特別インタビュー:三宅島芸能同志会 津村和宏さん
■ 父の明男、長男の和宏、次男の秀紀、三男の春快、世界でも珍しい親子によるプロの太鼓グループ「三宅島芸能同志会」。3月に開催されるベルビュー・ワールド太鼓フェスティバルの出演を前に、これまでの活動や、コンサートへの抱負を伺いました。
写真: 三宅島芸能同志会 ▲ 津村和宏 1981年、東京都三宅島で津村家の長男として生まれる。幼少より父の指導の下、三宅太鼓に親しみ、2000年頃から父と2人の弟と共に「三宅島芸能同志会」として一族4人で活動を開始。04~05年、太鼓芸能集団「鼓童」の研修所で訓練を受ける。現在は、日本国内外で年間50本以上の公演を行い、日本で太鼓の教室を22教室開講したり、ワークショップを行ったりするなど、太鼓の指導や普及にも努める。三宅島芸能同志会(http://miyaketaiko.com) |
”津村一族として、三宅太鼓を世界に広めるのが私の試練。 ”
ーまずは三宅太鼓の特徴と魅力を教えてください。
1820年、三宅島の牛頭天王祭で神輿を先導するために打った太鼓が、「三宅島神着神輿太鼓」の始まりだそうです。
三宅島神着神輿太鼓の最大の特徴は独特のフォームで、私の知る限り、腰を落として身体を左右に動かしながら打ち抜く打法は三宅太鼓しかありません。地面に近い位置に据えた太鼓を、両面から2人で打ち込みます。
2000年に三宅島が噴火するまでは、父の明男もこの祭りで太鼓係を務めていました。今、私たちが叩く「三宅島神着神輿太鼓」は、祭りの太鼓を舞台向けに突きつめたもので、太鼓に神楽、木遣り歌、獅子舞、ひょっとこなどを組み合わせ、緩急織り交ぜた表現になっています。
ーどのような経緯で、父と息子3人で活動するようになったのでしょうか?
父は三宅島で経営していた民宿の宿泊客に太鼓の体験をしてもらったり、アメリカンスクールの学生に演奏やワークショップを行ったりすることもありました。島の祭りもあったので、私たち3人の息子にとって、太鼓は生活の一部だったんです。
三宅島の噴火で島民が東京本土へ避難をした後に演奏依頼があり、初めて父子4人だけで舞台を行ったのが約18年前です。それまで太鼓は地域の人たちと一緒に叩くものでした。
その後、父は東京で太鼓の教室を立ち上げました。父には東京を拠点に、伝統芸能を広げたい思いがあり、やるからには家族でサポートしようということになったのが、4人で活動を始めたきっかけです。
ー和宏さんは、身近にお父様という存在がありながら、和太鼓集団の「鼓童」で研修をし、その後また戻られたんですよね?
はい、当初は鼓童のメンバー志望でした。しかし、研修を経て、以前、父が鼓童に指導をした「三宅」という演目が世界中に広まり、いかにリスペクトされているかと改めて実感させられたんです。
これを機に、鼓童の一員としてではなく、津村一族としてオリジナルの三宅の太鼓の魅力を世界中に広めていくことが、私に与えられた試練だと思うようになりました。
ー17年12月に演奏活動40周年を迎えられたお父様はどのような方ですか?
太鼓の師匠であり、三宅太鼓をここまで広げた父には脱帽です。「尊敬」、この一言に尽きます。
ー父、長男、次男、三男、4人それぞれの持ち味や役割を教えてください。
父の明男は身体からにじみ出る味、全てです。私、和宏は低い姿勢からの打ち込み、次男の秀紀はパワー、三男の春快はスピードでしょうか。
実は、チームワークや演奏中の意思疎通など、特に意識したことはありません。ごく自然に分かり合えていて、舞台では4人が一心同体だと思っています。
家族と一緒だからこその苦労も特にないんです。思ったことはすぐに口にするのでその場で問題は解決します。
ー3月に出演される太鼓フェスティバルでの見どころを教えてください。
家族で活動しているプロの和太鼓の組織は世界で私たちだけです。太鼓を通し、家族の絆、そして低い姿勢から、1発1発打ち抜く太鼓をお客様の身体にお届けします。演奏中は掛け声で打ち手にげきを飛ばしますから、太鼓の打ち込みはもちろん、息遣いやかけ声などにも注目していただきたいですね。また、父の40年の思いや気迫、太鼓道40年の集大成をご覧いただければと思います。
主催者である立石ご夫妻と共に家族だからこそできる舞台作りに取り組みたいです。
ーライトハウスの読者にメッセージをお願いします。
シアトルでは昨年の春、私と春快でワークショップを開講し、延べ100人もの方に熱心に学んでいただきました。そんなシアトルで4人そろっての訪問、初公演ができてうれしく思います。私たちの太鼓が皆さんの心に届き、祭りを楽しんでいただくことを願って演奏します。ぜひ会場でお会いしましょう。
写真: 三宅島芸能同志会
【コンサート情報】
「第4回 ベルビュー・ワールド太鼓フェスティバル」
○出演:三宅島芸能同志会ほか
○日時: 3月3日(土)
○会場: Bellevue HS Performing Arts Center(10416 SE. Wolverine Way, Bellevue)
○金額: $38(一般)、$25(22歳以下)、$60(VIP)
○主催・チケット購入: Japan Creative Arts
(www.worldtaikofestival.org)
※4日(日)はワークショップを開催。
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