「ピノッキオ」を観た。「ライフ・イズ・ビューティフル」の感動を期待している方は、はっきり言ってずっこけます。 ハリウッドでは偉大なペットとして君臨していたロベルト・ベニーニも今作がアメリカで大コケし、今や飼い主(ミラマックス)にも逃げられる状態。イタリアでは記録的大ヒットだったらしいが、前作があまりに素晴らしかったから残念だった。しかし、前作のおかげで今作への期待が大きすぎたことを考慮すると、「ピノッキオ」はそれほどひどい映画ではない。中盤のサーカスの場面の喧騒感と全体とプロダクション・デザインはフェリーニ映画を思わせ(実際ベニーニはフェリーニ作品に主演している)、登場人物すべてが大人なのに、心は子供な設定も面白かった。だが、今、私は子供の心境になるほど心に余裕を持って生きていないので、50のハゲ親父が楽しいなー、楽しいなーと叫びながら、ぴょんぴょん跳ねるシーンはとても正視できなかったのである。 スティーブン・キング原作の映画化「ドリームキャッチャー」への期待も大きかった。何しろ、彼原作の映画は公開される度に「どんな映画だろう」と、どうしても気になってしまう。ホラーの「ミザリー」、「シャイニング」や、人間ドラマ「ショーシャンクの空に」、「グリーンマイル」、「スタンド・バイ・ミー」などが代表作として挙げられるが、期待はずれが多いのも事実である。基本的に彼の小説をそのまま映画化すると失敗すると言われている。それもそのはず、彼の長編を100分の映画にするのは無理がある。ハリウッドでは、キング原作の映画化で成功するのは、キングのプロットを才能ある監督が換骨奪胎、大胆に脚色して映画にしたもののみと言われる。あの傑作「シャイニング」だって、キングは「二度と観たくない」というコメントを出している。 ということで、問題の「ドリームキャッチャー」だが、内容は特殊な能力を持った子供たちがやがて大人になり、故郷に戻ってくる。だが実は彼らはとんでもない役割を担っていた……、というものだ。スポットCMやストーリーから判断するとなかなか面白そうだが、実際の映画は「?」だった。キングの原作そのままに映画化してしまうという、一番やってはいけないことをやってしまったのが最大の理由であるが、なにより長い長編をそのまま映画にするもんだから、頭の悪い私にはいまいちよく内容が分からなかった。 期待させて肩透かしを喰わせるという意味では、ジョン・カーペンターの映画に共通するとも言える。最初の数十分はハラハラさせるが、その後が続かない。野球に例えると、先発完投型でなく、5回を過ぎた当たりで途端に球威の落ちるピッチャーみたいなもの。最後まで期待できないのがスティーブン・キングの映画なのだ。だが、キング・シリーズの中には最後までハラハラして観た映画もある。「ランゴリアーズ」というタイトルで、アメリカのケーブルTVで観たので、多分テレビ映画だと思う。飛行機に乗り合わせて乗客大多数が突然消え失せ、生き残った乗員が空港に降り立っても人間は誰一人としていない。物語はなぜ彼らは消えなかったをスリリングに語りつくす。CGは極端にちゃちで、スター俳優も出てなかったけれど、最後まで目を惹きつけられて鑑賞した。この作品は稀有だった。 |
コメントを書く