今は何と言っても、日本ではヨン様である。NHKで放送中の韓国ドラマ「冬のソナタ」の主演男優ぺ・ヨンジュンに惚れ込んだ日本の女性ファン(特に中年の奥様方)が、彼のことをこう呼んでいるのだ。こういった韓国文化全般を“韓流”と言い、ぺ・ヨンジュンのほか、チャン・ドンゴン、ウォンビン、ソル・ギョングの3人を入れて、韓国四天王とされているらしい。 つい最近、その韓国四天王のうちのふたりが来日した。韓国で鳴り物入りに公開され記録的大ヒットとなった「ブラザーフッド」の主演男優、チャン・ドンゴンとウォンビンである。先日、その「ブラザーフッド」を観て来た。この作品、「シュリ」でヒットを飛ばしたカン・ジェギュ監督の最新作である。実はその前作「シュリ」を、私は全然おもしろいと思わなかった。よくハリウッド映画を抜いたという触れ込みが使われるが、正確に言うと「ハリウッドより安い金で、それに近いものを作った」のであって、決してハリウッドを抜くようなシロモノではなかった。ストーリーもクサかったし。 実際「シュリ」は、アメリカでは全く客が入らなかった。今回の「ブラザーフッド」も「プライベート・ライアン」を参考にしたであろう戦闘シーンがふんだんに盛り込まれ、しかし別に「プライベート・ライアン」より迫力ある訳でなく、感動する訳でもない。結論から言うと、ハリウッド映画を抜いている訳ではない。日本ではイム・グォンテクやキム・キドクなど優れた韓国の映画作家が脚光を浴びることはなく、こういったブロックバスター作品にばかり注目が行くのはいかがなものか。 日本の映画は撮影所システムが崩壊し、スターがテレビに進出した結果、いわゆるスター・システムはなくなった。かつて銀幕でしか会えなかった映画スターはお茶の間で気軽に見ることができ、スターのオーラはなくなってしまったのだ。木村拓哉がどんなに人気があっても、彼が映画に主演したからといって劇場が満員になる訳ではない。だってテレビの「SMAP×SMAP」で毎週彼を見られるから。 韓国では、そんな日本にはないスター・システムが存在する。ハリウッド・スターのような遠い存在ではなく、日本人と同じ顔をして親近感を覚える韓国の映画スター。日本の映画ファンは、日本映画で味わえない“映画スターに熱狂したい気持ち”を韓国映画スターで満たしているのかもしれない。 |
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