現在、シアトル地域で野菜飲料の「100% Natural Brainpower」販売促進キャンペーンを展開中のカゴメ。 6月下旬、視察のために日本からシアトルを訪れた 喜岡浩二社長に独占インタビュー。その健康哲学を聞いた。 ▲カゴメの野菜飲料が並ぶ、シアトルの宇和島屋にて ーー2003年からカゴメのブランド・ステートメントとなっている「自然を、おいしく、楽しく」。同社のTVコマーシャルを結ぶこのフレーズに、聞き覚えのある読者も多いはず。自然の恵みに感謝し、大事にするということ。加工は最低限にして、素材を生かすということです。そして、「食=おいしい」、食事が人間にとって楽しいものであって欲しいという願いが込められています。多くの企業が広告に合わせてブランド・ステートメントを変えていく中、当社は5年前から一貫して使用しています。“自然”を最上のものとする、当社の「企業価値+求心性」を併せ持ったメッセージであると自負しています。 ーー近年のロハスの流行からか、化学調味料や添加物は極力使わず、食べ物をできるだけ自然に近い状態で体に取り入れようといった動きは、時代の主流になりつつある。生が良いのは、もちろんです。ただ、価格や保存の問題もあり、何でも生のままというのは難しい。そこで加熱、濃縮といった加工方法が使われるわけですが、熱を加える回数が多いほど劣化し、おいしくなくなるのも事実。当社では特許技術である逆浸透圧(RO)濃縮技術により、熱を加えずに水分を抜き、味や香り、栄養をそのまま保ちながらトマトを濃縮させています。アメリカによくある、ねっとりとしたのり状のトマト・ジュースとは違う、品質の高いサラサラなトマト・ジュースが、こうして完成するのです。 ーーカゴメがトマト・ジュース事業をスタートさせたのは1933年。その後、野菜飲料を中心とした健康飲料事業は同社の中核となっている。飲料事業はトマトから始まり、ニンジン、フルーツと徐々に広がっていきました。1995年、“野菜ジュースを国民健康飲料にしよう”と発売されたのが「野菜生活100」です。日本では、野菜は1日に350グラム以上の摂取が必要だと言われていますが、270グラム程度にとどまっている人が多いのが現状。生で食べるより手軽で、体内への吸収率の高いジュースで、野菜不足を補ってもらおうという取り組みです。発売当時の調査では、成人男性30~50歳の野菜ジュース飲用率は15~20%に過ぎませんでしたが、現在では70%以上となっています。牛乳の年間飲用量が50リットルに対し、野菜ジュースは5リットルとまだまだ及ばないものの、大きな進歩だと言えるでしょう。北米市場はまだ、日本の1/4~1/5程度。フルーツ・ジュースがおいし過ぎるんでしょうね。アメリカ版は、日本の「野菜生活」ライン同様に野菜とフルーツの割合は半々ですが、北米の方々の嗜好に合わせて野菜とフルーツの組み合わせを選択し、甘みを多少強くしています。 ーー2002年からは、植物性乳酸菌を主とした乳酸菌飲料事業にも本格参入を果たしたカゴメ。健康志向の消費者に向けた製品開発に邁進する同社が考える「健康と食」とは。近年は体内環境正常化を促す3つの力として、野菜の“抗酸化力”、乳酸菌の“免疫力”、現在研究中の“解毒力”に着目し、製品開発を進めていますが、その根底にあるのはやはり、「自然を、おいしく、楽しく」です。健康を守るには、1に休養、2に運動、3に栄養=食が必要。食は健康の源です。日本やアメリカなど先進国に限定されることではありますが、今は大衆にとって歴史上初の“食が空腹を満たすためだけではない時代”だと言えるでしょう。量より質、食べることを生きがいとして楽しむ、つまり“食の皆楽化”です。そんな中、消費者から食品メーカーへの欲求も多様化していますが、カゴメは食品メーカー他社とは一線を画し、これからも野菜に特化して、より自然に、ヘルシーに、食を提供することにこだわっていきたいですね。 |
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