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ザ・リング

ロゴ 第14回 「ザ・リング」

The Ring
「The Ring」PG-13
Photo© Copyright Dreamworks

監督
Gore Verbinski

脚本
Ehren Kruger
Scott Frank

出演
Naomi Watts、Martin Henderson、Brian Cox
Shannon Cochran、Lindsay Frost

配給
Dreamworks

公式サイト
http://www.ring-themovie.com/

リメイクって言えば、最近(って言っても1年前か)では、トム・クルーズ主演の「バニラ・スカイ」ってのがあった。スペイン映画「オープン・ユア・アイズ」(もしくは女優)を気に入ったトム・クルーズが自ら版権を買って映画化したのだが、心理サスペンスからいきなりSF映画になってびっくりしたオリジナルに比べ、リメイク版はいまいちしっくりこなかったっけ。思うに、映画でもなんでも、最初に考えだした人が偉いのであって、オリジナルを踏襲する限り、どんなに金かけてもリメイク版がオリジナルにかないっこないのである。それを踏まえて「ザ・リング(The Ring)」を観ました。日本版は怖かったな-。一週間後にひとりでにテレビがつくんじゃないかって冷や冷やしたっけ。何しろアメリカ版はシアトルでロケしてるし、80億円も制作費かけてるって言うから、ちょっと期待しちゃたよ。っというわけで、結論を先に言うとイマイチ。難点はじぇんじぇん怖くな~い。

何故に怖くなかったのか。日本版は敢えて謎の部分を残して怖さの余韻を残す効果を上げていたのに対し、アメリカ版は理論的解釈でサマラ(日本版の貞子)の素性を探っていたからだ。それが余計だった。日本版では、貞子の素性に関しては謎にし、暗に海の怪物と母親との間にできた得体の知れないものであるということを匂わせていた。それゆえ、貞子の顔は一切出さず、いつも髪の毛で隠れた顔が、最期にこの世のものとも思えぬ恐ろしい片目を披露し、それが私の恐怖のボルテージを最高潮に達しさせた。幽霊を前面に出さない演出。それが日本版の素晴らしいところだった。心霊写真を見てごらんなさい。幽霊はいつも片隅で顔の半分とか、片手だけを出して、それ故、我々の想像力と恐怖心を駆り立ててくれるのだ。エロビデオもそう。日本のモザイクの入ったAVは我々の想像力を駆り立て、それ故、スケベな気分は増大する。アメリカのポルノみたいにそのものズバリ出されると、かえって興ざめなのであるって、なんの話だっけ?

そう、要するにハリウッドは、なぜこの映画が日本やアジア全域を恐怖に陥れたのか、よく研究してほしかった。大口を開けて死ぬ死に顔もアメリカ版はリック・ベイカー(「猿の惑星」などでアカデミー賞受賞の特殊メイク・アーチスト)のメイクでいかにも作り物の顔をしていた。これも全く興ざめ。生身に俳優の演技でやってほしかった。「リング2」での深田恭子の死に顔くらいの衝撃度を期待していただけに、失望だけが残ります。日本版の真田広之扮する前夫は超能力の持ち主で、松嶋菜々子を助ける頼り甲斐のある男だったのに対して、アメリカ版では実に頼りない男になっている。これじゃホラー映画を見慣れたファンなら、絶対ラストに死んじゃうと気付いちゃうよ。あと、日本版で出てきた布を被って指差す男も登場させてほしかった。日本版では実に重要な意味があったのに、なぜにアメリカ版では無視されたのか私は知りたい。来年、「呪怨」っていう映画が日本で封切られます。これは私、すごい期待してます。もともとビデオ映画として作られたのだが、そのあまりの怖さに映画化が決まったという作品だけど、そのビデオ版をぜひ観て下さい。ストーリーはいい加減だけど、怖さは一級です。「ザ・リング」が全然怖くなかった人にお勧めです。「スクリーム」や「エルム街の悪夢」のウェス・クレイブンが、日本映画の「回路」をリメイクするらしいけど、やはり期待はできないね。ホラーはやはり日本です。

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。