| 「ディスタンス」 © 2001 『ディスタンス』制作委員会■ 監督 是枝裕和 ■ 出演 ARATA 伊勢谷友介 松方弘樹 夏川結衣 浅野忠信 ■ 公式ウェブサイト www.kore-eda.com |
連載10回目に当たる今回は、読者からのお便りに答えるという企画だそうで、すっかり映画評論家気取りで鼻高々の私です。読者からいただいた質問の数が500万通もあり(ウソ)、1回で答えるのは大変なので、今回と次回の2回に分けて、私自身が独断と偏見で選ばしていただいた質問に答えちゃいます。 Q1:今、一番イイ作品を作っている日本人の監督って誰ですか?
私の個人的な意見では、三池崇史と是枝裕和の二人。三池さんはとにかく、どんなジャンルでも佳作に仕上げる職人的才能が凄い。怒涛のアクション演出がしびれた「DOA」、むっちゃ恐かった「オーディション」、韓国のホラー映画をリメイクしながらも何とミュージカルにしてしまった(しかも沢田研二、松坂慶子、丹波哲郎が唄って踊っちゃう)「カタクリ家の幸福」の“オバカ”加減、ひたすらエグかったエロ映画「ビジターQ」など、どれも最高! もう一人、是枝裕和もデビュー作「幻の光」でいきなりベネチア映画祭で監督賞を受賞。二作目「ワンダフル・ライフ」はハリウッドでリメイクが決定。三作目「ディスタンス」もカンヌ映画祭のコンペに選出されるなど、ハズレのない確かなキャリアを築きつつある。元はドキュメンタリーの出身なだけに、プロの役者と素人を巧みに使い分け、ファンタジックな作品に何とも言えないリアリティーと奥行きを醸し出すことに成功している。ハリウッドの映画作家にはない才能なので、これからもどんどん世界に羽ばたいていくことだろう……って、お前何様のつもりだってお叱りを受けそうだが、あくまで個人の好みでありんす。 Q2:一番いい演技をする、世界にも通用するといわれている日本人役者は?
う~ん、これは難しい質問。いない!ってそれは言い過ぎか。まあ、ビートたけしや役所広司あたりが可能性あるかも。でも、海外に進出するのなら、本人にやる気がないとね。海外にしっかり住居を移すとか。吉田栄作がどんなに大口叩いてアメリカに来ても、どんなに才能があってオーディション受けまくっても、基本的に欧米にアジア人俳優が活躍できる基盤はないのです。ジャッキー・チェンやチョウ・ユンファがスターになれたのは、世界中に溢れる中国人の多さにハリウッドが商業的価値を見い出したから。だから、始めから脚本家が彼らが主演できるストーリーを書いているのです。しかし、いくら吉田栄作(引き合いに出してゴメンナサイ)がオーディションを受けても、脚本に描かれるアジア人の役柄は最初から端役が多いのだからしょうがない。それに、吉田栄作が映画に出ても、世界中の日本人が映画館に足を運ぶとは思えない。役所広司、永瀬正敏、工藤夕貴などは海外でその演技力が高く評価されているけど、彼らを想定して脚本を書いてくれる脚本家がアメリカにいない限り、世界的スターになれる可能性は薄いと思う。 Q3:今、お金と時間の心配をせずに好きなように映画を作ってよいと言われたら、どんな映画を作りますか? また、主役、そのほかの配役には誰を使いますか?
ハリウッド版「忠臣蔵」です。ストーリーを現代に移してとか、そういう卑怯なことはしません。ハリウッドのキャストで舞台は日本の江戸時代。大石内蔵助にハリソン・フォード、大石の妻りくにアネット・ベニング、 浅野内匠頭にラッセル・クロウ、内匠頭妻瑤泉院にジュリア・ロバーツ、 堀部安兵衛にエド・ハリス、大石主税にレオナルド・ディカプリオ、高田群兵衛にブラッド・ピット、そして吉良上野介はマーロン・ブランドにしようかと思ったけど、松の廊下での立ち回りに耐えられる体力に問題ありそうなので、アンソニー・ホプキンス。そして私の大好きな土屋主税の役は誰が何と言おうが私が演ります(なんのこっちゃ)。 「ラストエンペラー」で中国人が英語しゃべってたんだから、武士が英語しゃべってもまったく問題はありません。こういう素晴らしい話はもっと欧米に知らしめないと。きっと欧米の劇場は感動でパニックとなり、えてして野蛮な行為と思われていたハラキリも、自己犠牲に基づいた美しい日本の心として理解を得ること間違いなし。日本人が演じると、“ほかの世界の出来事”として観てしまう欧米人でも、アメリカ人をキャスティングすれば、観客は感情移入して観てくれるのではないか、という狙いもあるのだ。いままで企画する人がいなかったことが不思議でならない。 それでは、次回に乞ご期待。 |
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