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Nobody Knows

第68回 「Nobody Knows」
監督:是枝裕和
出演:柳楽優弥、YOU、北浦愛、木村飛影、清水萌々子
公開日:3月11日(金)
レート:PG-13
ウェブサイト: www.kore-eda.com/daremoshiranai

The Aviator

入学式気分を醸し出すUWの桜を眺めながら、「でも、冬のクオーターのファイナルはまだこれからなのよね~」と学生さん達を応援(?)する今日この頃。皆さん、いかがお過ごしですか? 浅倉薫です。

今回ご紹介するのは、日本映画「Nobody Knows(邦題:誰も知らない)」。12歳の明(柳楽優弥)を連れてアパートに引っ越してきた母親けい子(YOU)。「父親が海外赴任中でふたり暮らし」とにこやかに挨拶しますが、実は、それぞれ父親の違う4人の子供を抱えるシングルマザー。アパートを追い出されるのを怖れている彼女は、学校にも行かせてもらえず人目を避けて生活する子供達という状態の異常さからは目を背けているようです。それでもけい子は子供達を可愛がっているし、子供達はけい子を慕っている。傍目には異常だけれど中に潜んでいる者達には幸福な閉鎖系なのです。

ところがある朝、わずかなお金と気軽な手紙を残して、けい子はいなくなってしまいます。働く母に代わって弟妹の面倒を見てきたしっかりモノの明は、今度も黙々と彼らの生活を守ろうとします。たった12歳とは思えないほど現実的に行動する明ですが、誰も知らない彼らの生活を独力で守り通していけるのでしょうか・・・・・・?

主演の柳楽優弥クンが史上最年少(14歳)でカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を受賞したのを始めとして、数々の賞に輝く話題作です。柳楽クンのみならず、子供達のちょっとした仕草や表情の変化は、まるでドキュメンタリーのような自然さ。淡々としていながら奇妙な明るさを漂わせる描写は感情移入が容易で、見ている者を異常なシチュエーションに引き込むことに成功しています。140分余りという長さを感じさせません。

この映画のアイデアの元になった事件は、救いのないほど悲惨なものでした。正直言って、「現実は、こんな御伽噺のようには済まされないぞ」と思う点はいくつかあります。それでも、押し付けがましさなしに、何が善で何が悪なのか、何がわがままで何が親切なのかなどを考えさせられ、人間の動物的な強さを認識させられたという点で、優れた映画でした。
シアトルでは、Varsity Theatreにて、3月11日から17日まで1週間のみの公開です。どうぞお見逃しなく。

 

浅倉薫
東京生まれ。太平洋沿いの大都市を転々とした後、2002年にシアトルに流れ着く。文系思考の研究員、理系思考のマーケター、勉強ギライなUW生、などの過去を背負う不良主婦。自称“面食い”だが、その基準が普通じゃないと言う人も。現在のごひいきはジョニー・デップ。