第22回 「The Passion of Christ」 | |||
劇場は昼にもかかわらず満員で、終わった後には数人から拍手が起こっていた。アメリカでも若い世代は、宗教離れの傾向にあると聞くが、この映画の「どのようにキリストは死んでいったのか」というテーマに関心が高いことを伺わせた。 イエス・キリストの生涯最後の12時間を再現した作品であるが、戦争映画は別として、これほど痛々しい映画はなかなかないだろう。目を覆いたくなる、ではなく実際目を覆ってしまった。それも1度や2度でなく。イエス・キリストを演じたジェームズ・カヴィーゼルは、悪役のイメージが強かったが、イエス・キリストの彼は、まさに後光が差すような神々しさが出ていたのではないだろうか。 ただ、歴史的人物としてのイエス・キリストしか知らない私としては、最後の12時間だけではなく、もう少し彼の成し得てきた事柄についても触れて欲しかった。 敬虔なクリスチャンということでも有名な監督のメル・ギブソンは、私財を投じてこの作品を創り上げた。イエス・キリストが残虐な拷問に耐え、自分を犠牲にしてまで信仰(faith )を貫いたということを伝えたかったのだろうか? さまざまな物議を醸しているこの映画、話題を作って観客を動員するマーケティング手法としては、成功したようだ。 | |||
石渕裕子 群馬県生まれ。2002年までインターネットの会社(川崎)で勤務。結婚を機に渡米し、シアトルへ。小学校勤務を経た後、現在はコンピュータ会社にて勤務中。 |
The Passion of Christ
- 12/07/2020
- とれたて!映画レビュー
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