第2回 「KILL BILL」 監督:クエンティン・タランティーノ | |||
結婚式で新郎、新婦を含め全員が惨殺される。その後、一命をとりとめた新婦が4年間という長い昏睡状態から奇跡的に目を醒ます。彼女は、かつて世界を震撼させた暗殺者集団の中でも世界最強と言われたひとり、ザ・ブライド(ユマ・サーマン)。4年前、自分に起こった惨劇のすべてを思い出した彼女は、自分を不幸のどん底に突き落とした人間達への復讐を誓う……。 クエンティン・タランティーノ監督の5年ぶりの新作となった「キル・ビル」は、主人公“ザ・ブライド”に「パルプ・フィクション」のユマ・サーマン、宿敵ビルにデヴィット・キャラダイン。そして敵役のひとり、ヤクザの女親分オーレン・イシイを演じるのは、今大活躍のルーシー・リューだ。また、オーレンのボディー・ガード役で「バトル・ロワイヤル」で凄みのある演技を見せた栗山千明、影の刀職人役に日本が誇るアクションスター、ソニー千葉(千葉真一)がゲスト出演しているのも見逃せない。なお、千葉真一はこの映画の剣術指導も行っている。 ザ・ブライドは、ビルを倒すための刀を作ってもらうため、沖縄にいる服部半蔵(千葉真一)に会いに行く。彼はすし職人であるが、昔の顔は腕利きの殺人刀職人であり、殺し屋でもあった。神をも切ってしまうだろうという彼の最高傑作の刀で、彼女は敵を倒しに東京へ向かう。 そこからは日本という設定のため、日本語、英語が飛び交う。特にルーシー・リューは日本人と中国人のハーフでヤクザの親分という役柄であるため、日本語の割合が高かった。ふたりの決闘のシーンでは、「いくよ……(イクヨ)」「来な!(キナ)」と気合いの入った日本語が飛び交うが、微笑ましいと言うかなんと言うか……。ふたりの日本語の会話には、かなり肩の力が抜けてしまった。 日本の任侠映画、香港のカンフー映画を愛するタランティーノだけに、ザ・ブライドの着ている黄色のコスチュームは、まるでブルース・リーそのもの。彼女が88人の学生服(?)を着たボディー・ガードをバッサバッサと倒していく場面は、日本料理のレストランという設定だが実際は中国で撮影されたそうだ。血だらけのフロア、返り血でべっとりと染まった服、足が飛び、腕が飛び、さらに頭が宙を飛ぶ。血しぶきが飛び散る激闘シーンの多さには、正直参った。タランティーノの作品は残酷なバイオレンス・シーンで有名だが、この映画でも復讐という名目で徹底的に殺しを行っている。 しかし、タランティーノ独特の時間軸の使い方は絶妙。また今回は、オーレンの子供時代をアニメーションでみせたり、白黒画像を効果的に使ったりと、やはり彼は映画界の台風、新しい映画を作っていく鬼才である。次回作は来年2月公開予定。最後にビルのがつぶやく言葉……、それが第2部でのストーリーを展開させる鍵となることを期待する。
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石渕裕子 群馬県生まれ。2002年までインターネットの会社(川崎)で勤務。結婚を機に渡米し、シアトルへ。小学校勤務を経た後、現在はコンピュータ会社にて勤務中。 |
KILL BILL
- 12/07/2020
- とれたて!映画レビュー
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