第173回 The A-Team 製作開始から約15年、紆余曲折を経て映画版「The A-Team(邦題:特攻野郎Aチーム)」が公開になりました。1983年~88年、アメリカならず日本でも大人気を博したTVシリーズの映画化ということで、公開前には熱狂的なファンからの好悪混じった反応が印象的でしたが、映画の出来に満足したのか、公開後は割とすぐに沈静化した模様です。かくいう自分もTVシリーズが大好きなので、今作には並々ならぬ期待を寄せていました。 とにかく話題だったのはキャスト。TVシリーズ版Aチームの4人があまりにはまり役だったために、映画版のキャストが発表になった際には、ネガティブなコメントが多く見られました。確かにオリジナルに比べるとずいぶんイケメンがそろってしまったのと、役者としては全く未知数な、BA役の格闘家、クイントン・ジャクソン、さらには「District 9」で突如スポットライトを浴びたマードック役の南アフリカ人俳優シャールト・コプリーなど、こんなメンツで大丈夫か、という反応はわからないでもありません。しかし、本編を見ての自分の感想は、そんな心配を覆す素晴らしい出来! オリジナルのキャラクターは失わず、それぞれの役者の良いところを生かした見事な演出でした。 ハンニバル(リーアム・ニーソン)の名言「I love it when a plan comes together」から始まり、BAの飛行機嫌い、相変わらず変なことしか言わないマードック、プレイボーイに徹するフェイスマン(ブラッドレイ・クーパー)、さらにはお決まりの工作シーンまで、Aチーム・ファンにとっては諸手を挙げて喜ぶしかない要素もたっぷり。しかし最後の20分ほどがアクション過多であまりに非現実的だったのと、TVシリーズで貫かれていた「Aチームは殺人をしない」というルールがまるっきり無視されていた点は残念でした。プロデューサーのトニー・スコットとリドリー・スコットが口を出したに違いない、彼らのお約束ショットが散見されたのも減点。 とは言え、TVシリーズを見ていなくとも十分楽しめる今作は、この夏の娯楽アクション映画の筆頭に上がることが間違いない良作だと思います。随所に散りばめられたユーモアと、要所要所できっちり決めてくるアクション・シーンがバランス良く組み合わされており、117分の本編はどこにも飽きさせる要素がありません。続編製作の噂もあるようですが、キャストとスタッフが続投するなら、ぜひシリーズ化して欲しい作品です。
The Sorcerer’s Apprentice 監督:ジョン・タートルトーブ 出演:ニコラス・ケイジ、ジェイ・バルチェルほか 公開日:7月16日(金) 舞台は現代のニューヨーク。オタク青年のデイブ(ジェイ・バルチェル)は、ある日突然現れた魔法使いのバルサザール(ニコラス・ケイジ)に後継者に任命される。戸惑うデイブだが、トレーニングは容赦なく始まり……。
Salt 監督:フィリップ・ノイス 出演:アンジェリーナ・ジョリー、リーブ・シュレイバーほか 公開日:7月23日(金) CIAエージェントのイヴリン(アンジェリーナ・ジョリー)は、何者かの陰謀によりロシアのスパイ容疑をかけられる。潔白を証明するために真犯人探しに乗り出すが。アクション・シーンも満載のサスペンス。
文/伊藤 晶 札幌生まれ、札幌育ち。アメリカ生活5年目。07年9月からオレゴン大学でコミュニケーションを専攻中。好きな映画は「Down By Law」「Garden State」「リアリズムの宿」「好きだー」「サマータイムマシーン・ブルース」など
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