シアトルの生活情報&おすすめ観光情報

Shall We Dance?

第50回 「Shall We Dance?」
監督:ピーター・チェルソム
出演:リチャード・ギア、ジェニファー・ロペス、スーザン・サランドン
公開日:10月15日(金)
レート:PG-13
公式サイト: www.miramax.com/shallwedance

The Terminal

「紅葉を愛でたい季節ですわね」と言いたいところですが、窓の外の林は常緑樹ばかり。景色が一向に変わり映えしていないことに気付いてしまう今日この頃。皆さん、いかがお過ごしですか? 浅倉薫です。

今回ご紹介するのは『Shall We Dance?』。単調な毎日を送っている中年男性が美しいダンス教師に憧れてレッスンに通い始め、人生の楽しさに目覚めていくストーリー。そう、役所広司と草刈民代が演じた日本映画のリメイクです。ハリウッド版のキャストはリチャード・ギアとジェニファー・ロペス。日本映画に無関心な人でも、こんな大物なら映画館に足を運ぶだろうということでしょうか。

キャスティングを知った時、一番違和感があったのはジェニファー・ロペスでした。すごい美人ではあるけれど、セクシー過ぎるというか生々し過ぎる気がして。日本版のヒロイン・草刈民代の本職はバレリーナで、ストイックに鍛えられた体の線や繊細な動作の一つひとつが新鮮でした。女優ではない人を起用することで、孤独を秘めながら凛とした美しさを漂わせるヒロイン像を際立たせたのは、成功のポイントのひとつだったと思います。
ジェニファー・ロペスも決して悪くはないけれど、やっぱり美貌だけでは、電車の窓から仰ぎ見て惹き付けられるほどの強い印象は残さないのでは? 遠くからでもわかる、全身に存在感がある人なら納得できたと思うんですけど。

全体的にはオリジナルに忠実に作られているという印象。アメリカに舞台を移していても不自然さはほとんどなく、登場人物達の雰囲気も意識的に日本版とオーバーラップさせているようです。フォーマルな姿がビシッとキマるリチャード・ギアですら平凡なビジネスマンになりきっていて、気弱で人の良さげな表情の演技はさすが!という感じ。日本版の笑わせキャラも、期待を裏切らないように再現されています。

悪い人なんかひとりもいない、温かい映画。不器用ながらも一生懸命に生きている登場人物達は微笑ましく、主人公とその妻が夫婦の絆を確認し合うシーンは心の琴線に触れます。ダンス・シーンの華やかさや笑いをなぞっただけではない正統派リメイクなのですが、その反面、これなら日米両方の映画を見る必要はない気もしたりして。う~ん、リメイクは難しいですね。

浅倉薫
東京生まれ。太平洋沿いの大都市を転々とした後、2002年にシアトルに流れ着く。文系思考の研究員、理系思考のマーケター、勉強ギライなUW生、などの過去を背負う不良主婦。自称“面食い”だが、その基準が普通じゃないと言う人も。現在のごひいきはジョニー・デップ。