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追悼、マーロン・ブランド

ロゴ 第34回
追悼、マーロン・ブランド

7月1日、あのマーロン・ブランドが亡くなった。マーロン・ブランドがどんなにすごい俳優かというと、ロバート・デ・ニーロとダスティン・ホフマンとアル・パチーノを足してスキャンダルを濃縮させたような名優中の名優と言っても過言ではない。日本で言えば、三國連太郎と三船敏郎と勝新太郎(スキャンダルが多いという意味で)を足したようなもんだろう。役になりきる、いわゆる「メソッド演技」はその後の俳優達に大きな影響を与えた。

しかし晩年のブランドは必ずしも恵まれていなかった。出演作はデニーロと初共演した「スコア」や、1分くらいしか出てなかったのに東京国際映画祭で主演男優賞を受賞してヒンシュクを買った「白く乾いた季節」など数本に留まり、あとは私生活でのスキャンダルにまみれていった。息子のクリスチャンは妹の恋人を射殺して実刑になり、その妹は後に自殺。ブランド自身も結婚と離婚を繰り返した。

代表作となると、やはりコッポラが監督した「ゴッドファーザー」でのコルレオーネ役だろう。何ポンドも増量してコッポラに売り込んで役をゲットしながら、続編ではあっさり断るところもブランドらしい(2作目はロバート・デ・ニーロが演じた)。そう言えば、「波止場」でアカデミー主演男優賞を獲った時はニコニコして授賞式に出席しておきながら、「ゴッドファーザー」で2度目のオスカーの際はあっさり受賞を拒否。そんな何を考えているのかわからない怪物的なキャラクターもブランドの持ち味だった。ベルトリッチの「ラスト・タンゴ・イン・パリ」も忘れがたい。当時は「バターぬる?」が流行り言葉になったらしい(どういう意味かは映画を観て確認を)。

「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」といった、そうそうたる主演作での名演技も心に残るが、東洋人好きで知られるブランドは日本絡みの作品にも多数出演している。日本の京マチ子との共演で、沖縄の青年(!)を演じた「八月十五夜の茶屋」、日本女性と恋をする在日米軍兵を演じた「サヨナラ」、岡田英次と共演した「侵略」がある。どれも日本をステレオタイプに描き、今観ると変な映画だが、当時は大物俳優が日本でロケするというだけで大変な話題になったらしい。中でもブランドがメイクを施して日本人に扮した「八月十五夜の茶屋」は珍品中の珍品。ブランドの変な日本語も聞ける。さすがの「メソッド演技」を駆使しても、日本人にはなり切れなかったようだ。

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。