第171回 Death at a Funeral ハリウッドと言えばリメイク、というのがここ数年のトレンドです。特に現在「The Karate Kid」、「Men in Black」、そして「Ghostbusters」のリメイクに取り組んでいるソニー・ピクチャーズが、いよいよネタに困ったのか2007年にイギリスで製作された同名作品のハリウッド版を早々と出してきました。 オリジナルはスラップスティック・コメディーを基礎として、いかにもイギリスらしい皮肉とくすくす笑いが効いた良作で、評価もそこそこ高いものでした。このハリウッド版は、登場人物のほとんどをこてこてのアフリカ系アメリカ人コメディアンに置き換えたため、オリジナルにあった繊細さなどは消し飛び、ただただドタバタしっ放しの90分になってしまいました。オリジナル版の脚本家が参加しておきながら、このできは正直納得がいきません。 ただ、キャスティングだけは文句なしに豪華。上の欄にあげた以外にも、「Lethal Weapon」シリーズでおなじみのダニー・グローヴァーを筆頭に、「X-Men」や「Enchanted」で好演を見せたジェームズ・マースデン、NBCの人気コメディー・ショー「30 Rock」で人気を博したトレーシー・モーガンなど、製作費のほとんどがキャスティングに使われたんじゃないかと思うくらいのラインナップです。ちなみに監督は2000年に「Nurse Betty」でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞して以来、全く鳴かず飛ばずのニール・ラビュート。 ハリウッドでは、2月から4月公開の映画はその年の映画賞レースの話題になりにくく、それゆえ大物作品が出てこないのが通例です。そこで少しでも興行収入を稼ごうとしたのか何なのか、今ひとつ意図の見えない本作。もっと群像劇的な側面を強調すれば良かったようなものの、主人公と作家の弟との小競り合いだとか、大げさな演技の割には、やっていることがちまちまし過ぎていて、ギャグもほとんどが空振りでした。 葬式をコメディーにするというタブーを犯しているのだから、真面目に描けば描くほど、ほんのちょっとしたことでも面白くなるはずなのに、ただ騒ぎっ放しでは疲れるだけ。 ハリウッド・リメイクはオリジナルの良さをまるっきり殺してしまうと言いますが、本作も全くその通り。イギリス映画のリメイクという珍しい試みも、ただの空しい90分の駄作となってしまっては何の意味もないように感じました。残念。
5月公開の注目作品
Iron Man 2 監督:ジョン・ファヴロー 出演:ロバート・ダウニー・Jr、グウィネス・パルトローほか 公開日:5月7日(金) 天才発明家のトニー(ロバート・ダウニー・Jr)は、前作で自分がアイアン・マンだと明かした。これによって、政府から目をつけられ、軍事のためにパワード・スーツを受け渡すように国家命令が下るもこれを拒否する。そんな時、互角のパワーを持つ新たな敵が現れ……。
Shrek Forever After 監督:マイク・ミッチェル 声の出演:マイク・マイヤーズ、キャメロン・ディアスほか 公開日:5月21日(金) 遠い国で家族と平和に暮らしていたシュレック(マイク・マイヤーズ)だが、かつて怪物としての威厳があった自分に戻りたいと願っていた。そんなある日、罠にかけられ異次元の世界に飛ばされてしまう。その世界でシュレックは、家族や仲間達とは出会ってないことになっていた。
Prince of Persia:The Sands of Time 監督:マイク・ニューウェル 出演:ジェイク・ジレンホール、ジェマ・アータートンほか 公開日:5月28日(金) 2004年に発売された大ヒット・ゲームを実写映画化した作品。ペルシャ王国の王子ダスタン(ジェイク・グレンホール)が永遠の力をもたらすと言われている短剣を巡り争奪戦を繰り広げる。13世紀末の中近東を舞台にしたアクション・アドベンチャー。
文/伊藤 晶 札幌生まれ、札幌育ち。アメリカ生活5年目。07年9月からオレゴン大学でコミュニケーションを専攻中。好きな映画は「Down By Law」「Garden State」「リアリズムの宿」「好きだー」「サマータイムマシーン・ブルース」など
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