Mystic River

第5回　「Mystic River」
監督：クリント・イーストウッド
出演：ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン
公式サイト：http://mysticrivermovie.warnerbros.com

© Warner Bros. Pictures

舞台はボストンの下町。ジミー（ショーン・ペン）、ショーン（ケビン・ベーコン）、デイブ（ティム・ロビンス）、11歳の少年3人に、ある日、不審な車が近づき、警察官を装う2人の男がデイブを連れ去る。4日後、デイブは自力で帰還するが、皆口を閉ざし、何が起こったのか明らかにされないまま、少年達は事件を記憶の奥に押しとどめ、それぞれの人生を生きていく。

そして25年後、思わぬ事件がバラバラになっていた3人を密接に結びつける。ジミーの愛娘ケイティが惨殺され、その事件を刑事として担当することになったショーン、25年前の事件が心に暗い影を落としているデイブ。ジミーはケイティを殺した犯人に復讐を誓うが、ショーンはデイブを容疑者として疑う。そして、悲劇が新たな悲劇の引き金となる……。

もし、ジミーのあの過去がなかったら、ジミーは娘のボーイフレンドとの付き合いに反対せず、ふたりは町を出ようと決心することもなかったのではないか。そしてジミーの愛する娘ケイティは殺されずにすんだのではないか……。殺人事件ではあるが、そこに絡み合う複雑な事情が重くのし掛かってくる。人生の中で起こるさまざまな出来事は、そこに関わる人達にいろいろな形で影響をもたらすこと、それが不幸な結果であった場合、人は乗り越えられないで、それを深く心に抱えて生きていかなくてはならないこと。人生の残酷さ、不平等さに、心がキリキリと痛くなってしまった。

今回の「Mystic River」は、今までで観た中で最高のランクに入る1本という声を何人かから聞いていたが、最高の映画という言葉を使うには、この映画は重過ぎる。映画館を出てから、この映画の持つ特有の暗さに圧倒されてしまい、しばらく放心状態であった。映画を観る前は愛する娘を失った父親の復讐のドラマだと思っていたのだが……、監督のクリント・イーストウッド、恐るべし。オススメの映画ではありますが、映画を観に行くのは、心に余裕のある時がいいかも。

ベスト・セラーになった原作、デニス・ルヘインの小説の中ではジミーの監獄中の出来事などが書かれているということなので、小説もぜひ読んでみたい。余談になるが、後からふとショーン・ペンがマドンナの元夫だったんだ……ということに気づいてしまい、想像すると非常に不思議な気持ちであった。