特別インタビュー:Aero Zypangu Project代表 前田伸二さん
■ 隻眼のパイロットこと、前田伸二さん。事故や挫折を乗り越えパイロットとして活躍するまでの道のりを話す講演会、飛行体験、そして世界一周プロジェクトなどを通じて、若者や障がいを持つ人々に生きるエネルギーを与えています。そんな前田さんの活動をご紹介します!(2018年9月)
▲ 前田伸二 まえだ・しんじ◎1979年生まれ。北海道十勝出身。日本大学理工学部航空宇宙工学科在学中に交通事故で右目の視力を失う。エンブリーリドル航空大学、航空安全危機管理修士課程を修了。2005年に双発計器飛行付自家用操縦士免許を取得し、2017年に飛行教官となる。現在は、航空機製造会社に勤務しながらAero Zypangu Projectとして、後継育成の講演活動に尽力。 |
”障がいを持つ自分が少しでも現状を打破したい ”
ーAero ZypanguProject立ち上げのきっかけは?
パイロットを目指していた学生時代に事故で右目を失明。日本では障がい者がパイロットになるどころか、就職自体が不可能と言われ、辛い思いをしました。しかし、アメリカの大学院で出会った教授に「お前は飛べる」とアメリカの制度を教えてもらい、パイロットへの道が開かれたのです。今でも日本人の多くは障がい者はパイロットになれないと思い込んでいるので、人によっては私の存在そのものが有益な情報に成り得ると思っています。また、事故から20年経ちますが、日本の航空業界は当時と全く状況が変わっていません。自ら情報発信することで、少しでも日本の状況を打破したいと、活動を開始しました。
ー講演会では何を話しますか?
夢の探し方、家族や友人の大切さ、1度きりの人生で力を出し切るにはどうしたらいいか?という話をします。自分は嫌な大人にぶつかって、苦しい思いもしたけど、自分の考えでやってきた、そういうことを本気で話すと、子どもたちの目つきは途端に変わるんです。
ーこれからの予定は?
2年後に世界一周の挑戦を予定しています。日本生まれの障がい者パイロットとして初の試みです。行った先々での人々との出会いも楽しみです。
Aero Zypangu Project:3つの活動
1. 飛行体験
日本の航空産業で働く多くの人が、飛行機を操縦したことも触ったこともない現実を受け、開始したプロジェクト。実際に飛行機に触って操縦を体験することで、飛行機をより深く理解できます。
前田さんと一緒に操縦桿を握って機体を傾けたり、エンジン出力を上げて上昇したり、スピードを出したりするなど、「見ているだけ」ではなく、本当に一緒に操縦をするのが特徴。体験最年少は15歳。過去には65歳の方が挑戦したこともあるとか。「視野が広がった」、「航空業界で働く決意が固まった」などの感想が寄せられています。何より参加者が皆、良い笑顔!
2. 講演会
活動の大きな軸となる講演会。前田さんは過去10年で延べ5000人以上の前で話をしてきました。編集部が取材に伺ったのは、日本からホームステイ中の高校生約30人の前での講演会。最近の日本の高校生の悩みや進路の話を織り交ぜつつ、自身の事故と自殺を考えたほどの挫折、パイロットになるまでの道のりや、それを支えてくれた周囲の人々について語ります。冗談と笑いで始まりながらも、いつしか学生たちは前田さんの話に引き込まれて真剣な表情に。
講演会の主催者や学校の先生によると、前田さんの話を聞く前と後では、学生の留学や学びに対する姿勢がガラリと変わるとか。学生のヤル気に火を付けてくれる講演会です。
3. 世界一周
2020年、Aero Zypangu Projectでは、単独地球一周飛行(Earthrounder:アースラウンダー)に挑戦します。ビーチクラフト社製のボナンザという1960年代に製造されたプロペラ機で日本を含む世界15カ国を周る予定。到着する先々で、若者や障がい者やマイノリティーに向けて前田さんが自身の体験を語り、彼らが自分を肯定して一歩進むために背中を押します。なお、同プロジェクトではスポンサーを募集中です。興味のある方、企業は下記までお問い合わせを。
Aero Zypangu Project
web: aerozypangu.com
E-mail: contact@aerozypangu.com
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