第168回 The Spy Next Door ジャッキー・チェン主演作、と聞くと誰もがある程度のストーリーをつかめるという点で、今作もレビューがしやすいに違いないと思っていたのですが、最初の10分ほどでその希望は粉々に打ち砕かれました。全米規模で公開される映画としては西遊記をモチーフにした「The Forbidden Kingdom」以来、約1年半振りの主演作がファミリー向け映画とはいえ、まさかここまでひどい出来だとは予想外も良いところです。 この映画のダメなところを挙げればキリがありませんが、まずは季節のズレ。製作が遅れたのか、舞台はなんとサンクスギビング。3人掛かりで書き上げた脚本はまったくリズムのない単調な展開で、子供向けという点を差し引いてもあまりに退屈です。ジャッキーもお得意なはずの話術&アクションというコンビネーションが噛み合っておらず、これはジャッキー主演である必要があったのかと思ってしまうほど。 ファミリー向け映画で大事なのは、子供だけではなく一緒に作品を見る大人も楽しめること。ピクサーの「Toy Story」や「UP」を筆頭に、素晴らしい完成度の映画はたくさんありますが、今作はそういった作品に比べるとため息が出るほどの悪い出来です。本当にブライアン・レバント監督が現場で演出をしていたのかも疑われるくらいで、映画批評サイトRotten Tomatoでも、現在公開中の映画としては最低評価の9%を記録しており、レビューの平均スコアも10点満点中3.2となっています。 ひとつだけこの映画でポジティブな点があるとすれば、それはやはりジャッキー・チェンのアクション。もちろん「Project A」や「Police Story」シリーズのころにあったキレは望めませんが、それでもまだまだハードな格闘シーンに挑戦する55歳には脱帽せざるを得ません。今作のアクション・シーンの多くは、ジャッキーの過去の出演作に出てきた格闘シーンのオマージュが多いので、彼のファンにはちょっとうれしい演出でしょう。 すでに予告編が出回っていますが、6月にはジャッキー・チェンとウィル・スミスの息子ジェイデンがタッグを組んで出演する「Karate Kid」のリメイクが公開になります。タイトルに反して、ジャッキーが教えるのはカンフーという点で若干不安な気もしますが、今作より出来が悪いと言うことは、まずないと思っていて良いのでは。 2月公開の注目作品 Dear John 監督:ラッセ・ハルストレム 出演:チャニング・テイタム、アマンダ・セイフリードほか 公開日:2月5日(金) 兵士のジョン(チャニング・テイタム)は、里帰りの際に大学生のサヴァナ(アマンダ・セイフリード)と出会い恋に落ちる。遠距離恋愛を続けるふたりだが、2001年の911事件の影響でジョンの任務期間は延長に……。 The Wolfman 監督:ジョー・ジョンスト 出演:ベニチオ・デル・トロ、エミリ-・ブラントほか 公開日:2月12日(金) 貴族の実家を継ぐため、疎遠だった故郷に戻ったタルボット(ベニチオ・デル・トロ)。彼は、あることを境に、満月の光を浴びると狼男に変身し、殺人を犯してしまうようになる。1941年に公開された同名作のリメイク。 Shutter Island 監督:マーティン・スコセッシ 出演:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロほか 公開日:2月19日(金) 精神を患った犯罪者を収容する病院がある孤島、シャッター・アイランド。連邦保安官のテディ(レオナルド・ディカプリオ)は、女性患者の失踪事件の捜査のため、相棒と共にこの島にやって来たが……。 |
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