第158回 The International インターポールの捜査官サリンジャー(クライヴ・オーウェン)とニューヨークの地方検事ウィットマン(ナオミ・ワッツ)は、世界的な大銀行IBBCの行ってきた数々の違法行為を暴くべく捜査を行っていた。マネー・ローンダリング、武器のブローカー業務、暗殺など次々に明らかになっていくIBBCの実体に近づくと、ふたりの身にも危険が降り掛かる。それでもかたくなに捜査を続けるふたりの思いとは……。 監督には「ラン・ローラ・ラン」、「パフューム ある人殺しの物語」のトム・ティクヴァ。2004年に「クローサー」でゴールデン・グローブ賞助演男優賞を受賞したクライヴ・オーウェンと、「21グラム」など数々の映画に出演しているナオミ・ワッツが主役を演じています。また、物語の後半でキーを握るIBBCの役員として登場するアーミン・ミューラー=スタールも印象的でした。 2008年8月公開予定だった本作は、先行試写会での評判が悪かったため、大幅に撮り直したという、いわく付きの1本。結果として、アクション要素と濃いストーリー構成とがバランス良くまとまったものの、それでも何かちょっと物足りない作品になってしまいました。ちなみにIBBCのモデルは、80年代後半にイスラム諸国の大量破壊兵器開発の資金源となったパキスタン系銀行のBCCIとのことです。 悪の大企業に立ち向かう正義の味方、という流れで進むストーリーですが、これは単なる前振り。がむしゃらに捜査を続けるサリンジャーとその活躍に手を焼くIBBCの役員達、という対比が最後まで続くのかと思いきや、その構図は少しずつずれていき、スタッフ・ロールまで含めた最後の20分は、非常に後味の悪い構成になっています。リアリティーを追求するという意味では、そういう表現もありかと思いますが、登場人物の多さと説明の少なさも相まって、エンディングは大部分の観客が置いてけぼり、という印象でした。 キャストでは、オーウェンが鬼気迫る演技を見せていました。特にストーリー後半、一連のアクション・シーンが終わった後に、とある人物を取り調べるシーンでの抑えた怒りと絶望の表情は、素晴らしいのひと言に尽きます。ワッツは主役扱いながらも、オーウェンの引き立て役程度におさまっていたのが残念です。 |
コメントを書く