シティバンク・グループの前CEOであるサンフォード・ワイルは「アメリカン・ドリームというのは、粘り強く働き、同時にいくらか才能があれば何でも起こり得るということを表している」と述べたそうです。才能がありながら学歴も稼ぎもなく、妻とも別れ、ただひとりの息子とどん底の生活をおくる男が、有名企業でのインターンシップのポジションを得たのを機に人生の困難に立ち向かっていくという、ワイルの言葉をそのままなぞったようなストーリーを持つ映画が本作「The Pursuit of Happyness」です。
主人公クリス・ガードナーを演じるのは「メン・イン・ブラック」シリーズなどのコメディーを中心に活躍するウィル・スミス。上品な知性と困難に決してめげないタフさを備えた役どころを好演しています。そして、クリスの息子であるクリストファー役にはウィル・スミスの実の息子であるジェイデン・クリストファー・サイア・スミスが俳優としてのデビューを飾っています。実際の親子ということもあるのか、ふたりの演技はとても自然で、息子を思う父の愛情や、父を気に掛ける息子の思いがよく伝わってきました。特にジェイデンはこれが俳優デビュー作とは思えないほどの演技力で驚きました。
アメリカ史上最大の集団訴訟にかかわった実在のシングル・マザーを描いた「エリン・ブロコビッチ」の男性版とも言える本作ですが、実はこちらも、今や証券会社を経営する億万長者であるクリス・ガードナーの実話に基づいて制作されています。ストーリーに意外な展開や結末などはありませんが、元が実話なだけにひとつひとつのエピソードには生の危機感や生活感があふれていました。また、若干唐突な形ではありますが1カットだけクリス・ガードナー本人が登場する場面もあり、最後もきれいにまとめてエンド・クレジットとなります。決して大ヒットするタイプの映画ではありませんが、困難に陥っても諦めない精神力や親子関係といったテーマをうまく消化した良作であることは間違いありません。寒い冬の日に、心がちょっと温かくなる映画です。
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