| | ©Magnolia Pictures |
インディーズ映画の魂、ここにあり。本作は98年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した「ヘンリー・フール」の10年後を描いたアクション・スリラーです。スタイリッシュな映像、ナイーブで不器用なのに時々驚くほど理屈っぽいキャラクター達は、ハリウッド映画にはない要素と言えるでしょう。始まりはニューヨーク、クイーンズ地区。フェイ(パーカー・ポージー)は14歳になる息子が、前作のラストで行方をくらましたヘンリーに似てきたことに気をもむ毎日。そんな中、CIAエージェントがフェイの元を訪れ、ヘンリーがすでに亡くなったこと、そして彼が残した数冊のノートに書かれている内容が国際テロにつながる可能性があることを告げる。フェイは作家で服役中の弟サイモン(ジェームズ・アーバニアク)の釈放を条件に、ノートを回収しに行くことを承諾し、パリへと飛ぶ……。 ニューヨーク、パリ、イスタンブールと3つの舞台が登場しますが、全編を通しての統一感は見事。監督、脚本、プロデュース、音楽、編集までも担当したハートリー監督のなせる技と言えます。「前作を見ていなくても混乱はない」という評判通り、台詞から登場人物の関係も簡単に把握できました。 本作のもうひとつの特徴は、全シーンがダッチアングルで撮影されていること。ホラー映画などで不安をあおるための斜めに傾いたアングルのことですが、脚本の巧みさもあってか、時間が経つにつれて最初の違和感が気にならなくなりました。ただ、台詞が長過ぎるために話の核心がボケてしまっているのは残念でした。 主人公フェイを演じるポージーは、90年代に“インディーズ映画クイーン”とまで形容された女優。きかん気な一面と不安定なキュートさが同居していて、今年で39歳とは思えないくらいの若々しさです。周りを固める役者達も、この映画のオフビート感にはなくてはならない雰囲気をうまく創り上げています。 アクションはほとんどなく、スパイ映画に付きものの手に汗握る展開もありません。しかし、キャラクター達の生々しい感情や行動の連続に、いつしか自分もストーリーの中に入り込んでしまったような不思議な感覚を味わえる、希有な映画だと思います。 |
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