第63回 「Assault on Precinct 13」 監督:ジャン=フランソワ・リシェ 出演:ローレンス・フィッシュバーン、イーサン・ホーク、ほか ウェブサイト:www.ap13movie.com | |||
コーラの紙コップを片手に映画館で座りながら、「ああ、これが熱~い緑茶だったらなぁ」なんて無理なことを願ってしまう今日この頃。皆さん、いかがお過ごしですか? 浅倉薫です。 今月ご紹介する映画は、日本語に直訳すると「13分署への襲撃」。近々閉鎖されることになっている13分署での大晦日の夜。ローニック巡査部長(イーサン・ホーク)と引退間近の老警官、警察には場違いにセクシーな装いの秘書アイリスの3人は、職場でささやかに新年を祝おうとしています。しかし、外が大吹雪になり、行く手を阻まれた囚人護送車が13分署で悪天候をやり過ごすことに。囚人は4人。そのうちのひとりはギャングの大ボス、ビショップ(ローレンス・フィッシュバーン)。そして深夜、彼らが収監されている留置場を何者かが襲撃します。ビショップから襲撃者の正体を聞いて、うろたえるローニック達。このままでは全員が殺される! 警官も囚人も、暴力には無縁の女性も、団結して戦わざるを得ない状況になってしまいます。 この映画のポイントは心理描写。バックグラウンドの違う人達が、当座の危機を乗り越えるためだけに同じ側に立って武器を構える。サバイバルという目的が達成されれば、たちまち彼らの利害は一致しなくなります。どこまでお互いを信頼できるのか? さらに、究極の状況に置かれた人間の行動は予想がつきません。興奮し、狼狽し、利己的になるかもしれないのです。 そんな中でも常に自分の本質を見失わなかったのは、ビショップとアイリスだったような気がします。ビショップにはどんな時にも己れを生き延びさせていくための強さがあり、アイリスには母性と言ってもいいような、女性としての強さがあるからではないかしら? イーサン・ホークは「しっかりしろよ!」と喝を入れたくなるような弱さを抱えた男の役が上手。減らず口を叩きつつも内面ではトラウマに苦しむローニックを好演しています。そして、ローレンス・フィッシュバーンの存在感は圧倒的。心身ともに強靭でウィットをも兼ね備えたビショップには、善悪を超えたカリスマ性があります。脇役陣も渋いです!
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浅倉薫 東京生まれ。太平洋沿いの大都市を転々とした後、2002年にシアトルに流れ着く。文系思考の研究員、理系思考のマーケター、勉強ギライなUW生、などの過去を背負う不良主婦。自称“面食い”だが、その基準が普通じゃないと言う人も。現在のごひいきはジョニー・デップ。 |
Assault on Precinct 13
- 12/07/2020
- とれたて!映画レビュー
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