第85回 「Batman Begins」 監督:クリストファー・ノーラン 出演:クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、 リーアム・ニーソン、モーガン・フリーマン ウェブサイト:http://batmanbegins.warnerbros.com | |||
午後8時になっても外が明るいと、飲んだくれるにはまだ時間が早いような気がしてしまい、「こんなに日が長いのも良し悪しだわ」などと贅沢な不満を漏らす今日このごろ。皆さん、いかがお過ごしですか? 浅倉薫です。 今回ご紹介する映画は「Batman Begins」。大富豪ブルース・ウェインがいかにしてバットマンになったのかを語ってくれる大作です。 数あるアメコミ・ヒーローものの中でも、バットマン・シリーズは独特のカルト・ムービー的な雰囲気が魅力でした。ダークでキッチュなゴッサム・シティやコミカルでアクの強い悪役達が、バットマンというメイン・キャラクター以上に立っているんですよね。マイケル・キートンやバル・キルマーが演じたブルース・ウェインに深い人間性が感じられなかったのは、作品のマンガっぽさを徹底するための確信犯的手法だったのでしょう。 けれども今回は、ブルースが幼いころに経験した悲劇を乗り越えるべく苦悩する様子やそれがバットマンという姿に結晶する過程を描く作品。以前とはアプローチが違います。新しいブルース・ウェインは、精悍さと内面の陰りを併せ持ったクリスチャン・ベイル。ブルースを支える脇役には、執事役のマイケル・ケインや科学者役のモーガン・フリーマンなど、温かさと深みのある人を揃えています。対する悪役も、マヌケだったり滑稽だったりしないマジメな(?)キャラ。そして、薄っぺらい勧善懲悪物語に堕ちてしまわないように、彼らが破壊をもくろむに至る思想をしっかり描くことも怠っていません。 今回の監督は、人間心理を鋭く描いた「メメント」(2000年)で有名なクリストファー・ノーラン。斜に構えた視点でシニカルな笑いを誘うティム・バートン監督による初期のバットマンとの違いにも納得です。コアなファンには淋しいかもしれませんが、“ヒーローもの”としてのみならずドラマとしてもちゃんと成立する作りで、万人に受け入れられる作品になりました。派手なアクションや特撮、凝ったバットマン・ギアも言うことなしの楽しさ。140分の長丁場、観客をぐいぐい引きつける出来栄えです。 そうそう。渡辺謙も、表情、セリフ、アクションとすべてが素晴らしく貫禄十分。出番は短いながらも重要な役どころを演じていますよ。
| |||
浅倉薫 東京生まれ。太平洋沿いの大都市を転々とした後、2002年にシアトルに流れ着く。文系思考の研究員、理系思考のマーケター、勉強ギライなUW生、などの過去を背負う不良主婦。自称“面食い”だが、その基準が普通じゃないと言う人も。現在のごひいきはジョニー・デップ。 |
Batman Begins
- 12/07/2020
- とれたて!映画レビュー
コメントを書く