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「ポセイドン」と「日本沈没」

ロゴ 第56回
「ポセイドン」と「日本沈没」

長らくソフト化されていなかった東宝の特撮映画「緯度0大作戦」がDVD化された。共同製作したアメリカ側のプロダクションが倒産したため、フィルムが抵当に入ったためソフト化できないというのが一般的に知られていた理由だったが、実際の理由は違った。製作調印の際の契約書に2次使用(ビデオやDVDの版権)の条項が含まれていなかったため、東宝側による確認に時間が掛かったのが真相らしい。わかってしまえばたあいのない理由だった。

見られない作品を見たくなるのは映画ファンの常で、いざ作品が見られるようになると興味は失せる。実際勇んでDVDを購入してみたが、内容的にはそれほど価値ある作品とは言えなかった。見どころと言えば、宝田明の流暢な英語や、「第三の男」の名優ジョセフ・コットンの演技くらいで、円谷英二の特撮も質としては中の下くらいのレベルだった。

日本とアメリカでは、昔の大ヒット・ディサスター・ムービー(災害映画)である「ポセイドン・アドベンチャー」(邦題:ポセイドン)と「日本沈没」がリメイクされるそうだ。こういったパニック映画に欠かせないのが、名優達が大挙出演する演技合戦である。「タワーリング・インフェルノ」では、ポール・ニューマン、スティーブ・マックイーン、ウィリアム・ホールデンなど主役スターに加え、あのフレッド・アステアが詐欺師役、「将軍」のリチャード・チェンバレンがホテル・オーナーのドラ息子に扮するなど、大物俳優達がごっそり出演しているのも楽しみのひとつだった。

オリジナルの「ポセイドン・アドベンチャー」でも、主演のジーン・ハックマンのほか、オスカー俳優のアーネスト・ボーグナイン、シェリー・ウィンタース、レッド・バトンズ、「裸の銃を持つ男」シリーズのレスリー・ニールセンがシリアスな船長役で出ている。くさいヒューマニズムに陥りやすいこの手の作品では、こういった芸達者の演技はかなり重要だからだろう。「大空港」シリーズや「大地震」のジョージ・ケネディもディサスター・ムービーの常連だ。「タワーリング・インフェルノ」では、彼が出ていないから消火が遅れたんだと言う映画ファンも多いらしい。

さて、新作の「ポセイドン」のキャストをチェックすると、カート・ラッセルやリチャード・ドレイファスくらいしか知らない。「日本沈没」にしても、オリジナルでは小林桂樹が演じていた同じ役をトヨエツがやっていたりする。

わかっていないんだなぁ。今時、どんなすごいCG映像を見せられても、ビックリする時代じゃないんだから、キャスティングは一番の肝だと思うのだが。ラッセルやドレイファスじゃ、B級映画のキャスティングですよ。「日本沈没」だって、ジャニーズやトレンディー俳優を出すくらいなら、役所広司や仲代達矢、三国連太郎、緒形拳辺りを出さないと締まらないでしょう。日本のジョージ・ケネディである丹波哲郎をキャスティングしなかった「日本沈没」の監督も、全くわかってねえよなぁ、と毒づきたくなりました。

ちなみに「ポセイドン」は2週間の興行収入が3,700万ドル。明らかに期待外れである

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。