特別インタビュー
■ 2019年、アルバム『Echo』が『ビルボード』誌コンテンポラリー・ジャズ・チャートで、日本人としては初の3度目の1位を獲得した松居慶子さん。今月、シアトルのJazz Alleyで4日間の公演を行います。公演直前の松居さんにお話を伺いました。(2021年8月)
▲ 松居慶子 まつい・けいこ◎東京都出身。高校生の頃より映画音楽などの仕事を始める。18歳でヤマハと契約し、その後、独立して渡米。1987年自主制作アルバム『水滴』が米国内で話題に。以来、日米にとどまらず、世界各地で演奏を行う傍ら、チャリティー活動にも熱心に参加している。現在はロサンゼルス在住。(www.keikomatsui.com) |
” コンサートは奇跡の積み重ね。今、ステージで演奏できる幸せ ”
ー世界中でコンサートが中止となってしまったコロナ禍を、どのように過ごしていましたか?
全てのコンサートの予定がキャンセルになり、ミュージシャンだけでなく、コンサートを支えるチームスタッフにとっても辛い期間でした。ロサンゼルスの自宅で健康に気を付けながら再開を祈る日々。でも、自宅からストリーミングライブを行えたのは良い経験でした。会場のお客さんの笑顔が私のエネルギーなので、それがないのは寂しかったですけど、コメントはたくさんいただけました。また、長年コンサートで世界中を飛び回っていたので、自宅の同じ枕で1カ月以上連続で寝られたのは本当に久しぶりで、新曲や新しいアルバムの構想を練る時間もたっぷりありました。
ー5月からコンサートを再開しましたね。アフターコロナのコンサートはどんな感じですか?
まず、5月末にフロリダのジャズフェスティバルに出演しました。米国内ではコロナ後初となる大きな野外フェスティバルで、お客さんの喜びの弾け方がすごかったです。「バーチャルではなく、お客さんの前で演奏することがこんなに幸せなんて…」とステージに立った瞬間は感無量でした。安全を確保しながらサイン会も開催され、本当によかったです。また、コンサートは奇跡の積み重ねだと改めて思い知りました。国境を越えて旅をし、会場には世界中から人が集まり、セキュリティーが抑えきれないほど人が押し寄せる中でサイン会をしていたのが嘘のようです
ー最新作『Echo』は、『ビルボード』誌のコンテンポラリージャズチャートで初登場1位、年間チャートも5位でした。1位獲得は3回目。それでもやはり、記録はうれしいものですか?
『Echo』は、スタジオにミュージシャンが一堂に会し、セッションをしながら録るという昔ながらの方法で作りました。そうすると皆のハートやソウルが共鳴し合っているような気がして、それで『Echo』と名付けたんです。
ナンバーワンは何度でもうれしいですよ。特に初登場1位は、まだラジオでもほとんどかかっていない時点で、これだけ発売を待っていた人がいた結果ですから。それに、ストリーミングで一曲ごとに聞くような時代になりつつある今、パッケージとして作ったアルバムが評価されたこともうれしかったです。
ー松居さんがこのように第一線で長く活動を続けてこられた秘訣や要因って何なのでしょう?
昔は小さなクラブですら「お客さん来るかな?」と心配になることもありました。でも、曲が人と人とをつないでくれたんです。マイルス・デイビスやジョージ・ベンソンなどの前座や、短期間のツアーで曲を届けるうちに、だんだんとツアー期間が長くなり、世界中から呼んでいただけるようになりました。競争は厳しく、女性も日本人も少ない業界ですが、安心して信頼できるスタッフやチームに恵まれたことも要因と思います。「前座なのにスタンディングオベーションを受け過ぎ」と言われたこともありますが(笑)、そうした繰り返しで、一度コンサートに来た人が「また来たい」となり、演奏機会が増えたのだと思います。お客さんのおかげです。
ー今回コンサートを行うシアトルのJazz Alleyはどんな場所ですか? また、どんなコンサートになりそうですか?
Jazz Alleyは老舗の箱で、過去の偉大な先輩たちが立ったステージに自分も立てることは喜びです。今回は『Echo』をフィーチャーしつつ、これまでのオリジナルで定番の曲を混ぜながら、最新かつベストのコンサートになると思います。
ー最後に今後の目標と読者のみなさんに一言お願いします。
今は新しいアルバムの製作中で、今後はオーケストラと組むショーも行いたいと計画しています。また、来年はパラグアイの子どもたちのためのチャリティーコンサートがあります。
シアトルはシーフードがおいしくて、夏は天気が最高で、大好きな街。シアトルでまた公演できることがうれしいです。みなさんと久々に同じ場所で楽しい時間を過ごしたいので、ぜひコンサートにお越しください!
『Echo』(2019)
Amazon.comで販売、Spotifyやpandraなどで配信中。
日時:2021年8月26日(木)7:30pm
27日(金)7:30pm・9:30pm
28日(土)7:30pm・9:30pm
29日(日)7:30pm
会場:Dimitriou’s Jazz Alley(2033 6th Ave., Seattle)
金額:$36.50
チケット購入:www.jazzalley.com
*情報は2021年8月現在のものです