今年1月に、薬の過剰摂取のため28歳の若さで急逝した俳優、ヒース・レジャーが、生前に演じ切った最後の作品と聞き、これは見ておかなきゃ、という気分にさせられた「バットマン」シリーズの最新作、「ダークナイト」。彼が亡くなった当時、テレビのハリウッド・ニュースで何度も目にした、この映画の役柄ジョーカーの、奇妙なメイクを施した彼の写真。それはかなりインパクトがあり、目に焼き付くものでしたが、その時の心のひっかかりはまさしく本物! バットマン役のクリスチャン・ベールも、バットマンとしての苦悩をうまく表現していたと思いますが、この映画はやはりヒースのジョーカーのための「バットマン」だと思わずにいられません。 2005年公開の「バットマン・ビギンズ」の続編、「バットマン」シリーズとしては6作目となる本作。犯罪と暴力が蔓延する架空の都市ゴッサムシティーで、犯罪撲滅のために力を貸すバットマン=ブルース・ウェイン。その成果は上々でしたが、ジョーカーを筆頭にした犯罪一味が現れ、ゴッサムシティーはさらに危険な状態に陥ります。ジム・ゴードン警部補(ゲーリー・オールドマン)やハーベイ・デント検事(アーロン・エッカート)らの協力のもと、バットマンは、この最強の敵に立ち向かうのですが……。 物語の舞台は、架空の世界というよりも、現代のごくありふれた私達の日常。バットマンのハイテク・マシン以外は特に派手な仕掛けもなく、淡々としたトーンです。しかしそれがかえってジョーカーの異様さを引き立たせています。その演技の緊密さも相まり、スクリーンにジョーカーが登場する度に緊迫感が漂い(と言いつつ、たまに笑わせてくれたりもするのですが)、その一挙一動に目が離せなくなること請け合いです。 「バットマン」におけるジョーカーというキャラクターは、原作のコミックでは欠かせない存在ですが、映画版に登場するのは1989年公開の初回版に続き今回が2回目。前作ではジャック・ニコルソンが怪演し話題をさらったこともあり、ヒースがこの役に掛けた情熱は、かなりのものだったとか。その演技力の高さは各方面で絶賛され、故人がアカデミー賞を受賞するという快挙を成し遂げるのでは、という噂が持ち上がるほど。逸材がこの世を去ったことが、悔やまれてなりません。 |
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