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Manderlay

第118回 「Manderlay」
監督:ラース・フォン・トリアー
出演:ブライス・ダラス・ハワード、ダニー・グローバー、イザー
ク・ド・バンコレ、ほか
ウェブサイト:www.manderlaythefilm.com

 
Hostel
©IFC Films

今回から映画レビューを書くことになりました、ミトウです。まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします。

初回に選んだのは、ラース・フォン・トリアー監督による「アメリカ3部作」の第2作。主役であるグレースは、前作「Dogville」のニコール・キッドマンが降板したため、ブライス・ダラス・ハワードへ交替。ブライスの父親は、「Apollo 13」や「Cinderella Man」で知られるロン・ハワード監督です。

「Dogville」から逃げ出したグレースは、父の部下であるギャング達を引き連れ、通り掛かった「Manderlay」農場の、良くも悪くも長らえてきた伝統、黒人解放後70年も続いている黒人差別制度をぶち壊しに掛かります。黒人達に民主主義を会得させるという使命感に燃えるグレースは、自分の理想だけを追求し、民情を冷静に見ようとはしません。その後、ギャング達が農場を離れることによって大きな転機が訪れるのですが、果たしてグレースはどうなるのか。そして、またしても
衝撃のラストが待っています。

白線で区切られた舞台のようなセットや、撮影技法など、ビジュアルは前作を踏襲しています。この特異な雰囲気は前作がそうだったように、はっきり好みが分かれると思います。個人的には、前作「Dogville」を見ていないと今作の細部をつかめないというのが少し残念でした。しかし、なんとも皮肉なのは、この映画を制作したのが、アメリカへ行ったことのないトリアー監督だということ。理想主義や黒人差別といったテーマを第三者的な視点から見ているためなのか、冷酷で、容赦のない描き方をしている感じがしました。トリアー監督お得意の、救いようのないラストも健在です。

主役交替についても賛否両論あるようですが、今作ではグレースの単純さ、幼さに重点が置かれているようで、それを考えると、ニコール・キッドマンでは少し違うかな、という気がします。「Dogivlle」では逃亡者、「Manderlay」では統治者と、ころころ役柄の変わっていくグレースですが、次回作「Washington」でも主役は交替するようで、どんな女優がどんなグレースを演じることになるか、楽しみにしています。

余談になりますが、僕がこの映画を見に行った時、200人は入るであろうシアターに、観客はなんと僕ひとりだけでした。居心地が良いのやら悪いのやら、微妙な気持ちで見た映画でした。

ミトウ:
札幌生まれ、札幌育ち。高校卒業後、渡米。現在はショアライン・コミュニティー・カレッジで4年制大学への編入を目指して勉強中。好きな映画は「Down By Law」「Crash」「博士の異常な愛情」「リアリズムの宿」「tokyo.sora」「秋刀魚之味」など。