2011年06月号掲載 | 文・写真/小杉晶子
ハイキングになじみのない方、必見!
自然が作ったウォーター・スライドで、思いっ切り水遊び
小さい子供も楽しめる、シアトル近郊のお手軽ハイキングを紹介
1回は行っとこ、デニー・クリーク
「ねぇ、ハイキングってどこが良いのかな?」
「子供を連れて行ってやりたいんだけど、ハイキングに行ったことないから、なんだか腰が上がらないんだよね」
そんな質問を友人から受けることが多くなりました。書店には、たくさんのハイキング本も出ているし、今やインターネットでいろんな情報も得られる時代。しかし、異国でハイキングとなると事情も違ってくるし、少々勇気が要るんですよね。今回は、シアトル出身なら子供の時に1回は行っているという、人気ハイキング・スポット、デニー・クリークを紹介します。
シアトルからI-90を車で走らせること約45分。デニー・クリークは、フリーウェイ近くのとても便利なところにあります。比較的都市に近く、ユニークな自然を体験できるので、毎年多くの家族連れが訪れます。近くにはキャンプ場もあるので、1、2泊してゆっくり自然を楽しむのも良いかも。
人気の理由は、一枚岩のように連なっている、つるつるの沢を滑って遊ぶことができる、自然のウォーター・スライド。沢まで行くハイキング・トレイルも1.25マイルほどで、まさに初めてハイキングを楽しむ子供連れの方にうってつけです。このウォーター・スライドは、小学生くらいまでの子供なら浮き輪を着けてスルスルと滑ることができます(もちろん監視員などいないので、安全確認はしっかりしてください)。水着や着替えを持参しておけば、びっしょり濡れても大丈夫ですね。エアー・マットなどを使って滑るのも楽しいでしょう。ゆるやかな流れの所もあるので、小さいお子さんはここで水遊びもできます。石の下に隠れているトビゲラなどの水中昆虫のほか、沢の近くの水たまりなどには、日本ではあまり見られなくなった、タガメなどがいることもあります。
シアトル近郊にはたくさんのハイキング・トレイルがありますが、人気スポット以外では人に出会う機会が少ないので、時折山道で心細くなりますね。でもここは、いつもたくさんの人でにぎわっていますし、やっぱり少しでも人がいたほうが安心できるので、弁当を持ってピクニック気分で出掛けてみては、いかがでしょうか。ただ、トレイル近くには大きな駐車場がないので、遅く到着するとトレイルの入口まで長い距離を歩かなくてはなりません。非常に人気のスポットだけに、なるべく朝早くに行くことをオススメします。
▲デニー・クリークは夏になると多くの人でにぎわうので、早目の到着を目標に
▲デニー・クリークは犬連れもOK
ノースウエストの自生木
お父さん、お母さん、ノースウエストの木の名前、言えますか? 日本に生まれ育ったなら、きっと誰もがイチョウの木、山紅葉、松、桜などの名前が言えますよね。しかし、異国であるこの地に生えている身近な木は、なかなか知らないものです。子供と一緒に森を歩いて採取した葉っぱについて調べてみてはどうでしょうか。
ノースウエストの森に生えている木や植物は、日本ほど種類は多くないので、すぐに名前を覚えてしまいますよ。まず目につくのが針葉樹(冬の間も緑で葉っぱが針状のもの、例:松)。シアトルやポートランドの都市部なら、おそらく70%の針葉樹がダグラスファー(Douglas-Fir)です。見分け方は、触るとチクチクするかどうか。ほかにはシーダー(Western Redcedar)という、葉っぱがぺタッと平べったいものもあります。そして、紅葉。ノースウエスト自生種の紅葉を知っていますか? 大きいのがビッグリーフ・メープル(Bigleaf Maple)、小さいほうがバイン・メープル(Vine Maple)と呼ばれています。その下に生えているヒイラギのような低木がオレゴン・グレープ(Oregon Grape)。最後にどこにでも生えているでっかいシダがソード・ファーン(Sword Fern)です。これで森に入れば、ほとんどの名前が言えるのではないでしょうか。
▲軽く握ってちくちくするのが、ダグラスファー
▲ぺったんこの葉がシーダー
触ってはいけない植物
わたしが小さい頃、山登りを始めてまず覚えたのがウルシでした。小さい葉っぱが連なった真っ赤なウルシ。よく母が「触っちゃだめ!」と教えてくれました。ここノースウエストでは、ウルシはありませんが、やはり森や公園には触ってはいけない植物がいくつかあります。
スティンギン・ネトル(Stinging Nettle)という植物をご存知でしょうか。ハーブや料理が好きな方はご存知かと思いますが、欧米ではハーブとして料理に利用されます。この植物は茎の周りに多くの細く小さな刺があり、つい触ってしまうと嫌なチクチク感が2日ほど続きます。これは公園や学校にもたくさん生えているので、気を付けるよう子供に教えてあげてください。そしてもうひとつはポイズン・オーク(Poison Oak)。シアトル南部のスワード・パーク(Seward Park)などに生えており、公共の場なら看板を掲げていることもあります。葉っぱに触れると真っ赤にかぶれるので、決して触らないようにしてください。
▲カシワの葉っぱのようになっているポイズン・オークは、触ると皮膚が赤くはれ上がる
▲茎に小さい刺がいっぱいあるスティンギン・ネトル。料理には新芽を使う
子供と自然
シアトルやポートランドは、海・山・川がある恵まれた環境で、子供が自然に触れる機会も日本の都会に住む子供と比べて多いのではないでしょうか。現代の子供は、本当に便利な環境で育っており、スイッチひとつで何でもできる生活です。しかし物事には順序があり、小さな過程を経なければ目標は達成できません。いくら快適な環境で育っても、スイッチひとつでは自分の人生の成功は収められないのです。その過程をどうやって教えるかが現代の子育ての大きな課題ではないでしょうか。
例えばひとつの木が成長していくにも、たくさんの困難を経ています。隣の木の陰になってしまう前に伸びないと、日が当たりません。風が強い場所では、しっかりと根を張って体をくねらせ風を受け止めなければなりません。虫が付いたり、ほかの動物に食べられたりと、たくさんの難が降り掛かってきます。植物はその場所から逃げることはできないので、現実を受け止め自分を変えて成長していくのです。それは、人間の人生と同じではないでしょうか。日常の生活の中では気が付かない、季節の移り変わりとそれに伴う自然の変化、自然の中から学ぶものはたくさんあります。この夏、子供と一緒にノースウエストの自然を体験してみてください。
▲今や日本では、なかなか見られないタガメ
■デニー・クリーク・トレイル
アメリカ国営林のウェブサイト。“Search”のところで“Denny Creek Trail” や“Campground”と入力し、情報入手を。
Denny Creek Trail
www.fs.fed.us
■シルクフラワーズ・ドットコム
子供にとって危険な植物をいくつか紹介している園芸サイト。写真もある。
Silkflowers.com
www.silkflowers.com
(2011年6月)
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