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1962年の「007 / ドクター・ノオ」公開以来、スパイ映画のスタンダードとして親しまれてきた007シリーズに大きな転機がやってきました。「007 / カジノ・ロワイヤル」は、原作者のイアン・フレミングが1953年に007シリーズの第1作として出版した小説を、現代風にアレンジした作品になっています。1967年に一度映画化されているものの、1967年公開版は版権の関係もあり、原作からはかけ離れたパロディー映画になっています。そのため、正式な映画化は今回が初めて。監督には、シリ-ズ第17作「007 / ゴールデン・アイ」で監督を務めたマーティン・キャンベル。共同執筆の脚本には、アカデミー賞受賞作「クラッシュ」で監督・脚本を担当したポール・ハギスも参加し、007シリーズの記念すべき“第1作”に対する意気込みがうかがえます。 ストーリーは、「00(ダブル・オー)」と呼ばれる、殺しのライセンスを取得したばかりのジェームズ・ボンドが、テロ組織とのつながりを持つ工作員の資金源を断つため、東奔西走するというもの。次々に展開していく人間ドラマは1分たりとも目を離せませんが、特に、後のボンドに大きな影響を与えることになるボンド・ガールとの関係には注目です。今作は派手なアクション・シーンも抑えめで、ボンド・カーのカー・チェイスもなし、スパイ道具担当の「Q」や秘書「マネーペニー」の登場もなしと、007シリーズでも異色の内容となっています。 そして、目玉は何と言ってもジェームズ・ボンド役の交代です。6代目ボンドは、スピルバーグ監督作品の「ミュンヘン」などで高い評価を得た、個性派俳優のダニエル・ クレイグが射止めました。今作で描かれるボンドは、タフでセクシーそして洗練された英国紳士というこれまでのボンド像を覆し、冷淡で恐れ知らずである一方、任務への迷いと純粋さを併せ持ち、若さを感じさせるキャラクターですが、クレイグは見事にその役を演じています。 熱烈な007ファンによるクレイグ版ボンドのボイコット運動や、ボンド以外のキャストが決まらないままのクランクインなど制作上の苦難は多かったものの、公開後の評価は高く、初代ボンドのショーン・コネリー版に匹敵するとの声も上がっています。確かに、今まで描かれることの少なかったボンドの内面を重視したストーリーは魅力的です。単なるアクション映画になりつつあった、007シリーズの良いターニング・ポイントになったと思います。007シリーズの新たな一面を発見できる「カジノ ・ロワイヤル」、文句なしのオススメ作品です。 |
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