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シアトル国際映画祭 僕のおすすめ

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シアトル国際映画祭 僕のおすすめ

荒ぶる魂たち
「荒ぶる魂たち」
© 2002 大映

監督
三池崇史

出演
加藤雅也
竹中直人
松方弘樹

公式ウェブサイト
www.daiei.tokuma.com/
ARABURU/

今年も5月23日より恒例のシアトル国際映画祭が開催される。なかでも「荒ぶる魂たち」と「カタクリ家の幸福」はおすすめでっせ。監督は今をときめく三池崇史。「DEAD OR ALIVE」、「オーディション」、「漂流街」に続いて、今回で5本目のシアトル出品となる。なにせ三池崇史といえば、『TIME』誌による「今後活躍が最も期待されている非ハリウッド系監督10人」の1人に、アジア人としてジョン・ウー、アン・リーとともに選出され、ハリウッドからもラブコールを受けている日本映画界期待の俊英だ。

今までは、肉裂き骨砕くバイオレンスを嫌というほど描き、えげつなさでも世界的。そのあまりの暴力描写で、三池監督の作品群はアメリカでも一般公開が躊躇されたほどである。しかし、彼の映画は今回上映されるミュージカル・コメディー「カタクリ家の幸福」をはじめ、人間ドラマ「中国の鳥人」、ホラー「オーディション」、エロチック・ドラマ「ビジターQ」など、守備範囲が広い。

「荒ぶる魂たち」は彼の得意分野のアクションだが、今までの作品とは毛色の違う作品になっている。今回は照明を抑え、自然光を中心にした画面で徹底的にドキュメンタリー・タッチを意識した作りになっている。それ故、今まではやたらバイオレントな登場人物に感情移入できなかった人も、今回はリアリティーあるアウトロー達の息使いを感じることができるだろう。主演はハリウッドで活躍する加藤雅也。「GODZILLA」では「アルマゲドン」の松田聖子並の出演で国民の同情を誘った彼も、今回は「聖子と一緒にするな!」という彼のメッセージがスクリーンから伝わってくるほどの素晴らしい演技を見せてくれて、感動を誘う(なんのこっちゃ)。というわけで、星3つ。

そのほかの公開映画について言えば、現代若者のカリスマ、岩井俊二の新作「リリィ・シュシュのすべて」はとっても暗ーい映画。彼はどうしてこんな映画を撮るんだろうね。「スワロウテイル」当たりからおかしくなっちゃた。嫌な話なのに画面の美しさで、つい見てしまった。なんか「借りてきたAVに自分の彼女が出ていて、最後まで見てしまった」、そんな気分だ。リアルと見せかけたうその話。そんな岩井俊二の自己満足を押し付けられたようで不快に感じた。「Love Letter」のみずみずしさはいずこに……。岩井監督は人間不信にでもなっちゃたのかな? それとも中学時代にトラウマでもあるのだろうか? 人間の心情に土足で上がりこんでくるような、そんな映画だ。しかし、観るべきところはあるので観てほしい。ただ、僕の好みではないだけ。

北村龍平「ヴァーサス」はタランティーノとジョン・ウーとバイオハザードと、そのほか香港映画をごっちゃ混ぜにした映画。主役が新庄に似てるから1点、ヒロインの姉ちゃんが可愛くないから減点1点、差し引きゼロ、といったところかな? いずれにしても、世界が認める日本の才能に触れるいい機会。ぜひ、シアトル国際映画祭で上映される日本映画を観てみよう。

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。