ニューヨーク州バッファローを拠点に活動するポーランド系マフィアの殺し屋フランク(ベン・キングズリー)はアルコール中毒のために任務を寝過ごし、図らずもファミリーの危機を招いてしまいます。叔父の命令でサンフランシスコへと移り、アルコール中毒を克服するためのセミナーに参加することになったものの、フランクに更正するつもりはなく、相変わらず酒を飲み続ける日々。そんな中、身分を隠すために働いていた葬儀屋で、ローレル(ティア・レオーニ)に出会い、フランクは恋に落ちてしまいます。アルコール中毒の更正もうまく行き始めたその頃、バッファローでは仇敵のアイルランド系マフィアがファミリーを脅かし始め、ついにファミリーは全滅の危機に。フランクは復讐のため単身バッファローへと戻りますが……。 全編を通して、爆笑するというより思わず忍び笑いを漏らしてしまうような、そんな映画です。何と言っても、フランク役のベン・キングズリーの演技が秀逸で、沈着冷静な殺し屋の一面と、時折見せるちゃめっ気たっぷりの表情のギャップが見事でした。人殺しを仕事にする自分が嫌いで仕方ない、というフランクの序盤の心情と、ローレルに出会ってから徐々に自分のことを肯定できるようになっていくプロセスも分かりやすく描かれており、すんなり理解できるストーリー・ラインには好感が持てました。 見せ場は何と言っても「Hi, I’m Frank and I’m an alcoholic.」で始まる、フランクがアルコール中毒者のセミナーでまったく場違いのスピーチをするシーン。フランクもセミナー参加者も大真面目に話を進めるので、このときばかりは映画館のお客さんたちも大爆笑。「暗い」「お堅い」という、セミナーのネガティブなイメージをうまく逆手に取った場面でした。 アルコール中毒の殺し屋が主人公という、何とも不思議な組み合わせが光る本作「You Kill Me」。低予算映画らしい地味さは避けられなかったものの、ひねりの効いたストーリーと個性豊かなキャラクターが上手く噛み合って、良作のブラック・コメディに仕上がっています。お客さんの平均年齢は高めでしたが、ご夫婦で、カップルで楽しめる作品だと思います。 |
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