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隣国の国粋的映画に熱狂する日本人

ロゴ 第17回
隣国の国粋的映画に熱狂する日本人

映画を斬る
「酔画仙(チファソン)」
© 2002 TAEHUNG PICTURES

監督
イム・グォンテク

出演
チェ・ミンシク
ユ・ホジョン
アン・ソンギ

公式サイト
http://www.chihwaseon.com/

最近、日本のテレビは北朝鮮ばかりで、映画では、やたら韓国映画の話題が多い。私も極力見るようにしているが、韓国映画の知名度を上げたと思われる映画に「シュリ」がある。私はこの映画が嫌いだった。ほかには「JSA」、「ユリョン」などがあるが、どれも似たような映画で好きになれなかった。アメリカ映画ほど迫力がある訳でもないし、感傷的に民族の誇りを歌い上げる、その薄っぺらいセンチメンタリズムとマッチョニズムと右翼的思想が嫌だった。にもかかわらず、朝鮮日報の日本語版を読むと、やたらと日本映画に対して「自国を美化する傾向がある」と評している。そんな映画あったけ?、と首を傾げてしまうが、どうも時代劇のことを言っているらしい。時代劇で日本人の良さを表現すれば軍国主義を美化すると思われるなんて、日本も罪つくりなことをしたもんだ。その記事では、一方で、韓国の映画は自国を美化することなくドラマを描いていることが、欧米で高い評価を受けているのだとも分析していた。

韓国の新作映画「2009ロスト・メモリーズ」は、もし未来に韓国が日本に侵略されていたらと仮定して、日本の警察と韓国の反日組織が戦う近未来SF映画である。韓国のスタッフが、映画に出演した仲村トオルが帰国後に日本の右翼に命を狙われるのではと“真剣に”心配したという。ウソのようなホントの話。

昔観た韓国映画でも「ディープ・ブルー・ナイト」や「外人球団」なんて良かった。うそ臭いお涙頂戴や戦意高揚映画でなく、技術的に未熟でもしっとり、じっくりと人間を見つめる映画だった。最近の作品では、日本では話題にならなかったけれど、イム・グォンテク監督の芸術映画「酔画仙」は素晴らしかった。日本のマスコミもハリウッド映画をパクったくだらんアクション映画ばかり大きく取り上げておいて、韓国が誇る巨匠の作品を無視するのは、韓国映画界に対して失礼である。良いものは良い、悪いものは悪いと言わなくちゃ日韓親善でもなんでもないのだ。ちなみに最近見た「猟奇的な彼女」は「八月のクリスマス」以来、久しぶりに楽しめる娯楽映画だった。

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。