第166回 Where The Wild Things Are 『かいじゅうたちのいるところ』と言えば、ああ、と思う人はたくさんいるはず。1963年に出版されたこの絵本は、世界中で2,000万部、日本でも100万部のベストセラー作品です。 今回の映画化にあたっては、俳優のトム・ハンクスを始め、作者のモーリス・センダックもプロデューサーのひとりとしてかかわり、スパイク・ジョーンズにオファーを出したのもセンダック本人だったそうです。 度重なる公開日の変更と配給会社の変更があり、撮影から実に4年後の劇場公開となりました。スパイク・ジョーンズという人選が非常に疑問だったのですが、ふたを開けてみればこの選択は大成功。ミュージック・ビデオから始まり、「マルコビッチの穴」や「アダプテーション」、果てはMTVの「ジャッカス」シリーズなど、アクの強いコメディーを手掛けてきた彼ですが、今回はどこかアナクロな怪獣の島を見事に表現。公開された週末の北米映画興行収入ランキングでは、初登場1位を獲得したそうです。 ただ、この映画を絵本のターゲットである子供達にオススメできるかは難しいところ。実写にすることによって、絵本を読んでいる時のような想像で埋める楽しみがなくなりますし、94分という枠の中で語られるストーリーは、自分に合ったペースで進んでくれません。そういうわけで、個人的には絵本や小説を映画化することに少々懐疑的なのですが、今作もその例に漏れなかったという印象です。 映像は間違いなく美麗で、怪獣達を演じる俳優陣も非常に豪華、ストーリーも破綻なくまとまりはするのですが、絵本にあった深みを全く感じられなかったのは残念でした。ちなみに本作のレーティングはPGですが、怪獣達のダークなキャラクターや怒り、孤独といった要素へのアプローチの仕方が、子供達にはちょっと強過ぎるかなという気もします。 もうひとつ気になったのは、サウンドトラック。予告編にはモントリオールで結成したインディー・ロックバンド、Arcade Fireの「Wake Up」が使われ、サントラの作曲を担当したのは、同じくニューヨークで活動するインディー・ロックバンド、Yeah Yeah Yeahsのボーカル、カレン・ Oという、ハリウッド映画にはちょっと珍しい取り合わせ。インディー・ロック好きの自分にとっては垂涎モノですが、Arcade Fireの曲は、残念ながらサントラ未収録でした。
11月公開の注目作品
Michael Jackson’s This Is It 監督:ケニー・オルテガ 出演:マイケル・ジャクソンほか 公開日:10月28日(水) 今年の6月に急逝したマイケル・ジャクソンの、幻となったコンサートを劇場で体感。彼がコンサートにかけた情熱を、リハーサル映像と共に垣間見ることができる。世界同時2週間限定公開。
The Twilight Saga : New Moon 監督:クリス・ワイツ 出演:クリステン・スチュワート、ロバート・パティンソンほか 公開日:11月20日(金) エドワード(ロバート・パティンソン)と別れ、失意の日々を送るベラ(クリステン・スチュワート)。そこに幼なじみのジェイコブが現れるが……。吸血鬼と女子高生の禁断の恋を描いた人気作品の続編。
伊藤 晶 札幌生まれ、札幌育ち。アメリカ生活5年目。07年9月からオレゴン大学でコミュニケーションを専攻中。好きな映画は「Down By Law」「Garden State」「リアリズムの宿」「好きだー」「サマータイムマシーン・ブルース」など
コメントを書く