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【番外編】カナダ鶴を探して、カナダのバンクーバーへ

アメリカ・ノースウエスト自然探訪
2013年07月号掲載 | 文・写真/小杉晶子

警戒心が強いため、いつも遠くから眺めるだけの鶴。
バード・サンクチュアリだからこそ真近で見られる野生の鶴を探しに、ショートトリップ!

カナダ鶴
▲カナダ鶴は、じっとして動かない。だけど時々こちらをギロッと見る

レイフェル野鳥保護区

雪景色の中で求愛ダンスをする日本のタンチョウは、みなさんにはお馴染みかと思いますが、ここノースウエストでも優雅な鶴が見られることを知っていますか?
 
カナダ鶴(Sandhill Crane)は北米全体に生殖し、北はシベリア、南はフロリダあたりまで渡る鳥で、各地方の湿地で子育てする姿が見られます。姿、形は日本のナベヅルの姿に似た灰色の体ですが、真っ赤なベレー帽をかぶっているような頭が目立ち、とても美しいです。
 
野生の鶴は警戒心が非常に強いため、渡りのシーズンに合わせて見つけることができても、かなり遠くの場所からこっそりしか見られません。ですので、湿地の中の葦に見え隠れする姿を息を殺しながらの観察となります。
 
さて今回は、そんなカナダ鶴を真近で見ようという旅です。
 
車を北へ走らせカナダ国境を越えて、99号線に沿って西へ進むと、左手にフレイジャー・リバー(Fraser River)の横にできた大きなデルタ地帯に出ます。その先端に、レイフェル野鳥保護区(Reifel Bird Sanctuary)があります。
 
この大きなデルタ地帯は、渡りをする鳥が一休みするために立ち寄る場所で、たくさんの夏鳥、そして冬鳥を見ることができます。
 
レイフェル野鳥保護区の良いところは、餌付けされているので、自然の中では警戒心が強くて近くでは見られない鳥たちも、そばで見て写真に収められること。特別な場所なのです。

鳥たちを間近で観察

入場料を払って入り、ビジターセンターで鳥のエサを買うことができます。自然の景観を失くさず、きれいに作られたトレイルを歩くと、たくさんのカモが寄ってきます。その中には、ふだん近くでは見ることができないアメリカオシドリの夫婦や、いつも遠くから眺めているシギもゆっくり見ることができます。
 
子供たちは鳥にエサをやるのが楽しそうで、100匹くらいのカモに囲まれながらきゃーきゃー。賑やかな公園です。中でもカナダギースは、なれなれしい鳥。私はエサを持っていなかったので、子供たちがわいわいエサをあげている横で鳥たちを見ていたら、でっかいカナダギースが「おい、おまえ!エサくれ」「エサ、持ってんだろ?」「早くくれ」としつこく寄ってきます。カナダギースは、結構大きいのでちょっと近くで見ると怖いですよ。わたしの胸あたりまでの背丈がありますしね。
 
一応野生動物なので、背を向けて対応してください。以前、白鳥があまりにきれいだったので近付いていったら「クワァァー」と怒られた経験あり。気を付けましょう。
 
さてさて、目的はカナダギースではなく鶴なのですが、「こんな賑やかな場所に、はたしてカナダ鶴がいるのかな」と半信半疑でトレイルを進みます。小さな沼をいくつか通り抜け、ほかの鳥たちに意識を向けていると、目の前に私の背丈ほどの鶴がいるではないですか。
 
灰色の羽毛に真っ赤なベレー帽。ゆっくり音を立てずにエサをついばんでいます。こんな簡単に鶴を見ていいのだろうか、と思うほど近くでゆっくり見ることができました。家族でしょうか、5、6羽が固まって水辺でリラックスしています。私が行ったのは、3月上旬なのでまだ子育ての時期ではなかったようですが、毎年4月には新しい命が誕生し、ここで子育てをするそうです。その場合は、親鳥も近くを歩く人を攻撃してしまうので、トレイルを一部閉鎖することがあるそうです。夏頃には、少し大きく育った子鶴を引き連れた親子の姿を見ることができるかもしれませんね。もちろん鶴だけではなくて、マガモやほかの鳥たちも5月頃には子育ての時期に入ります。夏には、きっとたくさんの小鴨を連れた姿も見られることでしょう。

ルールを守って鑑賞

それから、この野鳥保護区にはいくつかのルールがあることも学びましょう。ここは、動物園ではありませんので、鳥たちの生活を優先してください。エサをやる時は、保護区が決めたもののみやること。けっして菓子やパンなどは与えないでください。区内は、ペットなどの動物は立ち入り禁止となっていますので、犬などは連れていかないように。もちろん、中でピクニックなどもできません。そして区内のトレイルに沿って歩いてください。鳥見たさにトレイルから外れると、鳥たちの生活の場を壊してしまう恐れがあります。
 
最後に、これはどこの保護公園でもあるルールですが、敷地内にある枝や花、実などは、すべて野生動物のものでもありますので、勝手に持ち帰らないようお願いします。このような自然のルールも子供と学びながら、バードウォッチングを楽しみましょう。

 

アメリカオシドリ
▲アメリカオシドリのつがい
シギ
▲くちばしが特徴的な、渡り鳥のシギ
カモにエサやり
▲子供たちも楽しそうにカモにエサやり
カナダ鶴
▲カナダ鶴の、美しい立ち姿
カナダギース
▲カナダギースが、「なんかくれ」とやってきた


湿地
▲区内は、湿地をうまく残して保護されている

Information

レイフェル野鳥保護区センター
カナダ・ブリティッシュコロンビアで野鳥を保護している。子供たちにも色々な活動を提供
www.reifelbirdsanctuary.com

■国際鶴協会
世界中の鶴についての情報がわかるウェブサイト
www.savingcranes.org

■オセロカナダ鶴フェスティバル
ワシントン州東部にあるオセロ野生保護区では、毎年4月にカナダ鶴フェスティバルを開催。ここでは、鶴が南下していく様子が6月くらいまで見られる
www.othellosandhillcranefestival.org

■マフュアー自然保護区

たくさんの渡り鳥が見られる、オレゴン南東部にある、全米でもかなり大きな湿地帯。区外では野生馬に出会えることもある
www.fws.gov/refuges/profiles/index.cfm?id=13570

(2013年7月)

Akiko Kosugi Phillips
サウス・シアトル・コミュニティー・カレッジで園芸学の学位を取得。シアトル日本庭園でのインターンシップ、エドモンズ市の公園課での職務を経て、現在は、小杉剪定サービスとして個人の庭やSeaTac Botanical Gardenなどの日本庭園の手入れを行うビジネス・オーナー。年に2回ほど当ページの執筆を務める。