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製作費200億円を投入したケッ作「キングコング」

ロゴ 第52回
製作費200億円を投入したケッ作「キングコング」

「キングコング」は久々に大金を投じて作った大駄作だった。

もうCGの乱用は辟易である。特に撮影隊と恐竜のチェイス・シーンなんか、ひどい体たらくですな。あんなシーンを見て観客は、「このシーンどうやって撮ったんだろう、すごく良くできてるねえ」なんて思うと思ったのだろうか。監督は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソンで、特殊効果も「ロード~」のスタッフが参加している。ファンタジーばっか撮ってるから、本来の特殊効果の使い方もえげつなくなってしまったのか。

そう言えば、私が生まれて初めて観た映画は、実は「キングコング」である。もちろん1933年のオリジナル版ではない。1976年のリメイク版なのだが、当時3歳だったにもかかわらず、何か大きなゴリラが暴れていたのを記憶している。当時としてはすごく良くできていたんだろう。後になって見直した時も、特殊効果のでき栄えは素晴らしかった。1970年代後半から1980年初頭は、ルーカスやスピルバーグが台頭してきた時代で、視覚効果を駆使した映画が次々と登場した。「スターウォーズ」「未知との遭遇」など、「キングコング」や「スターウォーズ・エピソードⅢ」なんかよりもずっといいと思うのだが。

スピルバーグがなんですごいのか。それは、彼の映画で特撮が邪魔だと思ったことがないからである。ファンタジーでもアクションでも戦争映画でも、そこにSFXが見事に融合していた。「宇宙戦争」では、冒頭、トム・クルーズが異星人からの攻撃から逃げるシーンをCG処理でワンカットに見せていた。ワンカットで見せるだけでどれだけ臨場感があったことか。

ピーター・ジャクソンは、2年前に「ロード・オブ・ザ・リング」でアカデミー賞をもらって一流監督になったが、スピルバーグが「ジュラシック・パーク」で見事に恐竜を描いたように、本多猪四郎が見事に「ゴジラ」を描いたように、「キングコング」で見事にゴリラは描けなかった。それが感想です。


前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。