第17回 「Big Fish」 | |||
ガンに冒された死期がせまっている父親と息子の交流を描いたドラマ。自分の父親の軌跡をたどりながら、知らなかった自分の父親について次第に理解していく。 ウィル(ビリー・クラダップ)は、幼い頃から父親エド(アルバート・フィニー)の思い出話を何度も聞かされていた。若い頃のエドは、スポーツ、勉強、何をしても1等賞で町のヒーロー。冒険の旅、母親とロマンティックな大恋愛、戦争での輝かしい大活躍、銀行強盗など、小さい頃は喜んで聞いていたが、どれもが夢のようで信じられず、自分の父親がどんな人なのか全くわからないと反感さえ感じていた。 このお父さんは、見ていて気持ちがいい。息子にうそつきと言われようが本人は全然おかまいなし。「俺はここで終わる人間じゃない、まだまだやることがたくさんある。自分にはプランがあって、死ぬわけがないから心配するな」と。 700万ドルの低製作費だとは思えないほど、華やかで、まとまった出来上がり。監督は、今やヒット・メーカーといわれるティム・バートン。彼は「ビートル・ジュース」で注目され、「バットマン」「シザーハンズ」などを大ヒットさせた。父親の若い頃を演じたユアン・マクレガーは、少し顔が大きめなのが気になるが、「トレイン・スポッティング」でブレイク後、若者のカリスマ的な存在として大活躍である。「ムーラン・ルージュ」では歌って踊れる芸の幅広さを見せてくれた。精悍で爽やかな演技は、個人的にも好感度が高い。 映画を観て人それぞれ感じることはさまざまだと思うが、この映画を観た誰もが、自分と父親との関係を考えさせられるのではないだろうか。いい関係を保っている人も、父親なんて嫌いだって思っている人もドキッとさせられるはず。自分も、生まれてから見てきた両親に自分の知らない一面、自分の知らない過去があることはわかっていても、知ろうという努力がほとんどなかったことを考えさせられた。次回日本に帰る時は、ぜひその辺りを探ってみたいと思う。 | |||
石渕裕子 群馬県生まれ。2002年までインターネットの会社(川崎)で勤務。結婚を機に渡米し、シアトルへ。小学校勤務を経た後、現在はコンピュータ会社にて勤務中。 |
Big Fish
- 12/07/2020
- とれたて!映画レビュー
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