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マイノリティ・レポート

ロゴ 第11回
「マイノリティ・レポート」

マイノリティ・リポート
「マイノリティ・レポート」
© 2002 Twentieth Century Fox and Dreamworks, LLC

監督
Steven Spielberg

出演
Tom Cruise
Colin Farrell
Samantha Morton
Peter Stormare
Max Von Sydow

公式ウェブサイト
www.minorityreport.com

前回に引き続き、今回も読者の質問に答える予定だったのだが、日本ではトム・クルーズ主演の映画「マイノリティ・レポート」がかなり話題になっているので、勝手ながら今回はこの映画について書かせていだたこう。

映画ファンなら必ず狂喜乱舞するであろう、スピルバーグとトム・クルーズの強烈なコラボ。「マイノリティ・リポート」はそんな大きな期待で迎えられた……はずなのだが、興行成績は今ひとつ。公開1週目でやっと興行収入が1億ドルを突破するという、スピルバーグ作品としては平凡な成績に終わった。前作の「AI」も成功と言い難い興行成績だったが、個人的には内容は嫌いじゃなかった。でも、スピルバーグ・ファンが求める映画は、これとは少し違うのかもしれない。

断っておくが、私はこの「マイノリティ・リポート」をまだ見ていない。だって、日本じゃまだ公開されてないもん。だから、映画の批評は書けない。私が興味を持ったのは、昔からトム・クルーズとのコラボを提案されていたスピルバーグが、なぜ今になってトム・クルーズと組んだのか、ということである。ハリウッドには「大監督になればなるほど、大スターとは仕事しない」という定説(私が作った定説だが)がある。やはり大スターほど演出に文句を付けたがるから、監督として使いづらいというのもあるだろう。天下のスタンリー・キューブリックの大傑作「2001年宇宙の旅」も、主演はキア・デュリアという俳優で、「お前、他にどの映画に出たんだよ」って奴だった。我らが世界のクロサワも、晩年は好んで素人俳優を使いたがった。スピルバーグも例に漏れず、あまりスター俳優を使わない。今までは恐竜や宇宙人や鮫が主人公の映画ばかり撮っていたから、その必要もなかった。だから、スタローンやトム・クルーズとのコラボの企画は、ことごとく壊れていったのだ。

今回の映画の舞台は未来。テクノロジーが犯罪を未然に探知できるまでに進歩し、犯罪者は犯罪を犯す前に捕らえられ、有罪を宣告される。トム・クルーズの演じる役は、未来を覗くテクノロジーを駆使して殺人者を未然に逮捕する部署で働く刑事。その彼が、ある日、会ったことのない男を殺す罪で告発される。フィリップ・K・ディックの小説が原作で、ストーリーは難解で映画化は何度も頓挫した。それでも、映画化の道が消えなかったのは、やはりスピルバーグの力の大きさによるものだ。だが、少しでも作品上のリスクを軽減するために、スタジオは主演に大スターを起用することを提案した。そこで浮き上がったのが、今をときめくトム・クルーズの起用だった。もうひとつのトム・クルーズ起用の理由は、スタンリー・キューブリックがらみである。スピルバーグの前作「AI」は、キューブリックの企画を映画化したもので、自身も熱狂的なキューブリックしんぱ。トム・クルーズもキューブリックの遺作に主演し、キューブリックを尊敬している。この「マイノリティ・リポート」も、キューブリック作品にオマージュを捧げたシーンが数多くあるらしく、スピルバーグもトム・クルーズの起用には前向きだったようだ。

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。