第159回 Watchmen 映画化構想から実に23年、20世紀フォックス、ユニバーサル、パラマウント、ワーナーと製作元を転々とし、今月ようやく封切りとなったのが、同名コミックを原作とした「Watchmen」です。「スパイダーマン」を始めとするアメコミでも、特に評価の高い作品の映画化ということで、公開前から大きな話題となっていました。 時は米ソ間の全面核戦争の緊張が最高潮に達していた1985年10月。1977年にヒーロー活動を非合法とするキーン条約が制定されて以来、ヒーロー達は引退を余儀なくされ、その多くは世間の目を避けながら、日々暮らしていた。そんな中、ひとりの元ヒーロー・コメディアンが殺害される。非合法に活動を続けていたロール・シャッハ(ジャッキー・アール・へイリー)は、それがヒーロー狩りの始まりだと悟り、引退したヒーロー達に警告を発して回るのだが……。 あらすじだけでもこのコラムの字数では足りないくらい。この後ストーリーは、回想シーンをいくつも挟んで展開していき、最後にはなんとも後味の悪い結末が待っています。2時間42分にもなる本編、有名俳優なしのキャスティング、R指定と、配給元のワーナーとしても避けたいであろう要素がてんこ盛りの作品ですが、そこは伝説的コミックが原作ということもあってか、3月第2週の時点で北米興行成績は6,500万ドルという数字を叩き出しています。 監督は「300」のザック・スナイダー。個人的には全然期待していなかったのですが、「なんだ、ちゃんとストーリー性のある作品も作れるんじゃない」というのが率直な感想です。ボブ・ディランやサイモン&ガーファンクルの曲をBGMに使用するなど、原作通りの演出もあります。また、アメリカ政府の首脳陣が会談する会場は「博士の異常な愛情」のセットをそのまままねるなど、映画ファンがにんまりしそうなシーンまでしっかり作り込まれていたのが印象的でした。ちなみに、劇場公開版とは別に、カットしたシーンをすべて追加し直したバージョンも、後日DVDでリリースされるそうで、こちらは3時間半ほどの長さになるのだとか。 引退したヒーローの生き様や彼らの抱える不安、絶望が描かれるなど、いわゆる一般的な「ヒーローもの」とは一線を画したストーリーには引きつけられるものがありました。 |
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