第14回 「Cold Mountain」 | |||
チャールズ・フレイジャーの処女作、そして1997年の全米図書賞受賞作品でもある『コールドマウンテン』が原作。アカデミー賞の前哨戦とされるゴールデングローブ賞で、作品賞、監督賞など最多8部門でノミネートされており、1月25日には授賞式が開催される。 舞台は、アメリカ南北戦争期のノースキャロライナ。小さなコールドマウンテン村にも、否応なしに戦争の波が押し寄せていた。村の青年インマン(ジュード・ロウ)は出兵の当日、都会育ちで本とピアノが好きな牧師の娘エイダ(ニコール・キッドマン)とお互いの気持ちを確かめ合うが、そのまま戦場へと旅立って行かなければならなかった。残されたエイダは、その後たったひとりの肉親であった愛する父を突然失い途方に暮れる。インマンの帰りをひたすら待ちながら、父親の死後も村に留まり、農場を守っていく決心をするが、お嬢様育ちのエイダには慣れないことだらけ。家は荒れ、明日の食べ物にも困る状態になってしまった。そこに男勝りのルビー(レニー・ゼルウィガー)が、住み込みでエイダを手伝うためにやってくる。鶏を手で絞めることなど朝飯前のルビーに、最初は戸惑うエイダだが、やがてふたりは家族のように力を合わせて暮らすようになる。そのころ、戦地で重傷を負ったインマンは、愛するエイダへの想いから南軍を脱走。遠い故郷コールドマウンテンを目指して、長く苦しい旅を始める……。 何人もの大物俳優が素晴らしい演技を見せ、戦争を背景にしたこのラブストーリーを一層深いものにしている。イギリス出身のジュード・ロウは戦争後の傷ついた兵士を圧倒的な演技力で表現し、戦争前の演技からは別人かと見違えるほどだ。助演女優賞にノミネートされ、メディアからも非常に高い評価を得ているルビー役のレニー・ゼルウィガーは、南部のしっかり娘をコミカルに熱演している。彼女の今までの作品のイメージからは、全く違う役どころにチャレンジしているわけだが、個人的には何をしてもどの作品でも“レニー・ゼルウィガー”といった感がぬぐえない(あの独特の声のせいだとは思うが……)。ニコール・キッドマンは、この作品の出演者の中でひとり金髪であり、黒い帽子、紳士服のような黒いコートに太いベルト。戦時中という設定であるのに、まるで雑誌の1ページを飾っているように艶やかであった。 戦争下において、もう2度と会えないかもしれないという果てしない不安と、それでも会えることを信じて毎日を過ごしているふたりの切なさ、遠く離れた場所にいながらも、お互いを想う強い気持ちがひしひしと伝わってくる。戦争映画を観て毎回のように思うことだが、戦争によって悲惨な結果しか生まれないことを今までの歴史から学んできてるはずなのに、なぜ人間は戦争を繰り返すのだろうか……。 | |||
石渕裕子 群馬県生まれ。2002年までインターネットの会社(川崎)で勤務。結婚を機に渡米し、シアトルへ。小学校勤務を経た後、現在はコンピュータ会社にて勤務中。 |
Cold Mountain
- 12/07/2020
- とれたて!映画レビュー
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