第174回 Inception 長編デビュー作の「Following」から「Memento」、「Insomnia」、「Batman Begins」、「The Prestige」、「Dark Knight」と、出す映画がすべて高評価なクリストファー・ノーラン監督の最新作は、実に12年振りのオリジナル作品となりました。今、乗りに乗っているノーランの作品ということで、前評判も上々な本作でしたが、興行成績や批評家のレビュー共に、それを裏切らない結果となりました。 今作の特徴は、何重にもなって展開していく夢の世界。この構造が難解なので、僕の周りにはかなりのリピーターが出ていますが、観客に解釈を委ねる場面が多いというのも、観客をスクリーンに呼び戻す理由となっています。特に渡辺 謙演じるサイトーが、仕事の依頼をする場面まで辺りの最初の20分ほどは、潜在意識に潜るという行為について特に説明らしきものもないので、理解は難しいように思いました。映画情報ウェブサイト、The Internet Movie Database(IMDb)のQ&Aセクションには、観客が抱くであろう疑問が詳細な解説と共に掲載されているので、チェックしてみると良いかもしれません。 夢というテーマ自体は、映画では使い古されたものと言わざるを得ませんし、着想に関してマトリックス・シリーズとの類似性を指摘する人もずいぶん多いようです。本作は、その構成ゆえにSF作品に見られがちですが、ストーリーの核だけを追っていけば、重厚なドラマ作品であるとも言えます。 随所に見られるスピーディーな展開や細かな描写は、さすがノーランと言うべきで、傷ついたヒーローを演じるレオナルド・ディカプリオの名演も光っていました。 渡辺 謙も、本作では主役級の扱いを受けています。主演レベルのキャスティングは、2006年の「硫黄島からの手紙」以来ですが、今回は全編通して英語のみの演技を披露してくれました。 本作の原形は、2001年の「Insomnia」完成直後に製作会社へ提案されたそうですが、結果として製作が開始されるまで約7年掛かりました。理由として、ノーランは長編映画の経験不足を挙げていたそうですが、このタイミングでの公開を選んだのは、間違いではなかったと思います。 この夏のブロックバスターの筆頭として、本作は、しばらくは話題作であり続けるに違いありません。
8月公開の注目作品
Flipped 監督:ロブ・ライナー 出演:マデリン・キャロル、カラン・マコーリフほか 公開日:8月6日(金) 同じ小学校に通うブライス(カラン・マコーリフ)とジュリー(マデリン・キャロル)は、お互いに好意を持ち合うも、年齢ゆえにうまく付き合えない。そして中学に上がり、さまざまなことがふたりに立ちはだかる……。
Eat Pray Love 監督:ライアン・マーフィー 出演:ジュリア・ロバーツ、ジェームズ・フランコほか 公開日:8月13日(金) 作家として成功したエリザベス(ジュリア・ロバーツ)は、結婚もし、何不自由ない生活を送っていた。しかし、離婚をきっかけにイタリア、インド、バリ島へ旅に出る。同名作のベストセラーを映画化。
Nanny McPhee Returns 監督:スザンナ・ホワイト 出演:エマ・トンプソン、レイフ・ファインズほか 公開日:8月20日(金) 第2次世界大戦中のイギリス。ナニーのマクフィー(エマ・トンプソン)が、いたずらな子供達に、魔法を使って5つの掟を教えていく……。笑いあり、涙あり、家族で楽しめる、06年公開「Nanny McPhee」の続編。
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