■Private Radio 監督: リチャード・カーティス 出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、ビル・ナイほか公開:11月13日(金) レート: R 公式ウェブサイト: www.pirateradiomovie.com
第167回 Private Radio インディ・ミュージック好きの自分にとって、音楽を前面に押し出した映画は何でも魅力的に見えてしまうという悪い傾向があり、「Garden State」「500 Days of Summer」「Juno」などは、ストーリー以上にサウンド・トラックに注目してしまうほど。そんな中、今作「Pirate Radio」も音楽好きの期待を裏切らず、60年代のロックが随所に散りばめられた素敵なブリティッシュ・コメディーでした。 2時間ほどの本編には、核となるストーリーがあるわけではなく、極端に言えば、ラジオ放送を行っている船で生活する8人のDJとスタッフの様子が面白おかしく描かれているだけ。それでも飽きることがないのは、脚本段階でそれぞれのキャラクターが見事に立っているのと、心の底から楽しんで演じているに違いない俳優陣のお陰。イギリスで活躍する喜劇俳優を多くキャスティングしたのが成功だったと思います。なじみ深い顔としては「Love Actually」や「Underworld」シリーズに出演したビル・ナイや、「Hot Fuzz」で主人公の相棒役を務めたニック・フロストなどがいます。「Doubt」でアカデミー助演男優賞にノミネートされたフィリップ・シーモア・ホフマンも不良DJとして良い味を出していました。カメラワークにも細かい気配りが利いていて、自分がその場にいるような錯覚を起こさせてくれる、一人称視点になっています。ブリティッシュ・ユーモアも炸裂という感じで、過激な言い回しもあちこちに。でも、どれもちょうど良い具合にキャラクターにフィットしているせいか、不自然さはまったくありません。 BGMには映画の時代設定をそのままに、60年代に人々を熱狂させたBeach Boys、Who、Kinks、Rolling Stones、Beatlesなどの名曲がずらり。本編中に使われた曲をメインに2枚組として発売されたサントラもなかなかのできです。映画の中では、ラジオから流れる曲に聴き惚れていたり、踊り狂ったりしているリスナーの様子が何度も出てくるのですが、思わず一緒に体を揺らしたくなるような雰囲気でした。そういえばラジオなんて最近はまったく聴くことがなくなってしまいましたが、中学生のころに夜更かししながら聴いた番組が、今思うとちょっと懐かしく感じます。音楽好きには文句なくオススメできる1本です。
12月公開の注目作品
Nine 監督:ロブ・マーシャルズ 出演:ダニエル・デイ=ルイス、マリオン・コティヤールほか 公開日:12月25日(金) スランプ中の映画監督、グイド(ダニエル・デイ=ルイス)と、それを取り巻く女性達の物語。トニー賞受賞のミュージカルを、「シカゴ」の監督が映画化、豪華な女優陣が出演することでも話題を集めている。
Did You Hear About the Morgans? 監督:マーク・D・ローレンス 出演:サラ・ジェシカ・パーカー、ヒュー・グラントほか 公開日:12月18日(金) ニューヨークで暮らすポール(ヒュー・グラント)とメリル(サラ・ジェシカ・パーカー)の結婚生活は今にも破綻しそうだったが、ある日殺人を目撃したことにより事態は急転。証人保護制度により、田舎暮らしを送る羽目に……。
The Imaginarium of Doctor Parnassus 監督:テリー・ギリアム 出演:ヒース・レジャー、ジョニー・デップほか 公開日:12月25日(金) 旅芸人一座の売り物は、人の欲望の世界を鏡の向こうに映すこと。トニー(ヒース・レジャー)は、その助手を務めていたが……。撮影半ばで急逝したヒースの代役としてジョニー・デップらも出演。
伊藤 晶 札幌生まれ、札幌育ち。アメリカ生活5年目。07年9月からオレゴン大学でコミュニケーションを専攻中。好きな映画は「Down By Law」「Garden State」「リアリズムの宿」「好きだー」「サマータイムマシーン・ブルース」など
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