半袖だったのに、皆既日食の間はダウンジャケットを着て観測したくらい気温が変化したんです。欠けていく太陽を見ながら、大昔の人は日食を見て「太陽がなくなっていく」と恐怖を覚えたんだろうな、なんてことを想像しました。

アメリカでの2017年の皆既日食を見るために集まったたくさんの人たち！ 写真の時点で太陽が欠け始めていて、辺りがだんだん暗くなっていきました。
写真：sak S. Itomi & Izumi Ashikari

太陽がみるみる欠けていく様子に、子どもは驚いて口をあんぐり（金環日食を観測したときの写真です）。
写真：Tak S. Itomi & Izumi Ashikari

日食観測に必要なものは？

まず日食メガネ（Eclipse Glasses）は、必ず用意しましょう。アマゾンだと1個数ドル程度で買うことができます。肉眼で太陽を見ると目を悪くしてしまいますし、明る過ぎて太陽の形は見えません。サングラスなどで代用することも目を痛めるのでNGです。

また、画用紙に穴を開けたピンホールパネルを作っていくと面白いです。肉眼では良く見えない太陽の形が、ピンホールを通すことによってハッキリ見ることができますよ。

専用の日食メガネは観測の必須アイテム！ 目に優しく、安心して日食に臨めます。

専用の日食メガネは観測の必須アイテム！ 目に優しく、安心して日食に臨めます。
写真：Tak S. Itomi & Izumi Ashikari

ピンホールパネル（写真左上）は簡単に自作でき、太陽が欠ける様子も手軽に見ることができます。
写真：Tak S. Itomi & Izumi Ashikari

日食の写真影方法は？

貴重な天体ショーとなると写真を撮ってみたくなるもの。そこで日食の撮影について、写真家Takさんからアドバイスをいただきました。

皆既日食と金環日食の撮影のコツ

今回アメリカでみられる、太陽が月で完全に隠れる「皆既日食」と、太陽の大部分が隠れるだけの「金環日食」では、写真の撮り方が全然違います。

金環日食では、太陽の光は軽減されても、皆既日食のように辺りが真っ暗にはなりません。肉眼で見る場合には日食メガネが、また写真撮影の場合には光を軽減するNDフィルター（減光フィルター）がないと、太陽が本当に隠れているのかが分からないほど明るいままでした。

2017年にアメリカでの皆既日食を撮影した際もNDフィルターを用意し、太陽が隠れるまではそれを使用しました。しかし、太陽が完全に隠れてから再び太陽の光が差し込む瞬間の「ダイヤモンドリング」になるまでの間は、NDフィルターは必要ありませんでした。今回の皆既日食では太陽が完全に隠れるので、その状態でNDフィルターを使うと、写真は真っ暗で何も映りません。

皆既日食でのダイヤモンドリングの撮影

初めて皆既日食を撮影する場合、きっと撮影のハイライトはダイヤモンドリングだと思います。ダイヤモンドリングができるのは、日の出の瞬間と同様に、ほんのたった数秒の出来事です。そこに集中するのであれば、あまり欲張らずに、機材を「ダイヤモンドリングを撮る用」の設定にして待つ方が賢明でしょう。日食が始まると、太陽の光の明るさは毎秒ごとに変化します。ですので、初めての撮影の場合は、「ダイヤモンドリングを撮る！」など、ポイントを絞った撮影をおすすめします。

自作のフィルターを付けて撮影する様子。カメラのモニターで確認するとこんな感じ（写真左）。
写真：Tak S. Itomi & Izumi Ashikari

スマホでも皆既日食は撮影できる？

思い描く理想の写真をスマホで撮るのはとても難しいです。理由は二つ。まず一つ目は、写真における太陽のサイズが小さすぎること。プロ用のカメラでも、超望遠レンズが必要です（僕が以前撮った際は1200mm相当のレンズ設定）。スマホのズームで最大にクローズアップしたり、外付けの携帯用ズームレンズを装着したとしても、満足のいくサイズと画質で太陽を撮影することはできません。

二つ目の理由は明るさ。日食中の太陽の明るさは刻一刻と変わります。太陽の光が少しでもある時はNDフィルターが必要ですし、完全に隠れてからダイヤモンドリングまではフィルターなしで撮影し、またその数秒後からはフィルターが必要、というように短時間でセッティングを調整する必要があります。　スマホでも何かしら画像を撮ることはできると思いますが、それが満足のいくクオリティーかと問われると、そうではない可能性の方が高いです。

なにより、皆既日食の場面に遭遇するのはとても貴重な体験ですので、せっかくのタイミングでスマホを触って撮影に四苦八苦するよりは、上空で巻き起こるスペクタクルな光景をしっかりと自分の目で見ることをオススメします。本当に、ほんの数秒の幻想的な光景ですから。

iPhoneで皆既日食を撮った一例。カメラほど拡大することができず、設定調整も難しいので、スマホで日食をキレイに撮るのは厳しいでしょう。
写真：Tak S. Itomi & Izumi Ashikari

アメリカ・テキサス州での皆既日食ツアー＆日食イベントの情報

皆既日食のおすすめスポットであるアメリカのテキサス州でツアーやイベントに参加して、天文ショーを楽しみましょう！

皆既日食をオースティンの日食フェス会場で観測しよう！

この記事の執筆と写真提供をしてくださったTakさん＆いづみさんが、アメリカのテキサス州オースティンにて日食ツアーを開催します。

期間は2024年4月6日（土）〜11日（木）の5泊6日。6日にオースティンを出発し、日食のための「特設フェス会場」にて2泊キャンプ。日食フェスでは、NASA 関係者によるイベントや音楽ライブなどが開催され、日食を楽しもうと世界中からファンが集まります。観測のプロや写真撮影のプロ、宇宙関係者などと一緒に時間を過ごす、学びと発見のスペシャルイベントです！

8日の日食後はオースティンに移動してライブミュージックやテキサススタイルのBBQを。9日はヒューストンに移動し、10日は朝からヒューストン宇宙センターを見学。最終日11日、ヒューストンにて解散となります。ご興味のある方はこちらで詳細情報をチェック！

アメリカ・テキサス州で開催される皆既日食関連のイベント

◎　同特集に掲載のテキサス州サンアントニオ、オースティン、ダラスでの観光情報と「テキサスでしたいことベスト6」（ライトハウスの電子版が開きます）

ライトハウス2024年1月号特集「2024年、皆既日食を見る旅 in テキサス。」より。

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