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ノロイ

ロゴ 第48回
ノロイ

「ノロイ」という映画を見た。失踪した怪奇実話作家の小林雅文が失踪直前に完成させていた同名のビデオ作品を元に、監督の白石晃士が追加取材して完成させたという触れ込みなのが本作である。

その設定からもわかるように、これは「ブレアウィッチ・プロジェクト」のようなフェイク・ドキュメンタリーである。実際、タレントの松本まりか、お笑いコンビのアンガールズらは、いずれも作中で引用されているビデオ映像やテレビ番組に本人自身として登場する。それらの映像も、お蔵入りになったものなどと説明されており、テレビ局名などの情報も秘されている。「かぐたば」という謎の言葉をを解く鍵となる古い資料などの小道具も非常にリアル。そのため、実話なのかフィクションなのかちょっと見では判断がつきかねる部分が正に和製「ブレアウィッチ」である。

実際、作品も実話として宣伝されており、宣伝やパブリシティーの扱い方も「ブレアウィッチ」と酷似している。小林雅文のホームページ、小林がビデオを制作した杉書房(劇中にも登場する)という出版社のホームページも存在し、それらを見ると本当に実際の話ではないかと思ってしまうが、ホームページに掲載されている住所を調べると私書箱だった。まったく手の込んだ映画である。

リバイバル公開された「砂の器」は別の意味で手が込んでいた。「羅生門」「七人の侍」の橋本忍のシナリオ、巨匠野村芳太郎の演出、そして出演者(特に加藤嘉!)、すべてが一部の隙もない。この間放映されたテレビ版とは天と地と、ジャイアント馬場と猫ひろしほどの開きがあるでき映えだった。サスペンス映画では、この作品と「天国と地獄」は世界の映画史でも特別な位置を得ているが、ちなみに「天国と地獄」がベネチア映画祭で上映された当時は、あまりに緻密な捜査をする日本の警察に対して、現実味がないと一蹴されたらしい。当時の日本の警察レベルは国際的に低い評価だったのだ。

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。