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Brother Bear

第6回 「Brother Bear」
監督:アーロン・ブレイズ、ボブ・ウォーカー
出演(声):ジョークイン・フェニックス、デーブ・トーマス、ニック・モラニス
公式サイト:http://disney.go.com/disneypictures/brotherbear/

ポスター
© Disney

兄弟愛とは、家族の絆とは、そして人間達を時に厳しく、時に大きく包み込む偉大なる自然との共存とは……。ディズニーが贈る今回の大作は、自然の摂理や、動物と人間との共存を、美しい映像と音楽(フィル・コリンズ担当)で効果的に魅せる。

はるか昔、地球が氷河期の終わりに差し掛かっている頃。北アメリカ大陸北西部に住む部族の集落に、長男シッカ、次男デナヒ、三男ケナイの仲の良い3兄弟がいた。すぐにけんかを始めるデナヒとケナイ、そんなふたりをいつも温かく見守るしっかり者のシッカ。そんなある日、ケナイが鮭を盗んでいる熊めがけて石を投げつけ、熊を怒らせる。シッカは弟ふたりを助けるために自分を犠牲にし、氷河の塊と共に流されて死ぬ。頭に血が上ったケナイはその熊を殺し、精霊によって自分が最も憎んでいる熊の姿に変えられてしまう。

ケナイは母親熊と別れてしまった小熊、コダと知り合い、自分が人間に戻れるという“光が地上に届く場所”へ共に旅する。その途中で、ケナイは自分の知らない動物達の生活を学び、そこでは人間と同じように兄弟、家族、仲間が助け合って生きているということを知る。また、熊のことを危害を加える憎むべき相手と思っていたケナイは、ほかの熊、動物達が人間をモンスターと呼び恐れていることに驚く。そして、兄弟愛が生まれ始めたコダの母親を殺したのが自分だということを知り、自分の罪の深さを知る。一方、ケナイが変身した熊が自分の愛するふたりの兄弟を殺した熊だと信じる次男デナヒは、仇を取るためにケナイへどんどん迫っていく……。

ケナイは旅の途中でさまざまな動物達と知り合うが、2頭のカナディアン・ムース、ラット&テュークのやり取りが小気味良く、この映画の重要な笑いのパートを演じている。デナヒはケナイを殺してしまうのか、ケナイは人間に戻れるのか? ケナイは他を思いやることのできる人間へと成長していくが、最後にケナイが出した決断は予想していなかったので正直なところ少し驚いた。

死んでしまった長男のシッカは白頭鷲となり、兄弟・家族を空の上から見守る。魂はいつも愛する人の側にいる……、ネイティブ・アメリカンの信仰背景と自然崇拝をしてきた日本が似ているせいもあり、私には感情移入しやすい映画であった。人間のエゴや利益が自然を冒涜し続けている現在、どこまで行ってしまうのか不安になるが、ディズニーにはいつまでも、大人も子供も楽しめる心の洗われる美しい映画を作り続けて欲しい。

 

石渕裕子
群馬県生まれ。2002年までインターネットの会社(川崎)で勤務。結婚を機に渡米し、シアトルへ。小学校勤務を経た後、現在はコンピュータ会社にて勤務中。