第54回 「After the Sunset」 | |||
「クリスマス・シーズンは気持ちが華やぎますわね」と微笑みつつ、「ウチにサンタが来ないのは、煙突がないせいというのは果たして本当か?」と疑問を抱く今日この頃。皆さん、いかがお過ごしですか? 浅倉薫です。 今回ご紹介する映画、主人公のマックスは稀代の大泥棒で、引退した今は恋人のローラと共にカリブの島でのんびり極楽生活中。ところが、そこへFBI捜査官のスタンが乗り込んできます。彼らの因縁は世界に3個存在する巨大な“ナポレオン・ダイヤモンド”。かつてその内の2個を盗んだのがマックス。当時輸送中のダイヤの護衛をしていたスタンはすっかりコケにされ、それ以来、マックスの尻尾を掴むべく執念を燃やし続けているというわけ。 宿敵のはずのマックスとスタンですが、他人の目には友人同士にも見える馴れ合いぶり。ちょうどルパン3世と銭形警部みたいな関係ですね。でも、ローラは不二子みたいな悪女じゃない。前回のダイヤ頂き計画にも1枚噛んではいるものの、マックスを愛し、今は2人でただ楽しく暮らしたいだけ。マックスもローラ一筋です。けれど、豪華客船でのイベントのために3つ目の “ナポレオン・ダイヤモンド”が島にやって来た時、相思相愛の2人の間に微妙なズレが……。 舞台は美しいリゾート。主演は007シリーズで名を馳せたピアース・ブロスナンとエキゾチックビューティーのサルマ・ハエック。痛快な窃盗と何食わぬ顔を装っての化かし合い。立派なエンターテインメントになりそうなお膳立てなのに、どれもこれもどこかで見たようなシーンばかり。導入部分の期待とは裏腹にメリハリに欠け、長く感じる映画になっていました。サルマ・ハエックが取っ替え引っ替え披露してくれるリゾート・ファッションが唯一の見どころです(悲しい)。 キャラクターのアピールが弱過ぎるのも欠点。顔と体型からシャープさを失いつつあるピアース・ブロスナンからは、泥棒稼業から足を洗ったと言いつつ、じつは盗みのプロ根性がウズウズしているという感じが伝わってこない。サルマ・ハエックも純愛とクセを併せ持った深みのある役柄だったらもっと映えたでしょう。手厳しい言い方をするならば、盛りを過ぎたジェームズ・ボンドとセクシーなだけのボンド・ガールのよう。とっても残念です。 見ない方がいいとまでは言いませんが、画面にクギ付けになるようなことはなさそう。将来テレビ放映したら、時々チャンネルを合わせて見る程度で十分かと思います、はい。
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浅倉薫 東京生まれ。太平洋沿いの大都市を転々とした後、2002年にシアトルに流れ着く。文系思考の研究員、理系思考のマーケター、勉強ギライなUW生、などの過去を背負う不良主婦。自称“面食い”だが、その基準が普通じゃないと言う人も。現在のごひいきはジョニー・デップ。 |
After the Sunset
- 12/07/2020
- とれたて!映画レビュー
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