時は1988年。ドラッグ・ビジネスのはびこるニューヨーク、ブルックリン。ボビー(ホアキン・フェニックス)は父と弟がニューヨーク市警の刑事であることを隠しながら、ロシア人の経営するナイト・クラブのマネジャーを務めていた。ところがある日、弟ジョセフ(マーク・ウォールバーグ)がナイト・クラブのオーナー達に対する捜査を始めたことで、家族3人に危険が降り掛かる……。 監督は1994年に「リトル・オデッサ」でベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞した、ジェームズ・グレイ。メイン・キャストにはホアキン・フェニックスとマーク・ウォールバーグが、グレイ監督の前作「裏切り者」に引き続き共演。それに「ゴッドファーザー」などで知られる大ベテラン、ロバート・デュバルと、エヴァ・メンデスが脇を固めています。 骨太なストーリーと、丁寧に描かれたキャラクターがうまく噛み合って、珠玉のクライム・サスペンス映画に仕上がった今作。何と言っても主役を演じるホアキン・フェニックスの演技が圧巻で、撮影現場ではロバート・デュバルにわざと罵声を浴びせ、それによって生まれる緊張感を演技に生かすなど、彼のこの作品に対する意気込みが伝わってきます。 また、製作費が安くつき環境も似ているトロントではなく、ストーリーの実際の舞台であるニューヨークでのロケにこだわったグレイ監督の、ダークで冷たい映像表現も素晴らしいです。ボビーがぼろアパートのドラッグ工房へ入っていくシーンでの廊下の使い方、また雨の中でのカー・チェイス・シーンにはぜひ注目して欲しいと思います。 あえて難を言わせてもらうとすれば、終盤にボビーが警官として採用されるプロットと、エヴァ・メンデス演じるアマンダがストーリーに不可欠ではない点が引っ掛かりましたが、家族愛がこの映画のテーマのひとつであることを考えると妥当なのかもしれません。それにしても、極限状態の中でキャラクターが弱い面をどんどんさらけ出す作品というのも、最近では珍しいのではないかと思います。 ギャング、ドラッグ、警官、家族、ニューヨークをキーワードにした映画は「ゴッドファーザー」シリーズがやはり筆頭で、それを超える映画はまだ出ていないと言っても過言ではありませんが、今作は十分パワフルで、じっくり鑑賞できる秀逸な1本であることに間違いありません。 |
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