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The Informant!

■The Informant!
監督:スティーブン・ソダーバーグ 出演:マット・デイモン、スコット・バクラほか
公開:9月18日(金) レート:R 公式ウェブサイト:http://theinformantmovie.warnerbros.com

The Informant!

第165回 The Informant!
ハリウッド映画界にはトニー・スコット&デンゼル・ワシントン、ティム・バートン&ジョニー・デップといった具合に、コンビを組んで何作も成功作を生み出す例がありますが、今作でのスティーブン・ソダーバーグとマット・デイモンの組み合わせは、それを予感させるだけの力がありました。スティーブン・ソダーバーグにとって本作は、2000年に大ヒットを飛ばした「エリン・ブロコビッチ」に続いてノンフィクションをベースとした映画。90年代前半という時代背景も共通しているためか、映像の雰囲気もほぼ同じ。主人公を演じたマット・デイモンも、インタビューで自らが演じたマーク・ウィテカーを「エリン・ブロコビッチのいかれた弟」と称していたそうです。
ストーリーは登場人物が多い割に単純。生化学者の主人公ウィテカーが、リシンという食品化合物の価格操作にかかわっていく中でFBIの情報提供者となり、そのストレスのために追い詰められ、トンデモな行動を次々に起こしていく様子が細かく描写されていく、というもの。なんとなくコーエン兄弟の「Burn After Reading」を連想させるストーリー展開ですが、こちらは本編を通して特に起伏がなく、ちょっとだらだら感が漂うのが残念。膨大な量の実話を映画のために切り詰めたこともあってか、展開が若干不自然な部分もありました。ただ、ところどころで挿入されるウィテカーの独白が、それを補うくらい秀逸。皮肉に自虐、八つ当たりなど、どれも毒があるのにクスリと笑えるセリフが盛りだくさんでした。
この映画の見どころは、本作のため大幅に体重を増やして臨んだマット・デイモンの姿。どうしようもなく弱そうなおじさんをここまで好演できるとは、正直意外でした。本編中至るところで聞くことができる、とてもとてもダサいBGMとの相性もばっちり。さらにはマット・デイモンをきっちり役柄にはめ込んだスティーブン・ソダーバーグ監督の手腕。オーシャンズ・シリーズで一緒に仕事をしたことがあるとはいえ、見事な演出だったと思います。しかし、そんな楽しさがありながらも、この映画には「エリン・ブロコビッチ」ほどのインパクトはなく、平坦なストーリーと細か過ぎる笑いのせいで、観客を相当に選ぶ作品です。それでも、ブラック・コメディーといわれるジャンルの中では、全編通して破綻もなく、きっちりまとまっている良作と言えるでしょう。

10月公開の注目作品

Whip It
監督:ドリュー・バリモア
出演:エレン・ペイジ、ドリュー・バリモアほか
公開日:10月2日(金)
母親の趣味で嫌々ミス・コンに参加させられる日々を送っていたブリス(エレン・ペイジ)が、ローラー・ダービー・チームに参加することで輝く日々を手に入れるスポ根物語。女優ドリュー・バリモアの初監督作。

New York, I Love You
監督:ザック・ブラフ、岩井俊二ほか
出演:ナタリー・ポートマン、オーランド・ブルームほか
公開日:10月16日(金)
眠らない町ニューヨークで“Love”は常に人々の関心の元。これをテーマに、今最も注目を集めている映画監督達が、短編映画を制作。日本からは岩井俊二監督も参加しており、同作では、オーランド・ブルームが主役を務める。

Amelia
監督:ミーラー・ナーイル
出演:ヒラリー・スワンク、リチャード・ギアほか
公開日:10月23日(金)
女性として、大西洋を飛行機で初めて横断した女性パイロットのパイオニア、アメリア・イアハートの自伝的作品。1937年の世界一周飛行挑戦時に消息を絶つまでを、ヒラリー・スワンクが演じる。

伊藤 晶
札幌生まれ、札幌育ち。アメリカ生活5年目。07年9月からオレゴン大学でコミュニケーションを専攻中。好きな映画は「Down By Law」「Garden State」「リアリズムの宿」「好きだー」「サマータイムマシーン・ブルース」など