第161回 Star Trek アメリカでは「Star Wars」と並んで語られることの多い「Star Trek」の新作が、ついに公開されました。公開前から大きな話題を呼んでいた本作ですが、5月17日の段階で国内興行収入が1億5,000万ドル近くに迫る大ヒット作品となりました。「Batman Begins」や「Casino Royale」など、シリーズ映画が次々と硬派な路線に変更していく中、本作は従来のTVシリーズから存在していた楽観的な部分を捨てず、その結果、万人向けの極上エンターテインメント作品ができ上がったと言っても過言ではないでしょう。 ストーリーは66~69年まで放映された「Star Trek」の第1シーズンの主要キャラクター達の出会いを描いたもの。幼い頃に宇宙艦隊士官だった父を亡くしたジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)は、毎日けんかに明け暮れる日々を送っていた。あるきっかけから宇宙艦隊アカデミーに進学するが、破天荒な性格のカークのことを快く思わない指揮官スポック(ザカリー・クイント)との対立は深まるばかり……。 個性派ぞろいのキャストの中でも、機関主任スコットを演じたサイモン・ペグの存在感は唯一無二でした。「Shaun of the Dead」や「Hot Fuzz」でブラック・コメディー俳優としての地位を確立した彼ですが、今回も皮肉をたっぷり利かせたジョークが端々に出てきて、なかなか楽しませてくれました。また、ファン・サービスとしては、TV版でスポックを演じたレナード・ニモイが老年のスポックとして登場します。 監督には「Alias」や「Lost」といった人気ドラマ・シリーズを制作し、勢いに乗っているJ・J・エイブラムス。彼は生粋の「Star Trek」ファンではなく、今作は自身のそういった面を念頭に置き、新しい観客層の開拓を視野に入れての製作だったそうです。実際、僕もファンではないのですが、秀逸なキャラクターの描き分けと、くど過ぎない説明のおかげで、すんなりとこのシリーズ独特の世界観を理解することができました。映像も文句の付けようがない高品質で、映画を見てこんなにわくわくしたのは久しぶりのことでした。「Star Trek」というだけでなく、SF映画というジャンル全体で見ても、歴史に残る作品になったと思います。 |
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