さあ、年の瀬も深まり、映画界は賞シーズンへと移行している。それに伴い、ゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞など、主要映画賞の受賞結果やノミネートの発表が迫っている。アカデミー賞の前哨戦という意味で、今後発表される映画賞の選考結果は、映画製作者たちには重要な結果をもたらすことになる。何しろアカデミー賞の結果で、映画の興行成績や二次使用、つまりビデオやDVDの売上げも断然違ってくる。そして、テレビの放映権料などもぐんと跳ね上がる。それ以上に、映画人にとってオスカーは最高の名誉である。どんなズルをしてでも欲しいという方々は、わんさかいる。 この季節になるとハリウッドでは、オスカーのプロモーション用に、アカデミー会員に対する試写会攻勢(接待?)が始まる。プロモーションに熱心なディズニー傘下のミラマックス社は、近年「恋に落ちたシェークスピア」のプロモーションに数億円かけたことが実を結び、大方の予想を復して念願の作品賞を射止めた。 アカデミー賞にはここ18年間、ノミネートすらされていない日本映画だが、今年は宮崎駿の「千と千尋の神隠し」に期待が集まる。昨年から新設された「ベスト・アニメーション」部門のほかに、作品賞の有力候補にもなるのではと予想する向きもある。すでに同作品は、全米最古の映画賞である「ナショナル・ボード・オブ・レビュー最優秀アニメーション映画賞」を獲得。5年前に「Shall We ダンス?」が期待されながら、米公開前に日本でTV放映され、アカデミー賞資格に反するということでノミネートから外されたが、今回はその条件もクリア。全米マスコミも「千と千尋の神隠し」のアカデミー賞ノミネートは確実視している。唯一の問題点は、賞のライバルとされているのが、ディズニーの「リロ&スティッチ」ということだろう。「千と千尋」もディズニーの配給であり、やはり自社製作の作品に賞を獲らせたいと考えるのが普通であるため、ディズニーお得意のアカデミー会員向けプロモーション(つまり接待)も、「リロ&スティッチ」中心になるのではと予想される。しかも「千と千尋」は全米最大150館で封切られたが、「リロ」は約3000館で公開されたマンモス作品だ。知名度じゃ、巨人の松井とカープの新井くらい違う(分かんない喩えだな)。あまり映画を見ないという噂のアカデミー会員の“じいちゃんたち”は、おのずと有名な作品しか選ばないという傾向があるらしいので、その点が心配である。実力では断トツなのだが。 ちなみに、各国から1本出品してもらい、そこからアカデミー賞側が5本のノミネート作品を決める外国語映画部門では、日本からは何と平山秀行監督の「OUT」を出品した。やる気あるのか、日本アカデミー協会! 作品の出来不出来は関係なく、やはり賞の向き不向きがある。「うなぎ」、「HANA-BI」が賞向きなら、「鉄道員ぽっぽや」、「GO」は賞向きではない。いくら日本アカデミー賞を獲ったって、海外では関係ないのである。なんでそれが分かんねえかな。はっきり言って「OUT」は賞向きでないのは明らか。奥田映二監督の「少女」、北野武監督の「Dolls」、塩田明彦監督の「害虫」、諏訪敦彦監督「H-Story」などの方が、ずっと可能性はあったのに。ちなみに今年の作品賞は、ニコール・キッドマン、メリル・ストリープ、ジュリアン・ムーア主演の「ジ・アワーズ」だそうだ。 |
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